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二度目の初仕事

 今雪華が思っていることを一言で表すならば、まるで犬の、忠犬のような存在だと彼女を評価する。何というか、優多の事が好きな自分自身にとって、厄介な存在なのは間違いないのだが、しかし、あの子も別に悪い子なんかじゃないのだ。だからこその忠犬。

 いや、その表現も貶めているみたいなので、使うのを控えよう。

 しかし、同じ女であり、恋のライバル的な存在だとしても彼女をかわいいと思えてしまう自分が意外でならなかった。

 仕事を忠実にこなし、次の仕事はと指示を待つ彼女の姿をなんと形容したらいいのだろうか――


 霊城寺雪華は、物陰に隠れ、こそこそ彼女の桃香の素性を観察していた。


 しかし、彼女は今優多と何をやっているのだろうか……。今日は、優多と桃香。二人で窓ふきの当番。それを物陰からモップを握りしめながら見る私……。一体私はなにをやっているのだろうと、我に返りそうになるが。邪念が入り込んではそれを打ち消してゆくので今に至る。

 思えば、優多が付きっきりで面倒を見ることになってから、優多との接触が少なくなってきた気がする。本当はもっと話したいのだが、私情が入り込んでは、優多の暇が重なって話すに話せない状況が続いて今に至って、気づけばこの状況だ。

本当に、だ。本当に彼女のことを、桃香のことをそこまで悪く思っているわけじゃないし、逆に彼女が友人として好きになってしまいそうな時だってある。彼女の笑顔はまるで皆を虜にする太陽のようで、だからこそ、気がかりになってしまうのだ。

優多と結びついてしまうのではないかとか、もう結ばれちゃっているのではないかとか、そういった、邪念が何度も仕事の邪魔をする。本心を述べるなら時間の許す限り、二人の動向を追っていきたい。しかし、時間は味方に付いてくれず。もし私に時を操る能力があるとするなら、何度となくこの瞬間を繰り返して彼女の、桃香の本心を知りたい。

だけれど――


「けれど、優多はこっちに振り向いてくれない……。ああ、神様。主はなんて非常なのでしょう……。私はこんなにも頑張っているのに」

「勝手に、私の心の中をナレーションするのはやめてくれ、あと私は優多に気があるわけじゃない。ただ、あの新人が気になるだけだ。けっして……けっしてこ、こ、恋とか?そんなものをしているわけなんかじゃない」

「ほほお、ま、私には関係ないけど、いい感じだよねあの二人。もしかしてくっついちゃってりして」

「――がっほごっほ」


 とんでもないことを言うんじゃないよ!! 動揺したせいで唾が気管に……。


 まあ、でも考えてみれば、そういうのが自然なことなのかもしれなかった。私なんて独り善がりな、独善的な愛なんて――


「あ、笑った」

「ねえ、無名」

「どうしたの?あと無名って何」

「貴方の名前よ、愛とか恋とかなんだと思う?」

「ええ、そんな哲学的なこと聞かれたって分からないよ……」


 まあ、やっぱりそうなるよね


「まあでも、愛とか恋とか、そんなの関係ないんじゃないかな」

「うん?どういうことだ?」

「だからさ、最初から愛とか恋とかないんだよ、ただ、好きとかいう理由付けの為だけであって、初めからそれが愛だとか恋だとか決まってないんだよ。ただ、人を思う気持ちをある人がそう呼んでただけで――だから」

「だから?」

「そう、愛とか恋だとか、そんな一文字の言葉に縛られることなんてないと思うよ」

「そう……でも――」


 でも、独り善がりな気もするし、やっぱり私には――


「わかるよ、独り善がりとか、一方通行の恋だとかそんなことおもっているようだけど、でも、それでもいいと思うよ。思う気持ちが強かっただけ。間違ってたんなら、直せばいいんだよ。恥の多い人生なんてそんな珍しい事じゃないでしょ」


 ああ、もう。

 この人は、なんでこんなにも私に言って欲しい言葉を言ってくれるのだろうか。

 思えば、いくらか前にも彼女が、まだ名前すら教えてくれない彼女から、色々と教わった。メイドとしての基礎や知恵、社会的な立ち振る舞い。なんでこうも私の面倒を見てくれるのだろうか。今もこうやって、心の支えになってくれている。なんで? 

