第97話 思い出。
「ただいまー」
エイトと別れ、兵舎に帰る。
部屋の中には、疲れ切った様子のソアラと、いつもと変わらないアルトが横になっていた。
「あー....おかえりなさい.......」
「ん.....」
「どうしたのよ、元気ないわね」
「ふええ....食べ物全部ダメになっちゃってて、買い物し直しになっちゃいました.....」
あらら、そりゃあ大変だったわね.....
「お金も無駄にしてしまいましたし.....残りが....」
「ああ、それなら大丈夫よ。明日、10時にいつもの場所だって」
荷物を下ろしながら、うなだれるソアラに声をかける。
別れる際、エイトと明日の予定を話し合っておいたのだ。
その時、夕食を奢ってもらったのは秘密である...
「え、それって....」
「ダンジョン探索よ。ほら、お金が入る」
「よかったですぅ......」
「じゃ、私はお風呂に入ってくるわね。二人は先に寝てていいわよ、もう入ってるだろうし」
時刻は10時を回る頃。
明日の事もあるし、なるべく長く睡眠をとっておくべきだろう。
洗面用具を持って、部屋のドアノブに手を掛けた。
「あの、リースちゃん」
「んえ?」
兵舎内共用の大浴場に向かうべく、部屋を出ようとすると、後ろからソアラに声をかけられた。
上半身を捻り、ソアラの方を向く。
「今日、楽しかったんですね」
「え....な、なんでよ?」
「なんだか、とっても楽しそうですよ、リースちゃん」
「.......?」
「ふふ、なんでもないです。おやすみなさい」
「お....おやすみ.....?」
ソアラの言葉を心の中で復唱しつつ、疑問に思いながら部屋を出て行く私であった。
......まあ、確かに今日は遊んで来たけど.....
特に楽しい事はしていなかったと思う。
*****
「ただいまー」
「おかえりなさい、エイトさん」
リースと別れ、自宅に帰る。
玄関を開けると、例の如くフォーナが出迎えてくれた。
「あぁ〜.....今日は夕食は.....」
「要らないんですよね、分かってます」
.......それなんて能力だよ。
俺、お前に今日外で飯済ませて来たこと言った気がしないんだが......
「愛のテレパシーですよ」
「あッッれそれマジなのッッ!?」
「わあ、当たりました」
「はぁ.....ったく、脅かすなよ.....」
てっきりフォーナを超能力者だと思い込む所だったぜ.....
そんな会話をしつつ、リビングに入る。
手洗いうがいをしっかり済ませ、テーブルに着いた。
「はい、エイトさん。お茶です」
「お、サンキュ」
フォーナが盆に乗せたお茶を俺の前とその対面に置き、自身はそこに座った。
俺とフォーナ、向き合いながらのいつものお茶会である。
「.....あれ、エイトさん。何かいい事ありましたか?」
「ん、なんで?」
「いえ....なんか、楽しそうだなぁって」
「楽しそう、か......」
今日の出来事を思い返す。
リースと二人で飯食って、買い物して、戯れて、景色のいいところ行って......
「.......あー」
やっと気がついた。
このずっとモヤモヤしていた気持ちに。
リースと行動している間に、ずっと抱いていた気持ちに。
「.....エイトさん?」
「ああ....いや、お父さんって、大変だろうなぁって」
そうだ、リースと居た間ずっと感じていた事。
俺の両親も同じような事してたから、ついつい二人の事を考えちまったんだろうなぁ....懐かしいぜ....
二人とも、元気にしてっかなぁ.....
「....ところで、今日は何しに来たの?」
「えっ?泊まりに来たんですよ。あの約束が一泊だなんて聞いてませんからね」
「.........」




