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第13話 貴族の高笑い

貴族目線です!

聖女ルイジアが武神サラルとともに広場から去った二日後。


「ふはは!」


貴族こと私、サラルス・ルートレリアルは平民達に行政に関する連絡をする広場の中心で笑っていた。

従者が、こちらを怪訝そうに見てくるがそんなこと私は全く気にならなかった。

何故なら今、全てが私に都合の良いように進んでいるのだから。

笑い続ける私の頭にふと、昨日のことが蘇った。

それは震え上がった記憶で……


……昨日は王子がルイジアに送った手紙の内容を知った時から始まった。

その手紙の内容に、ルイジアの意のままに動く武神を思い出して私達が震えた。

そしてさらに最悪な出来事は重なったのだ。

そう、それは私が聖女を殺そうと思って設置していた兵士達が逃げ帰ってきたことだった。

その時になって私はその兵士たちを戻すことを忘れていたが、全て後の祭りだった。

必ずかの聖女は武神を伴い報復に来るだろうと私達は怯えていた。

彼女から許しを貰うそのために帰っきた兵士達全員を殺したほどなのだから。

けれどもそれは無かった。


そしてその時私達は悟ったのだ。

聖女は私達に対して報復する気がないことを。


かの武神が例えルイジアが隣町にいようが一瞬で王都まで来れる能力を持っていることを私達は知っている。

だが、一日中震えていてもかの聖女が来ることはなかった。

それは聖女に私達に対する報復の意思がない証明だった。

つまり彼女は私達を殺すことで平民達に影響が来ることを懸念しているのだと、私たちは悟った。

ルイジアは本当に聖女だった。

民衆を思いやり、その為に自分の怒りを堪えることができる。

だからこそ、私達に手出しすることはできないのだ。


「さすが聖女様。ふはは!」


そして、私達に都合よく働いたのはそれだけではなかった。


もう一つは私達に反発すると予想されていた勢力が一切抵抗しなかったのだ。

それは第二王子マラサルを頭とした、国王が貴族の縮小を始めた時に出てきた新貴族達の勢力。

私達は彼らは絶対に反発すると思い込んでいたが、彼らは土壇場で怖気付いたのだ。


「まぁ、仕方がないだろうがな!」


私は臆病な新貴族共を嘲る笑みを浮かべながら、けれども彼らの内心を悟って頷いた。

聖女は国王さえも勝る権限を有している。

だが、実際に行なっていることはただ儀式を年中やっているだけ。

普通に考えればそんな権限を有するなどあり得ない。

それが今の貴族の認識だ。


……だが、私は彼女の持つ力に気づいたのだ。


それはもちろん、私の父が言っていたよく分からない迷信じみた力の話ではない。


私の言っている力、それは民衆の支持だ。


つまり、聖女というその役目は民衆の人気のために作られた存在なのだ。

そしてそのことは、聖女を自陣に迎え入れられれば自動的に民衆の支持を受けられることを示している。

確かに今回私のしたことはかなり強引であったことは否定できない。

何せ聖女に冤罪をかけて入れ替えたのだから。

だが替えの聖女である、ルシアも決してルイジアには及ばないものの、かなりの美貌を有している。

そう、民衆の人気をとるに十分な。


つまり民衆の人気を得た聖女の力を手にすることで私は国王でさえ容易に無視できない力を得ることになる。


しかも、それだけではない。

聖女と婚約した人間は次期国王になるというその取り決め、それはほとんど使われたことのない例外中の例外だ。

けれども、だからこそその取り決めには力がある。

つまり、国王が起きてから第一王子が王太子になるのをやめさせようとしても、もう手遅れなのだ。

そして次期国王に、聖女を抱えた私の権力は絶対なものとなる。

そう、国王など比にならないほどに。

それを考えればマラサル達が私への抵抗を辞めたのは決しておかしな話ではないのだ。


「ふはは!もう少しだ!もう少しで私に全てが手に入る……」


そして私はもう少しで念願の権力を手にするというその喜びを噛みしめる。

その私の高笑いは民衆が集まったと、側近が呼びに来るまで続いた……







◇◆◇







「ここまで……」


側近に呼ばれて表に出た私は、広場の光景を見て思わず言葉を失った。

私達が民衆に対して聖女に関して大切な知らせがあると言ったのは一時間程度前だ。

そしてそんな短時間にも関わらず、広場には溢れんばかりの民衆が集まっていたのだ。

それは民衆の聖女という存在に対する想いの強さを示していて、その力が自分のものになるという未来をおもいうかべ、私の頬に笑みが浮かぶ。


「まず、この場にこれほどのものが集まってくれたことに礼を言う」


けれども、次の瞬間私はその笑みを抑え厳かな声を出した。

その声に民衆が何があったのかと、こちらへと視線を集中させる。

そして程よく視線が集まったことを確認した私は一息に言葉を続けた。


「実は聖女、いや、前聖女ルイジアはその身分を盾に、不正を行っていたことが明らかになった!」


「っ!」


その私の言葉に民衆達に騒めきが起こる。

そしてその民衆達の態度に私も同調して暗い顔を作ってみせる。


「私も今でも信じられない……彼女は信用できる人間だと思っていた。衝撃を隠しきれない」


その私の態度に民衆の騒めきが最高潮に達する。

そしてその瞬間、民衆の度肝を抜くため私は一気に言葉を重ねた。


「だが安心してくれ!確かに前聖女は信頼できない人間だったが、彼女はもういない!そして新しい聖女は信頼できる人間だ!」


その私の言葉に反応するように、表へ着飾ったルシアが現れる。

その姿は決してルイジアに及ぶとは思えないが、それでも民衆の心をつかむのには十分な美しさで、静まり返った広場に私は民衆の心を掴んだことを確信する。


「どうか、彼女に祝福を!」


そして私は次の瞬間にこの広場を揺るがすだろう歓声を想像しながらそう言葉を重ねた。

ここで認められれば、聖女の力は大きなものとなり、私はその力を手にすることになる。

それはもう、計画の殆どが成功したと言っても過言ではない状態で……


「えっ?」


……だが、私の言葉に対して民衆の歓声が鳴り響くことはなかった。

私は何が起きたのか分からず2、3度めを瞬く。


「ふざけるな!」


そんな中、一人の青年の叫びがその広場に響き渡った。


「そうよ!ルイジア様がそんなことするわけないじゃない!」


「この嘘つきが!」


そしてその声に吊られるように辺りから民衆が騒ぎ出し……


ーーー 次の瞬間、歓声の代わりに民衆の怒りに満ちた罵声が広場を震わせることになった。

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