第10話 背<腹。
風邪引いてしまった...
「俺は傭兵は雇わん」
目の前の幼兵共に率直に告げてやる。
「そんな事言って~、私たち、見てたんだから。ね、ソアラ」
「あ...うん、見て...ました」
こいつら...〈ダンジョンゲート〉には入れなかった時の事だな?
ムカつく顔でこちらを見上げてくるリースを見据える。
「だったらなんだってんだ?」
「チケット。私たちが持ってるから、あげるわよ?」
ポケットから取り出した4枚のチケットをヒラヒラさせるリース。
「.....代わりにお前らを雇えってんだろ?」
「ご名答っ!ふふ...どう?」
「残念だが、わざわざそんなの貰わずともここに並んでりゃ手に入るのさ」
現在並んでいる、新規【探求者】受付所への行列の先を見る。
....あと何時間並ぶんだこれ、もう2時間は並んだけど一向にそれらしいもんが見えんぞ?
「....ま、そういう訳だ。諦めな」
「....後悔しても知らないわよ?」
「しないから。ほら早く帰った帰った」
右手首を振って、幼兵共を追い返す。
ここまで話聞いといて悪いとは思うがな、こっちも金がねぇんだ。
「....分かったわよ。2人とも、行くわよ」
「あっ、リースちゃん....まってよぉ」
不機嫌そうな足取りで去って行くリースを、フラフラしながら追いかけて行くソアラ。
装備....重いのかね?
「...........」
「...........うおっ!?」
アルトは俺の横に気配を感じさせずに立っていた。
....表情が無ぇ、怖い。
「........食べ物、頂戴」
「持ってねぇよッッ!!むしろこっちが欲しい位だよ!!」
コイツ6ゴールドしか持ってない俺から何を毟り取る気だよ!?
全く怖いなぁもう....
「ほら、さっさと行った行った」
「....むぅ」
いつまで経っても立ち去ろうとしないアルトの背中を押し、帰宅を促す。
そして、俺の目の前から3人の幼兵は消え去った。
「....ふー...疲れた...」
なんだかどっと疲れが出たな....
まあ目の前の不穏分子が消えただけで良しとするか。
....腹減ったなぁ...
「あの~。良ければ、これどうぞ」
「え?」
突然声を掛けられ、我に帰る。
見ると、俺の前に並んでいたふくよかな男性が、干し肉を俺に差し出してくれていた。
「あ...すいません、頂きます...」
「どうぞどうぞ、遠慮なく」
手の平ほどの干し肉を受け取る。
立ち上ってくる肉の匂い、口内に唾液が溢れてきた。
....食べよう。
「.......ああ、美味い」
「それは良かった。うちの自家製です」
「そうなんですか。いや、ホントに美味いっすよ」
肉は程よい硬さで、噛めば噛むほど味が滲み出てくる。
蒲焼きさんを彷彿とさせたが、その何倍も濃厚な味と香りが鼻腔を刺激してくる。
自家製ってのがまた、愛を感じるね。
「いやぁ良い食いっぷり。...失礼ですが、金にお困りですか?」
この人、さっきの会話を聞いて気を使ってくれたのか。
なんていい人なんだ...
「そうなんですよ...今所持金6ゴールドなもんで...」
「え....6ゴールド?」
怪訝そうな表情で、男性が聞き返してくる。
「いやー、困ったもんですよ、全く」
まーこれからダンジョンで荒稼ぎするから関係ないんだけどね。
それにしても肉が美味い、もう食べきったわ。
「新規受付に5万ゴールド、チケット一枚3万ゴールドと聞いたんですが....」
「......は?」
ちょっと待って、ウェイトウェイト。
えーと?受付5万、チケット3万だと?
俺の所持金が...ひーふーみーよーいつむー....6ゴールド。
あ、詰んだ。
「お肉、ありがとうございました」
「ええ、またいつかご縁があれば」
俺は姿勢を正してサッと一礼、そそくさと列を抜ける。
「.......あいつら、何処だ!?」
冷たく追い返した筈の3人を、血眼になって探す俺であった。
時間できたからいいんですけどね...あー




