第32話 フロアキーパー。
「ソアラ、もう魔法撃てるか?」
「う...ん...ちょっと難しいです...」
「じゃあコレ飲んどけ」
バックパックからヒーリングポーションを取り出し、隣を歩くソアラに手渡す。
ヒーリングポーションってのは転換力の回復はできないと思われがちだが、そうじゃない。
人体の転換力ってのはほとんど体力と一緒で、体力を回復すれば転換力も回復する。
簡単に言うと、転換力=体力だな。
「ありがとうございます、エイトさん」
「いーってことよ」
「あー、エイトー、私たちにもちょうだーい」
「お前らは体力減ってないからダメ」
「ケチーーー!!」
残りヒーリングポーション3本.....
俺は大丈夫だけど幼兵供にはいつ必要になるか分からない。
喉の渇きを癒すもんじゃねぇっつーの。
「.....お?」
そんなこんなでダンジョンを進んでいくと、巨大な空間に出た。
「キーパーエリアね....」
キーパーエリア。
フロアキーパーがほぼ9割の確率で現れる巨大な空間で、フロアごとに大きさが異なるらしい。
ここは縦横30メートル、高さ15メートルってとこだな。
「.....で、アレがそうか?」
キーパーエリアの中心辺りでゴソゴソと蠢く何か。
【観察】。
〔ジャイアントスパイダー〕、ランクE、レベル8か.....
その名の通り巨大なクモのモンスターだ。
初めて見たときは鳥肌が止まんなかったからなぁ...
「ア....アレがフ、フロア....キキ...キーパー?」
リースが引きつった顔で呟く。
ああ、あからさまに動揺してるな。
そりゃ3メートル越えのクモ見たらそんな風にもなるか。
「見たことなかったのか?」
「そ....そうよ、悪い?」
「そうか。じゃあ行ってこい」
幸いソアラとアルトは大丈夫そうだしな。
リースが混乱して連携が乱れないか心配だが。
「は!?アンタは!?」
「俺はやることがある。ほーれ、行ってこーい」
「お、鬼ッッ!!」
嫌がるリースの背中を押し、〔ジャイアントスパイダー〕の元に送る。
「よし、ソアラ、アルト、あと頼んだぞ」
「わかりました!頑張ってきます!」
「.........」
「いやあああああああああ!!」
『シャアアアアアッッ!!』
お、今の叫びで向こうもこっちに気づいたみたいだな。
じゃあ俺はちょっと失礼しますか。
キーパーエリアの左側、一つだけ別に繋がっていた通路の前に走る。
「さて」
あの〔ジャイアントスパイダー〕のレベルは8。
幼兵供三人でかかればなんとか一匹倒せるだろ。
で、俺はその戦いの邪魔をさせたくない訳だ。
「お前らの相手は俺だぜ?」
〔鉄の剣〕を抜き出しながら、通路の前に立ちふさがる。
通路の中には、無数に光る赤い目と、幾多にも重なり合う虫が蠢く音。
通路から数え切れないほどの〔ジャイアントスパイダー〕がキーパーフロアに溢れ出ようとしていた。
後ろでは幼兵供も戦闘を始めたらしい。
「っしゃ、こいやクモ供」
幼兵供の戦いは邪魔させねぇぞ。