 その心情を察したように彼女は口を開いた


「なんでだろうね~。でも、誰かを助けたいって気持ちは誰にでもあると思うよ。その対象が、私の場合、雪華だったってだけ、一人で悩む人を助言する。これほどかっこいい事ないんじゃないかな。それに、雪華、私の初めての教育係だったからね」

「そう……なのね」


 私は、涙が出なかった。

 泣くところなのだろうけれど、涙が出ることはなかった。けれども空っぽだった何かが埋まった気がした。夜の空が明日へ明けていくように、自然と、雪華の心も上を向いていた。


「ありがとう。それしか言葉が見つからない」

「どうも、勇気出た?」

「うん、だいぶ」

「そ、よかった。ま、私にはどうでもいい話だけどね」


 やれやれと、立ち上がり、エプロンをはたく。

 この人は……ほんとどんな人なんだろうか、素性を知ること探ることは別に悪い事じゃない。けれど、雪華の中で今まで気になった人の中でも圧倒的に情報量が極端に少ないのだ。どんな人間なのか見当もつかない。もしかしたらすごい人なのかも。


 雪華は歩き出して、自分の持ち場に戻ろうとする彼女の背中を見て微笑んだ――あれ? でもそっちの方向は……。


「やっほー!優多!」


――ああ、やりやがった。


「今日もお熱いねえ!夫婦みたいだ!ふう――げ、シフィア」

「待ってたわよ、やっぱりここにいた!」


――しかも、サボってた。


「やっべ、ゆたえもん何とかしてくれえ」

「やめてくださいよ」

「こら!早く、トイレ掃除行きなさい!ったく目を離したらこうだもの……。やっぱり関節を外すべきだったかしら」

「怖いよシフィア」

「……」

「やっべ本気の目だ。サボらないから!サボらないから行きますから……」

「早くしなさい」

「はい」


 そう言ってシフィアに言われるがまま、彼女は彼女の持ち場へ戻っていった。今度こそ本当にだろう。しかし、調子が狂う、さっきまでの威厳というか、風格というか……。どこか頼れるお姉さん的雰囲気はどうしたのだろうかと、物陰に隠れながらに、雪華は肩を落とす。というか、反省の看板はどうしたのだろうか、風の噂では、特別に早く下ろしてもよいといわれていたと聞いていたが、どうなのだろうか、ま、私も彼女同然どうでもいい話だけど。


※※※※※


「多世界立体図の説明ってまだだったよな」

「はい、結局これって何ですか?」


 優多はカイトと共に、別館に来ていた。

 正確には、別館にいる優多のもとへ、カイトが訪れてきたと書いた方が正しいだろう。最近仕事には慣れてきたかという、軽い世間話から、突然話しが飛躍したので、少し困惑したが、気になっていたことなので、すんなり聞き入れた。

 それは、この別館の中央に位置する大きな、空間的に3割を占めているそのオブジェの事で。それの名前を、『多世界立体図』というらしかった。地球儀のようなその球体を模したかのようにいくつもの大小様々な球体が細い円を描いて宙を独りでに動いている。それは決まった動きのもあり、また決まった動きでもないものもあった。


「これは、今観測している、多世界の全景だ」

「全景……ですか?」

「ああ、一つ一つが鉄や鉛、粘土の塊だ」


一つを手に取って説明する


「それ、大丈夫なんですか?とっても」

「ああ、離せば自分から向こうに戻ってくれる」

「……」


 それからしばらく、半分質疑応答形式で聞いてきて分かったことは、その各世界と、動きがリンクしているらしい。そもそも世界自体が動いているなんて優多自身思ってもみなかったことだけど、でも、しっくりとは来る現実的な事だった。

 んで、その世界を模した貴金属や粘土の球体は、特別な魔術で黒く染まったり白く染まったりするらしい。

 ちなみにだが、世界にはそれぞれの地位があり、下から、(かい)(どう)(しゅう)(ちゅう)(こう)(かい)()(こく)と8段階あって、それぞれに違った金属を採用しているらしい。

