第21話 帽子。
「あ、大丈夫、大丈夫。ちゃんと私が入れ替えておいたきましたから。新鮮な牛乳ですよ」
「わー....俺そういう冗談よくないと思うなぁ...」
「げほっ、げほ....ああ...どっちを怒ればいいのか分からないわ....」
「.......うまい」
そして顔色変えずに牛乳飲めるアルトを尊敬するよ。
「ってかフォーナ。入れ替えておいたって?」
「はい。エイトさんがいつ帰ってきてもいいように、毎日ココに通ってました」
「.......リビング戻ろっか」
*****
久々の我が家のリビングでくつろいでいると、とある事を思い出した。
「そういやまだ鎧渡してないよな」
「んー...確かにそうね」
ソファの向こうからリースがヒョコっと頭を出す。
「んじゃ、ケース持ってくるわ」
椅子から立ち上がり、プラスチックケースを取りに向かう。
確か一つ余ったケースがあったから、多分それに鎧が入ってるだろう。
「........いっしょいく」
廊下へのドアに手をかけたところで、後ろからアルトに服の裾を引っ張られた。
「お、手伝ってくれるか。うし、いいぞ」
アルトは随分力があるようだし、手伝って貰えれば楽でいい。
アルトを連れ、再びパントリーに向かった。
「あ...一回しまったんだっけ...めんどくさいなぁ」
廊下にケースが出ておらず、そういえばさっき自分でしまった事を思い出した。
もっかい出すしかないか....
「よっと....やっぱ暗いなぁ...足元気をつけろよ」
「ん.......」
暗いパントリー内に足を踏み入れる。
ケース....どこにしまったっけなぁ....
「アルトー、ちょっとそこらへん探し......何してんだお前」
「おっ.......おお」
振り返ると、灰色のニット帽をすっぽり被ったアルトの姿があった。
俺がこの世界にやってきた時着けてたやつだな。こんな所にしまってあったのか。
「深く被りすぎだ....ほら、こんぐらいにしとけ」
両目が出るくらいの位置までニット帽を調節してやる。
サイズが合わないし、これでも十分深いけどな。
「..........おお」
「気に入ったか?んじゃやるよ」
どうせもう使うつもりもなかったし、ニット帽だって使われた方が嬉しいだろ。
「.....これ....いい」
気に入ったようで何よりだ。
そんで、アルトの後ろにケースも見つけた。
「...っと、そっち持ってくれ」
ケースの端っこをもって、反対側をアルトに持ってもら....
「わーい」
「.....あれ?」
ニット帽を貰ってテンションでも上がったのか、両手を上げながらリビングの方に走って行ってしまった。
......いいっすよ、1人で運びますよーだ。
台風気を付けてくださいね〜