第75話 懇願。
「頼む!!この通りだ!!!」
「ちょちょちょ待て待て!!とりあえず落ち着け!!」
土下座した男を起こし、椅子に座らせる。
男の前にお茶を置き、俺はその向かいに座った。
幼兵供とレシュアは部屋の隅で固まってこちらを覗いている。
「っぷはぁ......すまん」
「いいっていいって、で、何があった?」
男は出したお茶を一気に飲み干すと、表情を暗くしながら話し始めた。
「俺はな....親分とあの二人とで盗賊やってんだよ....」
「は?盗賊?」
「あ、いや。盗賊っつってもな、一般人からは何にも盗まねぇ。獲物にするのは同業者だけだ」
はぁん....それはどうなのかね....いい職業ではないよな....?
男は前提を話した上で、さらに話を続ける。
「昨日の夜、ここら辺じゃ相当有名な盗賊団の支部に親分と乗り込んだんだ...」
「はあ....」
「宝を盗んだのはいいものの、途中でその盗賊団のボスに会っちまって.....運悪く支部を視察に来てたらしい...」
話しながら、男の顔色はみるみる悪くなっていく。
「そいつレベル80を超えてるって噂で.....親分は俺たちを守って....あと二人は途中で囮になって.....俺だけ逃げ帰って来ちまった....」
そんで必死こいて帰ってきた挙句、道端で力尽きたと。
それにしてもレベル80ってヤベェヤツだな...
「エイトッッ!!!頼む!!親分達を助けてくれッ!!この通りだ!!」
男はテーブルに頭を勢いよく下ろし、その横に両手をつき、今にも泣き出しそうな声で叫んだ。
「俺はどうなってもいい!!助けてくれたら、そのあとはアンタの奴隷にだってなんだってなってやる!!だから....だから親分を.....仲間を....っく...!」
叫び続ける間に男は泣き出し、テーブルにボロボロと涙を零した。
以前頭を下げたまま、男は続ける。
「アンタたちには悪い事をした...無礼だと思うだろうが.....頼む.....俺にはアイツらしかいねぇんだ.....」
もう声も震え始め、何を言っているのかよく分からない箇所も出てきた。
嗚咽を漏らしながら、男は頭を下げ続ける。
「はぁ........お前ふざけんなよ......」
「......だよ....な、悪かった...いきなりこん」
「この後ゆっくり休む予定だったんだがな....俺にはいつ休みが来ることやら....」
「.......え」
「バカ、早く行くぞ。あとテーブル汚いから拭いとけよ」
「っ.....あ...ありがどう....」
いい年した男の泣きっ面なんか見ても得しないわぁ.....
俺は立ち上がり、装備を整え始めた。
ま、剣持ってくるだけだけど。
「ちょ...ちょっとエイト!!あんなヤツ助けるわけ!?」
二階に上がって行く途中で、後ろから幼兵供が批判をしに追いかけて来た。
「ああ。気分悪いかもしれんが、俺はお人好しなんでね」
「じゃあ....私たちも行く!!」
「ダメだ」
「なんで!?私たち傭兵よ!!アンタの敵を倒すのがしごー」
「おい」
リースの目の前に屈み込み、頭の上に手を置く。
少し引っかかる所があったので、訂正だ。
「人を斬る感覚だけは、覚えるな」
「エ....エイ...ト.....?」
立ち上がり、剣が置いてある部屋に向かう。
幼兵供は追いかけてこない。
「もう帰れ、暗くなってきた」
廊下に立ち尽くす幼兵供に、背を向けたまま帰宅を促す。
「.....っ!!だって!!行くわよ!!!」
「リースちゃん!ちょっと待っー」
「ソアラ、帰るんだ」
「エイトさん.....わかりました、それでは....」
言われると、ソアラはアルトを引っ張り、リースを追いかけるように階段を降りていった。
外からリースの声が聞こえた。
「ちょ!!エイトさん!!あの子達帰ったんスけど!?」
幼兵供の声が聞こえなくなる頃、レシュアが慌てて階段を上ってきた。
「ああ。ついて来るって言ったから断った。ちとキツめになったけどな」
「そう...ッスか」
「アイツらに人間を殺させたくないからな。仕方ない」
剣を取り、レシュアと共に階段を下っていく。
「それは....自分の体験からッスか?エイトさん」
「うるせえ、思い出す」
「ハハ....怒んないで欲しいッスよ」
レシュアの余計な一言に少し反応しつつ、テーブルを拭き終わった男と合流する。
さて、行きますか。