 例えば界ならば青銅とか中なら粘土とか、大きさでも質量とかで、質の違うものを取り入れたりするらしい。ちなみに地球含む、青樹の境界の正式名称は原初の中で、質量は重た目の粘土だ。

 またちなみに香花界というのは特別な世界で、その8位界に囚われない特別な世界なので、最後に界が来ると言っても、“香花”という世“界”といった略称なのだそうな。まあ、カイトが言うには、だからなんだという話だがと、半分興味なさげな風だったが、初めてその事実を知る優多にとって、それは新鮮で。それを聞くたび、目を光らせていた。


 話は逸れたが、黒化したり白化したりする現象が起こるということは、その世界に何かが起きるという事らしい。そして、その世界を模した球体が弾けたり、砂のようになくなったり起動力を失って落ちたりしたとき、その世界は消滅したことになる。

 だから優多と、カイトは言う。

 その時は、優多の出番だと――


「無限からの伝言だ、これから、の多世界の管理は優多の仕事。勿論、僕たちはサポートする。でも、全ての管理権や決定権は全て優多に託す。重い仕事ではあるけれど。できるかい。とのことだ。勿論、否定する権利は優多にあるし、なんなら、俺はお勧めしない」

「やりたい……やりたいです」

「本当か?かなりの重荷になる……。正直、優多。お前の精神じゃ、まだまともに――」

「やらせてください!」


 そう、迫る優多に、カイトはもうなにも言えなかった。

 正直、カイトにはその仕事の責務を優多がする意義が分からなかった。彼はまだ若い、それ故に、犯してしまうミスもある。なのに何故――

 いくら考えても分からなかった。しかし、いくらその仕事を批判しようとも彼は、憧れを持つ瞳で、やります、やらせてくださいと言うのだ。

 彼に批判する権利はあっても、彼を批判するけんりはない。だから、俺は――


「わかった。そう無限に伝えておく。これから忙しくなるぞ」


 そう言った直後だった。

 一つの世界が変な挙動をし始めた途中で止まったり、ブレたりまるでテレビの砂嵐のような機械的挙動、そんな言ってしまえば、それはバグに近い感覚を受けた。

 それに、一つじゃない。もう一つ――もう一つと似た挙動を起こす世界が多数発生するのだった。これは……これは何なんだ? 


「カイトさん――」

「これは……何だ」


 意味不明な現象に流石のカイトでさえも、その状況を素直に把握するなんてことは不可能で、その不可解な現象にただ、その瞬間突っ立って見ることだけしか頭に浮かばなかった――


 やがて、その多世界立体図の世界が挙動不審に陥った瞬間、まるでガラスが割れるかの如くその球体一つ一つが一斉に粉微塵と化した。

 きらめくその砂のような雨の中、その一瞬、まるで切り取ったかのように一辺の音声は消し飛んで、ただきらめくその砂の雨はカイトにとって、久しく感じる有り得ないもので、それは一気に押し寄せた焦燥と重なって、一瞬、ほんの一瞬その光景がなんとも美しく思えてしまった。

 しかし、重責に置かれたカイトに長々とそうさせてくれる余裕なんてなかった。

 瞬間、その表情の裏で感じる緊迫な雰囲気を漂わせ、振り向いて発した。


『行くぞ――無限の下へ』


 瞬間、槍を発すると優多の腕を掴んで、飛んだ。邪魔な壁など、今カイトに置かれた状況にとっては薄く軽い。

 文字通り、直線的に彼のいる場所へ飛んでいく。幾度とある壁と天井を割り破壊し、たどり着いたのは彼の執務室で――

 壁にぶつかるようにして、着地。

 一言目に何て説明したらいいだろうなんて悩んでいる暇なんてなかった。


『無限!全世界がどうなっているか説明しろ!いくら何でもあれはありえない』

「ああ、でも申し訳ないが、解析にもうちょっと時間がかかる……勿論僕だって信じちゃいないさ――」


 どういうことだ?

 一人、放置された優多は、何が起きてるのか分からなくてただ、二人の焦る姿を見るだけで、あたりを見渡せば色んな書物や、記録書で散らかっていた。

 一体全体何が起こったっていうんだ? 


