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プロローグ 海洋国家マリンシル


 「うん、きれいな空」


 アルタイラでの偽聖女事件から数日後、私は雲一つない青空を見あげて思わずそんな言葉を漏らしていた。

 頭の上に広がる青い空、それはアルタイラでも何度も目にしてきた光景で、けれども私はアルタイラではない場所から見上げる空に何らかの特別さを感じていた。

 数日前に起きた偽聖女事件、それは妹が聖女である私への嫉妬から貴族と結んで実力も伴わないくせに聖女を自称し始めたというとんでもない事件だった。

 そしてその際私は王都から追放され、貴族たちが暴走し始めたが、アルタイラを守る神獣たちの淀みを浄化するという聖女の真の役割を知らなかった貴族たちは自滅し、事態は終結した。

 つまり現在私が王都に戻ろうとすることを邪魔する人間はいない。

けれども私はもうアルタイラには戻るつもりはなかった。

何せアルタイラにはもう聖女も複数の神獣も必要ないのだ。

精霊達と人間、そしてカラムと協力してアルタイラは発展して行くだろう。

だから私は今まで過ごしてきていたアルタイラを後にして、旅に出ることに決めた。


「やっと自由に旅ができるね」


「にゃう!」


そして今、旅支度を整えた私がサラルと共にいるのは精霊の国の隠し扉の一つの前だった。

ここがアルタイラではないことを示す温暖湿潤な気候、それは正直心地よい感覚とは言えなかったが、その感覚にさえ私は笑いを漏らす。

ようやく聖女の激務から解放され、長年の目標であった旅に出ることができる、そのことに私の心は自然と浮き立っていた。

けれども次の瞬間、隠し扉から現れた人影の発した声が私を現実に引き戻した。


「おぉ、ここどこ?」


「なんかじめっとします……」


「……暑苦しい」


「確かに暑いな……」


隠し扉から現れた人影、それはちびっこ精霊達とマーサルだった。

そう、実は旅に行く仲間はサラルだけではなかった。

ちびっこ達の強い懇願により、私の旅にはちびっこ達と保護者としてマーサルも同行することになったのだ。

もちろん、サルトリアはちびっこ達が旅に出ることに対して強く反発したが、ちびっこ達の熱意に負け、課題を達成したらという条件付きで許可した。

そしてその課題をちびっこ達は見事達成して、今に至る。


「うわー!本当に暑苦しいな!」


「で、でも、何か楽しい!」


「……楽しみ」


ちびっこ達は暑苦しいと散々文句を言いながらも、けれどもその顔は旅への期待からか輝いていた。

何時もならば冷静なサーラでさえ、そわそわしていて、微笑ましさに私の頬は緩む。


「……ルーア、ライア、サーラ、お前達は絶対に勝手に動くなよ。絶対だからな」


「あい!」


「はい!」


「……ふ、」


「……サーラ、何だその笑いは」


……唯一、マーサルだけはちびっこ達の態度に胃が痛そうにしていたが、頑張ってほしい。

マーサルは案外面倒見が良い上に、サラルが居るから大ごとにはならないだろうし。


「それじゃ、行こっか!」


そう判断した私は、胸に溢れる高揚感に促されるまま声を張り上げる。


「海洋国家マリンシルへ!」


海洋国家マリンシル、それこそが私たちの旅の初めの目的地だった。






◇◆◇






海洋国家マリンシル、それは近年にできた小さな貿易国家だ。

元々は国家ではなく海洋都市で、聖女の激務の所為でほとんど他国に行ったことにない私が訪れたことのある数少ない場所でもある。

私がマリンシルを訪れたのは数年前、未だ独立していない時期だったが、他国に負けない活気を誇っていた。

その活気にいつかは国として独立するんだろうな、なんて思ったほどなのだから。

……まさかこんなに早く独立するとは、思ってもなかったけれど。

私は独立には最低でもあと十数年はかかると踏んでいたのだから。

何でこんなに早い独立が成し遂げられたのか私には疑問だ。

という風に実は私は独立に関して、正直あまり詳しい事情を知らなかったりする。


というのも、アルタイラは神獣の力がある所為で閉鎖的なので、あまり外の国の情報が入ってこないのだ。


確かにマリンシルは海洋都市であった時から既に、国と肩を並べるほどの経済力を有すると言われていて有名ではあった。

けれども面積的には決して大きな都市でもなく、またアルタイラと交流がある訳でもない。

そしてそんな場所のことを調べようとする人間など、アルタイラには居なかったのだ。

その所為で現在のマリンシルの状況について私が知っているのは、独立したというそのことだけ。

その独立についても詳しい経緯なんて全く知らない。

……今から向かうというのにもかかわらず。


「行くことになるんだったらもう少し調べておいた方が良かったかな……」


けれども、その時の私はそのことを全く重要視していなかった。

ただ、もう少し調べていればよかったかもしれない程度しか考えていた程度。

前回マリンシルへと訪れた時の活気、それが頭に残っていた所為で、私はマリンシルに問題はないだろうとたかをくくっていたのだ。


「まぁ、とりあえず行こっか!」


「楽しみだな!まりしる!」


「ルーア、マリンシ……ラ、だって言っているでしょ!」


「……ぷ、ぷふふ」


「……サーラ、ライアが間違っていることが分かっているなら教えてあげような」


「え?」


「にゃう……」


……だがマリンシルへと意気揚々と迎う私たちは知る由もなかった。

マリンシルの情報を仕入れていなかったことを直ぐに後悔することを……

この度、チートな聖女の二章を改稿させて頂くことにしました。

長々とお待たせしてしまい申し訳ありません。

一週間に一度ペースのスローペースになると思いますが、よろしくお願いします!

ただ、本日は12時にもう一話投稿予定です!

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