第39話 影。
「う....ん...」
「お、起きたか?」
背中におぶったリースが目を覚ます。
傷はしっかり塞がってたが....さて、大丈夫か?
「.......えっ!?ちょ...は、早く降ろしなさいよッッ!!!」
「痛い痛いバカテメェこの野郎!!」
なんて心配は無用のようだ。
後ろに組んだ手を解くと、リースは半ば逃げるように俺の背中から降りていった。
「おーい、リース起きたぞー」
「あっ!気がついたんですね!よかったぁ!」
「..........」
「うわっぷ!?」
ダンジョンの通路の先を歩いていた二人を呼び戻す。
ソアラは涙目になりながらリースに飛びついていった。
アルトは....いつも通り、クールなんだか冷たいんだか......同じか。
「......本当に....よかったですぅ...」
「あ...そっか...私、やられちゃったんだ.....」
先ほどの出来事を思い出したのか、少し俯くリース。
悔しさなのかトラウマなのか。
なんにせよ、俺も悪いことしちまったしな。
「そうだ!!さっきのモンスターは!?」
「エイトさんが倒しちゃいました!こう、ズバーっと!一瞬でですよ!」
「アイツを倒したの...?一瞬で?」
完全に疑いの目でこっちを見つめてくるリースだが、残念ながら事実だ。
アイツは俺が砂鉄にしてやったよ。
そのせいで、素材まで粉になっちまったけどな。
「....さて、喜んでいるところ悪いが、モンスターのお出ましだぜ」
「あっ、私とアルトちゃんの二人でやってきます!エイトさんにばかり良い所は取らせませんよ!」
ガバッと顔を上げ、通路の先を見るソアラ。
[イーター]が二体、大した量じゃないな。
「あ...わ、私も...」
「リースちゃんはそこで休んでてください!絶対安静です!アルトちゃん、いきましょう!」
「れっつごー....」
「あぅ....」
さて、こうしてリースと二人取り残されてしまったワケだが。
「....悪かったな、さっきは」
「....いいわよ別に。私の不注意だったんだから、私のせいだったわけだし」
リースは、こちらに背を向けたまま静かに答えた。
「...そうか」
何も言うな、と、小さな背中が語っていた。
....変な空気になっちまったな。
「そうだ、おい、こっち向け」
「.....なによ」
めんどくさそうな動作で俺の方に振り返るリース。
俺はリースに、左手を前に出すように促し、
「...よっと」
俺が左手に着けていた、上腕につけるタイプの小さなバックラーをはめ込んだ。
「んえ....これ.....?」
「詫びといっちゃなんだがな。貰っといてくれ」
「.......そう。なら、受け取っておくわ」
よく考えたらこいつ前衛のクセに盾は持ってなかったしな。
俺にはあんまり必要ないものだし、リースに渡しておいた方が賢明だろう。
「.....えへへ」
そっけない態度を取ってはいたが、自身の腕に取り付けられたバックラーを見て、笑みをこぼすリース。
「...嬉しそうだな」
「まあ...盾なんて買うお金なかったから....ね」
ま、そんだけ喜んで貰えるとこっちも嬉しいよ。
いつまでも盾に見とれているリースの背中を押し、通路の先へ進む。
「あっ!エイトさーん!!みてください!倒しましたよー!」
「ぴーす」
「おー、よくやった。偉いぞ〜」
リースが復活してから、なんとなくソアラとアルトが明るくなった気がする。
あれか、テンションが上がってるってヤツだな。
恐らく一時的にハイになってるだけだろうが。
「.....素材は?」
「出てません!」
「だあああ.....」
でも、そん時を楽しめてればオッケーだろ。
*****
「......アイツらかい?」
「へ、へい、姉貴」
「へぇ.....じゃあ、ちょっと死んでもらいましょうか」
フロア1に、不穏な風が吹き渡ったー