「ああ、ごめんね優多。急に起っちゃ戸惑うのも同然だ」


 そう柔らかく机から立ち上がる無限からは、ふんわりとし笑顔からかけ離れた憤りや焦りを感じた。


「大丈夫だよ、少し事の大きな出来事が起こってしまってね……少しありえないんだ。でも、あり得るからね」

「どういうことです?」

「多世界立体図の全世界が散っただろう。という事は全世界が一瞬にして破滅したんだ」

「そんな、まさか!」

「そう、あり得ないんだ。でも力の使いようによっては有り得るだから、今、重要書類を読み漁って原因を解明しているところなんだ……。でも何かがおかしい。本当はこんな壊れ方しない」

「という事は――」

「そう、本当は壊れてなんていなかった……。でも、その思考に陥るのは極めて危険だ。全世界に、いや、限定的にどこかの世界で何かが起こっているのは確実だ。それも悪いことでね……」

「君が……優多が多世界管理の仕事に就くことはもう知っている」

「無限……それは――」

「彼がやるべきだと僕も思う」

「わかった」


 カイトはそれから会話に割り込もうとはしなかった


「仕事だ――裏世界に僕と行く、それから、各世界の視察だ」

「視察……ですか?」

「ああ、僕が推理するに、破滅した世界は一切ない――」

「一切無い?」


 無限によれば、それは優多には難しい話だった。

 高魔力反応があってその魔力の波長と多世界立体図に扱われている魔力の波長が釣り合って、崩壊したらしい。半分何を言っているのか理解できなかったが、理解できないのなら仕方ないと無限は笑う。

 とにかく、何かあったら裏世界に行けば、一発で原因がわかるらしい。なので、明日その原因追及のために裏世界に行くらしい、一応会議のようなものなのでその筆記担当として行くらしい。どうしてと聞き返すと、多世界管理の仕事の一環だと無限は答えるのだった。


「じゃあ優多、新しい仕事をお願いしたんだけどいいかな」

「は、はい」

「全世界の安否確認をしたいからこの部屋の掃除を頼むね」

「わかりました」


 無限は、流の力で色々なものを見れるらしい。

 命の波動や、人の声などあらゆるものが流として見れるらしい。


 無限は、席に着くと、静かな眠りにつくように目を閉じてしまった。


 掃除とはいえ掃除機をかけてもいいかと、優多は迷う。まあでもいいか。それから、大きな物音を立てても彼が起きることはなかった。

 掃除が終わった後も、彼が起きることはなく、どうするべきか迷ったがそのまま、部屋を出た。

 ちなみにカイトは館の修繕に勤しんだ。


※※※※※


「ねえカイト、やっぱり頼りすぎはだめだね」

「ああ、なら、自分の仕事は他人に任せるな」

「いや、そうじゃなくて……いやそうでもあるんだけど」

「どういうことだ?」


夜風に吹かれてハイボールを飲みながら、傍らでワインを飲むカイトに無限は零した発言に戸惑いながらも、まあ、そんなことよりと誤魔化した。


「今回は大変戸惑わせて申し訳ないと思ってる」

「ああ、まあしょうがないってか俺の口調に合わせるな」

「ごめんごめん、いや、今回の件は僕の失態だ。全てを魔術に頼っていた。もっとアナログな方法を取っていればよかった」

「後悔してても仕方ない。それより良かったじゃないか。深刻な事態は防げたんだろう?」

「ああ、そうだね。良かった」

「それよりも、これからの事を考えろ、裏世界は初めてだろう、優多は」

「うんわかってる。僕らが優多をリードしていかないといけない」

「何言ってんだそう言って、いつも俺やみんなに任せるじゃねえか」

「疲れちゃうんだよ、今日だってそのまま寝てた」

「寝てんじゃねえか」

「ごめんよ」


まあ、と言ってハイボールを飲み干すと、明日はできるだけ頑張るよとだけ言って自室へ帰ってしまった。その際空ジョッキをシフィアに任せていたので、カイトはもう一杯欲しくなったため、彼女にワインの場所を聞き出して案内してもらった。結局、口に合ったワイン一瓶を丸々一本飲んでその日は寝てしまった。

