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第5話 出会い

マーサルに髪の毛を刈られ、泣き叫ぶ男の姿。

それはあまりにも惨めなもので、男達を射殺さんばかりに睨んでいた周囲の人々もその顔に憐れみを浮かべている。

男達の年齢を考えれば、若くして禿げたことになり、それはかなり衝撃的なことなのだろう。


「まぁ、だからってこれだけで済ませる気は無いんだけども」


ーーー だが、その男達の嘆く様子を見ても私は今から自分がしようとしていることを辞めるつもりは一切なかった。


先程、ルーアが男達に暴力を振るわれそうになった時、動いたのはマーサルだけではなかった。


「ルイジア様話してください!あの禿げ達は絶対に許さない!」


「……眉毛もまつ毛も全部抜いてやる」


「にゃう………」


……そう、ルーアの危機に他のちびっこ達も男達へと駆け出していたのだ。

それもマーサルが踏み出したのと同時に走り出すという、とんでもない反応で。

それはちびっこ達の絆がどれほど強いかということを表していたのだけれども、もちろんそのままちびっこ達を男達の元に行かせるわけにはいかない。

ちびっこ達が男達の元に行っても人質が三人に増えるだけでしかないのだから。

だから私は無念ながらも、男達に罰を与えるのをマーサルに任せ、私とサラルはちびっこ達を抑えこむことにしたのだ。


そんなこんなの経緯があり、私自身はまだ男達に報復することが出来ていない。

………だが、このままマーサルが報復してくれたからと下がるつもりは私にはなかった。

それだけのことを彼らは犯しているのだから。


「ライア、サーラ。貴女達の分も私が罰を与えておくから、それで許して」


だから、私はそうちびっこ達に笑顔で言葉を告げると同時に、とある魔術を構築する。

それは今の男達に最大の罰となる魔術。



ーーー 次の瞬間、私の手から放たれた魔術は本人に気づかれないまま、男達の頭部の毛根を死滅させた。







◇◆◇







男達にようやく満足のいく報復が出来た私達は、次の瞬間次第に人が集まっていたあの場所から離脱した。

泣き叫ぶ男の情けない姿が丁度人目を引いてくれて、私達はあっさりと離脱に成功することが出来た。

ちびっこ達は自分達は報復できなかったと怒っていたのだが、最終的に私が男達にかけた魔術が何かを知ると途端に機嫌を直してくれた。


「うぅ………ねむぃ……」


………だが、私達に一息つく時間が訪れることはなかった。


次なる問題はすぐにやってきたのだ。


先程まで興奮状態にあり、眠気を忘れていたちびっこ達。

けれども、人気の少ない落ち着ける場所に逃げ込んだことで一気に眠気が噴出したのだ。


「も、もうちょっとだけ頑張って!」


だが、いくら人気のない場所であったとしてもこんな場所で寝られるわけにはいかない。

今のマリンシルで精霊の存在がバレれば一体どんな騒ぎになるか想像もつかないのだ。


「こ、これ食べていいから!」


だから私はマジックバッグからサラル用の手羽先を取り出し、少しでも眠気を誤魔化せるようにとちびっこ達にくわえさせる。


「にゃ、にゃう………」


………そしてその光景にサラルが涙目でぷるぷる震えていたりして、私は酷い罪悪感を覚える。

ご、ごめんサラル……ま、まだあるからね!手羽先まだあるからね!落ち着いたらサラルにもいつもよりもいっぱいあげるから!

と、私とサラルは少なくない精神的ダメージを受けながらもちびっこ達を起こすために手を尽くす。


「おいし………ぐぅ……」


「すぴー。むしゃむしゃ」


「………起きたら食べよう。おやすみ」


……だが、手羽先を食べながら寝たり、寝ながら食べたり、どこからともなく取り出したマジックバッグらしきものに収納して寝たりするちびっこ達の姿に私は自分の作戦が失敗したことを理解する。

というか、ルーアはともかくライアとサーラは本当に何をしているんだ……

特にサーラが持っていたマジックバッグて、精霊でも滅多に持っていないお宝だよね。

なんで精霊の中でも最年少の君が持っているの!?


「……あ、あれ?サーラが持っているバッグて私が無くしたはずのものじゃ……」


「………え」


………私は、マーサルのまさかのカミングアウトに思わず驚愕の声を上げる。

幾ら何でも、このちびっこ達に盗られるのはダメでしょ……


「い、いや私も知らないうちに……」


私の非難めいた目に、マーサルがばつが悪そうに視線をそらす。


「そ、それよりも早く宿屋に行かないと……」


そして次の瞬間あからさまに話を逸らした。

その態度に私は流石にそれはないだろうと文句を言いたい気分になるが、言っていることは決して間違っていないのでその言葉を喉の奥にしまい込んだ。

実際、今は本当に危機的状況だった。

何せちびっこ達はもう殆ど寝かけているのにもかかわらず、未だ宿屋まではかなり距離があるのだから。

最悪私が魔術を使い幻術を使う手ならばあるが、その魔術は強大すぎてマリンシル付近にいる神獣を呼び出しかねない。

もういっそ、騒ぎになること覚悟で私とマーサルとサラルちびっこ達を抱えて宿屋まで向かおうか、と私は必死に頭を回す。


「その精霊達が疲れているならば、ここで泊まっていいぜ」


そして、そんな風に告げながら突然男性が現れたのはその時だった………







◇◆◇







「いやぁ、こんなところで精霊に出会うことになるとはなぁ……」


そう言いながら現れたのは一人の初老の男性だった。

その顔には人の良さそうな笑みが浮かんでいて、ただの一般人にしか見えない。


「……貴方は」


けれども、その男性に対して私が警戒心を解くことはなかった。

たしかにちびっこ達は現在眠気に負けかけて、羽がいつ出てもおかしくない状態にある。

だが、今はまだちびっこ達は羽を隠せている。

それなのに目の前の男性はちびっこ達が精霊であることを看破したのだ。

それは目の前の男性が明らかに只者でないことを示している。


ーーー それに、目の前の男性は見た目に反して、先ほどの似非《二つ名》持ちなど比にならない実力を持っているのが私には分かったのだ。


「っ!」


そしてその男性の実力を理解し、マーサルも剣に手をかける。

その顔には先程《二つ名》と早退した時とは比べ物にならない険しい表情を浮かべ、この場に緊張が張り詰める。


「ちょ、ちょと待て!えと………あ、あれ?ここに入れたはず……」


……だが、何かを探し出した男性のなんとも気の抜ける姿にその緊張は直ぐに霧散することになった。


「あ、あった!これを見てくれ!」


「………え?」


そして次の瞬間男性が取り出した小ぶりなナイフにマーサルが目を見開き、剣に握っているその手から力を抜く。

そのマーサルの態度に男性が安堵の息を吐き、そして疲れたような表情で口を開いた。


「あんたら精霊の事情は知っているが、いきなり剣を向けられるとは……」


「え?ま、マーサル?」


状況が分からない私は説明を求めて、マーサルへと視線を向ける。


「まぁ、詳しい説明は後にしてくれや。そっちの子らは、もう限界だろ。とりあえず宿屋に案内するから付いてきてくれ」


「え、ええ!?」


けれども、その私の疑問に答え……誤魔化したのは男性だった。

その男性の態度に私は疑問を覚えるが、しかしマーサルが男性について行くのを見て渋々歩き出した………

最終的に一週間遅れに………申し訳ございません……次回は一週間遅れなど無いようにさせて頂きます。……そして更新速度を上げれるように頑張らせて頂きます!

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