そうカケ 幻の最終回(ただ書くの忘れてただけ)
後日談というか今回のオチ
「冬がやってくるね」
「ああ、まあ今年の冬は周期的にそこまで寒くはならないだろうが、念には念を入れた方が良い。物資は普段よりも多めにした方が身のためだと思うが……どうする?」
「カイトに任せるよ。現場指示するのはカイトなんだし」
「わかった」
ティーカップをかちゃりと鳴らし、微風に寒さを覚える。
野原という名の庭、そのど真ん中に置かれた、パラソルの下で、無限は紅茶を飲み一風変わった段々に積み重ねられた皿の上に乗ったクッキーを咀嚼する。これはなんという器具なのだろう。そんな疑問も、空に浮かぶ雲の如く、いつの間にか違う形へと遂げていた。
「ねえ、カイト……。僕はどうするべきだったんだろうね」
悲しい声で言う
「わからないさ……わからない、俺だって分からないまんまだ」
彼のその無表情な顔の内には確かな感情がこもっていた。
どうするべきだったのだろう。気づけば、そればかりを考えるのは、ここ数年の話ではない。あの時から、自分はこればかり考えてきた。
自分という名の大罪を、どうするべきだったのか。ありもしない答えを求め彷徨っている。無駄なことだと、皆は言うが。決して無駄なんかではない……。そう思いながら、自分はこれまでを生きてきた。
あとどれくらい、あとどれくらい生きれば償えるのだろうか。あとどれだけ、この世の地獄から、本当の地獄に落ちることができるのだろうか……。
無限にとっては生きることそのものが、地獄の刑に等しかった……。
過去の事。その大罪人が、華日の事をどうにかするなんて、自分にはどうにもできることではなかった。
「ねえ、カイト……」
「どうした」
「華日はどうしたらいいんだろう」
「めんどくさくなったのか」
「そういうわけじゃないさ……ただ、分からなくなったんだ」
「そうか」
どうしたらいいんのだろうか。気づけば華日の処遇まで渋っている自分に呆れていた。
大事なこと、大切なこと。
彼女は一体、どうしたらいいのだろう。
遠くを見つめる目で、無限は奥歯を噛み締めた。
それが正しいのか、間違っているのか。それを定める側になってからというもの、どちらが悪でどちらが正義なのかも分からなくなっている……。
あれが正しいといえば、あれが間違っているといわれるその世の中で、無限は何を基準に決めてよいのかもわからなくなってしまった。
どちらに転んでも自分という名の、他者が批判を垂れ流す。
「僕は……分からないんだ。何が正しいのか……何が間違っているのか……分からないんだ」
「わからない、か」
カイトは、無限の言葉を口ずさみ、小さく細かく咀嚼する。
「誰にだって、答えが見つからない時はあると思う……けれど」
「けれど?」
「それでいいんだと、おれは思ってる」
「答えが見つからなくてもかい」
「そうだな……。俺はそれまでの過程が大事なんだと思っている。答えは得られなかったとしても、その道程で得られた何かがあるだろう、それが例え「答え」ではなかったとしても、何か、大切な解決の手掛かりにはなっているはずだと、俺は思っている。だから迷う事は大切なんだ……」
「そっか……」
無限は、力なく安堵した笑みを浮かべるたあと、テーブルの上にあった資料を見て、はにかむ。
「優多のか」
「うん、本当に感謝しかない」
「ほーん」
「勿論カイトにだって感謝してるよ、いつもありがとう」
「ほ、ほーん……」
「ステレットや雪華……あの娘たちも、他のみんなも本当に守ってくれて嬉しい」
「直接言ってやれよ、優多に。今回この資料をまとめてくれたのも、最後まで華日と戦ったのも、優多なんだから」
「MVPだね」
「よくわからんがそれだ」
カイトは呆れたような声でそう答えた。
しかし、正直優多には感謝しかない。ここまでのクオリティに仕上げてきてくれるとは思ってもみなかった。おかげで、自分の選択もいくらかは軽くなる。
そんな気がした……。
一気に力が抜けて、ため息が出る。
「彼らには、それがない」
「それって?」
「さっきカイトが言ったことだよ……。僕は多分幸運だ、いくらか人間に近いんだから」
「そうか……それでいいなら、俺はもう何も言わねえよ」
カイトは紅茶のカップに口づける。
それを横目に、無限は朗らかな声を出す。
「僕は、初めて知ったかもしれない」
「人間には底知れぬ力があるとか」
「それは、彼らが言う事だよ、僕が言いたいのは――彼は、優多は特別なんだよ」