次の日起きた時の感覚はとても気分がよかった。


※※※※※


 翌日二度目の初仕事は優多の住処となっている別館に無限が押し掛けてくるところから始まった。


「え、出発はまだでは……!?」

「事情が変わった、まあ、大半は僕の事情だけど許して」

「え、え、え!?」

「ほら早く着替えて、刀――」

「ちょっと待ってください――」


 そんな感じに始まった。

 昨日、食事中に明日は10時に出発するといっていたがまだ5時だ。いつもの館内仕事の都合上、朝早くから起きることができていたが、今日が休日なら、多分起きてはいなかったし、用意もできていなかった。


「そういえば、君の刀、名はなんていうんだい?」

「え、香花刀ですけど……言いませんでしたっけ」

「ふーん……。そうだったかなまあ、言ってたらごめん」


 支度の際、そんなことを聞いてきた。

 多分、彼は聞いてきたはずだ、出会った時に――いや、やっぱり聞いてはいなかったかないや、もうどっちでもいいや。


 優多は差し出してきた刀を受け取るとベルトに固定する今日は、いらぬ護衛も兼任しているため、しっかりと刀を差していないとだめだとシフィアから厳しめに言われている。いらぬ護衛といったのは、無限の力を理解しているため何故護衛が必要なのかは分からなかった。名だけ必要なものなのだろうかと優多は無駄な思考を巡らす。

 無限に聞いてみた


「必要だよ」

「はあ」


 必要だったらしい、何故なのだろうか? 流れの能力を扱えば――その思考を彼に打ち明けると、はははと笑って言う。


「僕は彼らみたいな超越した生物じゃない。人間と同じなんだよ。腹は減るしご飯を食べたら眠くなる。君も……優多もそうだろう。僕は優多よりもそりゃ強いし能力だって卓越したものだ、けれどたったそれだけだ。能力を使えば疲れるし、脳の機能だって鈍る。そのための君、優多なんだよ」

「なるほど」


 「さ、行こうか心の準備はできたかい?」そういって、空間に裂け目を作る彼は優多の返事を待たない「行くよ」その声と共に優多は彼の背を追うさあ、今、飛び込んだ――

 裏世界へ――


 紅い、紅蓮の雲が頬を撫でると焼けるような熱が伝う。


「熱い!」

「大炎界だからね、そりゃ熱いよ。でも、50度前後だから大丈夫」

「熱い、暑い、厚い!」

「まあ、旧地獄と言っても過言ではないからね、この熱風まさに地獄だね」


 落ちる――落下に腕や顔など、肌が露出している場所すべてがやけどしそうなくらい熱い。


「ごめんね、また地上につなげなかったなんでだろ」


熱風に目がほとんど開けられない。口を開けたら流れ込んでくるかのように熱風が入ってくる。だが、無限に伝える。


「それよりも、そろそろ重力を軽減します……まだ不慣れなので変に止まるかもしれませんが護衛として最善を尽くします――展開!」


 最近分かってきたけど、そう自分に言い聞かせると能力が発揮しやすいのに気が付いた。


 体が宙に堕ちるのを抗うように体が不自然に浮いて、体に感じる速度が一気になくなる。


「うおっ浮いてるみたいじゃーん」

「ちがっ、浮いてるんです!なんでえ!?」


 重力の操作を誤った。

 何が起こったのか簡単に説明すれば、重力をゼロに近づけるようにして身にかかるGを軽減しようとしていたのに、一機にゼロにしてしまって――これは優多の身に結構な負担がかかるのだ何故かって無限の分もあるからで――


『また落ちま――』「おっと」


 す。

 また自由落下だ――ヤバイ、早く、ち地上が見えてきた! 早く軽減……軽減を――


 身にせり上がってくる緊張に軽度の重力軽減しかできない。

紅い岩肌が間近に見え、ぶつかる、その寸前。その瞬間、無限から思いもよらぬ一言が聞こえた――



『捕まってて』



 瞬間、とてつもない威力の風圧が、逆側から噴き出した。噴き出したというよりも、まるで殴ったときの衝撃に近い。まさか――

 一瞬ちらりと見える無限の口元からは白い息が一線を描いていた


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