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セフィアの特別な一日?

「うぉーたぁー!」


緑色の衣に身を包んだ少女が低級の魔物を覆うように水の魔法を使う。


「ナイス!セフィア」


「ねぇ様のお力になれてぇ、私も嬉しいですぅ」


「頼もしい事だね。それじゃあ後はうちに任せな」


少女達は二人だけで戦っているのに対して、魔物は三十以上いる群れで、一見すると、一匹の魔物にもひねり潰されてしまうほどの体格差があるが、少女達は怖がることすらしない。


紅玉煌来雷神タブティムス・トレイ


赤い(もや)が紅い髪の少女の手の届く距離に現れ、少女が手を回すと靄がどんどん大きくなり───瞬間、紅い落雷……もとい、横に流れる雷が魔物達を一閃する。


「ザクアねぇ様かっこいいぃ」


「まぁこんな雑魚達でうちの相手出来ると思って貰っちゃあ困るね」


魔物達は一匹も残らず塵も無く消え失せている。


「とはいえ集中する時間、魔物どもをまとめてくれてありがとね。魔法の威力も前より上がってるよー頑張ったんだなぁ偉いなぁセフィアは」


ザクアが可愛がる風に頭を撫でる。


(ザクアねぇ様はぁリール家でもぉ一番魔法の威力が高くてぇすごいのですぅ。私もこんなふうになれるのかなぁ?)


「ねぇさまぁ魔法の集中ってどうやるのですぅ?」


「ああ、これはね……ダリア姉さんでも出来ないから……」


「また、そう言うぅ」


ダリアに分かるようにわざと頬を膨らませる。


「さぁ、依頼もこなしたし、帰ろうか」


「むぅー」


**********************


今の時代では、沢山町並みも変わり意味の無くなった施設はどんどん壊れていったが、お酒の魅力はどんな時も変わらないらしく酒場は残っている。その風情のある一つの酒場でかなりベタではあるが魔物退治の依頼も行われて、掲示板まで出ている。


「依頼されてた研究所を荒らす魔物どもの群れを退治してきたよ」


「そうかい、そうかいそりゃ助かる。あそこで孫が働いてるもんでねぇ実際には荒らしたなどとは聞いてないんだが、用心に越したことはない」


(本当はぁ被害を出してないのにぃ嘘をついてぇ?魔物さんってぇ嫌われ者ぉ?よく分からないなぁ)


「ははっ!魔術王の娘を騙すとはねっ!とんだ依頼人だ」


ダリアが腹を抱えて笑うと、依頼人の後年の男性も吊られて高い笑い声を上げる。


「マスター、この嬢ちゃん達に一杯入れてやってくれ」


「おっ?まだ未成年だろう?オレンジジュースでいいか?」


「え、いえぇそんな……いいですぅ」


「いいじゃんいいじゃん、疲れたしじゃんじゃん飲もー!宴の始まりだァー!」


(ダリアねぇさまぁ……すごく乗り気……よっぽどぉ役に立てたのが嬉しかったのかなぁ?)


「は、はいぃ」


ダリアは早々に飲み始め、つまみに柘榴を食べて頬をすぼませ味を楽しんでいる。


「なぁ、緑のお嬢ちゃんも魔術王の娘なんだろ?大変だねぇ、大きな家庭ってのは」


「はいぃ、そうなんですよぉ家計的にぃぜぇーったい的にぃ魔法が強くないといけないのにぃー私はまだ魔訓院の一回級(ファーストランク )にいるなんてぇー……はずかしいですよぉー」


依頼人は予想とは違う答えにキョトンとしたが指で顎を押さえ、「ふーん」と言って、考える。


「でも、お嬢ちゃんはろくな報酬も出せないこんな老いぼれの依頼を受けてくれた。その事実があるだけでも名家の名に恥じないことだとワシは思うがねぇ」


「おう?なんだ?いいこと言ってうちのセフィアを誑かそうってのか?流石だね、おじさん。でもセフィアはうちの物だからね」


何故か酒に酔っているダリアが依頼人との会話に絡んでくる。


「こうしてうちらは依頼を聞いてきてこなしてんだけどさぁーこれはセフィアがみんなの役にたちたいーって言ったからちっちゃい時から続けてることなんだよー」


「そうだね、いつも二人には世話になってるよ」


いかにもな感じに仕上がったマスターも会話に入ってきてお礼を言いながらジュースをもう一本机に置いてくれる。


「ほとんどぉーダリアねぇ様が活躍して終わってるんですけどねぇ……」


「私はセフィアの剣だよぉーいくらでも使ってぇー」


ダリアが完全に酔って、遂に机に突っ伏してしまう。


「あぁあぁ、よっぽどセフィアちゃんのほうが立派だねぇ」


そのまま寝始めてしまったダリアは指で指しても起きない。


「ワシじゃあ運べないからなあ魔法でなんとかなるかい?」


「はいぃたまにあるのでぇ慣れっこですぅ」


「そうかいそうかい、じゃあこれ、今日のお礼だよ。」


依頼人はそう言って一本の木の棒の様なものを渡してくる。


「これはぁ?杖?」


「その杖は戦闘用ではないから魔力量は少ないんだがな、特殊な魔力が宿ってるもんで、触ると癒されるんだよ。それをお嬢ちゃんなら使えると思ってな、マスターと協力して奮発したんだよ」


マスターを見ると、ピースサインでドヤ顔をしていた。


「そんな杖がぁ?いいんですかぁ?」


『ああ』


二人揃って返事をする。


「ありがとうございますぅこれからも頑張りますぅ」


(私でもぉ人の役に立ててるんだぁ……)


「では、ねぇ様を連れて失礼しますぅ重力転換(ウェーブ)


酒場らしい木の押し窓を開けて外に出て、王宮に向かう。


(この杖でならぁみんなのぉ、おねぇ様達のぉ役に立てるぅ……かなぁ立てるといいなぁ)


ねぇ様のイビキだけが響く静かな道を歩いていると


「セフィアぁ……ごめん……ね……」と寝言でダリアが身に覚えのない謝罪をした。

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