悪魔との契約?
(悪魔になったばかりなので生活の仕方などを学ぶため"仕方なく"レイスと泊まることになった。別に疚しいことなんてこれっぽっちも……考え……てなどいないが?)
(そのレイス本人は俺の家に泊まってくれと言うとやけに乗り気だった。これ……ワンチャンあるんじゃないか?)
「美味しい!この唐揚げもっとちょうだい!」
レイスが素早い手つきでテーブルに並んだごちそうを平らげていく。
(乗り気だったのはこうゆうことか……それにしても、容姿とは真逆の食べっぷりだな……)
「そりゃあ、悪魔だからね」
(そう言われても不思議だ……あれ?……俺今喋ってないよな?ん?)
「聞こえてるよ」
「へ?」
「今気づいたんだけど、ウェンディゴ同士の考えてることならテレパシー的な感じで分かるんじゃないかな?僕も今気づいたんだけど」
「そうなのか?レイスも何か考えてみてよ。当ててみせるから」
レイスは頷いたあと真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。
(………何も伝わって来ないし感じない)
「そうなのか、ダメか……」
「なんで俺の考えだけ筒抜けなんだよ!不公平だー」
「にゃはは!こりゃ楽しい、でもこれぐらい近くじゃないとダメっぽいね。アドレ君の生活が監視できるかと思ったのに……残念。」
「残念じゃねぇ!もう極力近づくな!」
(……近づくなは言い過ぎたな……)
「アドレ君……ツンデレ?」
「聞こえてんのかよ!やめろー」
アドレは今度こそはっきりと距離をとってソファーに座る。
「他に生活の中で悪魔になってからやらなくちゃいけない事とかあるのか?」
「あ、そうだったね。大事なことがあるよ」
食事を終えたレイスは口を拭い、一杯の水を飲み干して
「悪魔になったと言ってもただなったって訳じゃないんだ。」
レイスは皿を持って立ち上がる。
「それって契約とかゆうやつか?」
「そうだよ 悪魔になるには悪魔と契約をしなくてはいけない。本来の契約は失敗すれば命を落とす程に重いものなんだけど、その辺は前の契約者の出した命令によって軽くなっていた。」
「前のってことはその人は悪魔との契約に成功したのか?」
「そうだよ、僕の知ってる限りじゃ悪魔との契約を成功したのは一人だけ。その契約者はアノグだよ。」
レイスが水をゆっくりと流す音が家に響く。
「母さんは命の危険を犯してまで悪魔と契約をしたのかよ!」
(レイスの夢で見たことといい母さんは自分の命をなんだと思ってるんだ!)
「なんで悪魔になったのか、そしてすぐに契約をアドレ君に移すようにしたのかは僕にも教えてくれなかった」
「俺の母さんって謎な人だな……」
「そうだね…でも偉大な人だよ……偉人ってきっとアノグみたいな人のことを言うんだと思うよ……」
レイスの話している姿が後向きでも悲しく見える。
「それで、話を戻すけど何に気をつければいいんだ?」
「悪魔ウェンディゴとの契約条件を破ると契約が切れて、簡単に言うと死んでしまう。」
「死ぬのか!?契約後も命の危機があるじゃないか」
「契約条件は人肉又は一日にビタミンB12を通常の必要摂取量2,5μgの三倍の7,5μgを摂取することだから忘れなければ死なないよ」
「言われなきゃ早速今日死んでたよ?」
「夜だけど買い物行こうか」
レイスは皿を洗い終え手を拭いて、支度をし始める。
「そんなんでよく今まで生きてこられたな……」
「今までは魔物の肉とか熊の肉食べてたからね」
「悪魔だ……」
「それじゃあ行こうか。コンビニのあさりなんかでも簡単に取れるから」
「ああ」と答えアドレは立ち上がって伸びをした。