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01-01『到着』12/27

「……で、ございます。いろいろご質問もございましょうが、私も村長代理などという職務を預かっておりますが、立場的にはこの『村』に到着された新しい仲間の皆様とあまりかわりはございません。

 えぇ、勿論、知っている事案に関しましてはお答えします。ただその前に色々と決め事、ルールなんてものをご説明しておかないと村の生活に支障がございますので……」

 タケヤの意識はまだ朦朧としていた。ここはどこだ? うわ言のように言葉が漏れる。

「村?」

「あぁ、それぐらいは先にお答えしときましょう。えーと、そうそう、ここはヒノデ村です。人口は38名、今日、新たにあなた達が仲間に加わったので42名になります。まあ小さい村です。

 小さいですが海に面しておりますし、小さいながらも里山、森もある豊かな場所です」

 目の焦点がまだよく合わない。薄暗い。夜なのであろう。外気の冷たさはないので屋内か?

「ここは何処ですか?」

「いや、だからヒノデ村でして。あぁ、場所という意味なら『わかりません』 村を囲むように白線と緑線というものがありまして、実際に線はありませんが目印があるので判ると思います。まあ、線に近づく必要なんてないでしょうが。

 緑線が内側、白線が外側、線の外に出てはいけません。基本は緑線より出てはダメですが時期によっては緑の外、白の内側までは許可されます」

 聞きなれない声がした。4人。自分以外に3人居るなら、その一人の声なのか。

「ダメってなんですか! 村から出ようとしたらどうなるんですか!」

「良くて連れ戻され、悪くて殺されてキャンプファイヤーです。皆様も御存知の、あの赤い革のコートの連中に」

 赤い革のコート。夜の森。焼死体。

 村長代理の説明は続く。

「逆らわないほうが身の為なのはご理解いただけますね。まあ、あいつらは鬼じゃないんで、いやあいつらもですかワッハッハ。ともかくうっかり線を超えた程度ならセーフですよ、その程度で惨殺されたりはしません。まあじつに慈悲深い話ですな、ハッハッ

 とまあ、窮屈な話ですが村人たちで殺し合いでもしない限りは身の安全は、ほぼ保証されております」

「あの連中に誘拐され、この村に監禁されているということですか?」

「どうなんでしょうね。ここまでの説明で終わるなら、それ以外の理由は考えにくいでしょうな。あの連中がテロ集団の類で身代金目的とかで。しかしこれから説明します特記事項でその線は考えにくくなります」

「どういう意味です?」

「この村には『鬼』が来ます」

「へ?」

 あまりに気の抜けた声に、それが自分の声だとはタケヤはしばらく気が付かない。

 しかし村長は当然だとうなづく。

「12月27日から31日までの5日間、鬼が一人現れ村人たちを殺します。鬼を殺すか、1月1日まで生き延びれば平穏な360日が約束されるわけですな。えぇ、勿論丸腰で逃げ回れとかじゃなく、そこそこの武装はありますので生きるか死ぬかが五分五分の殺し合いになりますね、例年の記録ではそうなってるんで間違いない」

 説明の意味を理解しないまま、タケヤはボンヤリと質問する。

「すいません、今日は何月何日ですか?」

「ほら、そこにあるカレンダーをご覧なさいな。今日は12月27日です」

「へ?」

 村長代理は自棄ぎみに笑う。

「この年末の腐れ忙しい時期にヒノデ村にようこそ!」

 扉が開き、若い男が現れる。男は言った。

「村長代理。見回りからの報告です。鬼の出現を緑線外セクション18の南東で確認。ポイントでいうとCです。同時にコンテナも確認。外見、武装から戦闘タイプだと思われる。だそうです」

「やれやれ辛うじて10時前ですか。7時にはやって来ると思ってたんですが、かつかつですな」

 タケヤは言った。

「待ってください! 鬼だかなんだか知らないですがそんなもの相手に、僕に殺し合いをしろっていうんですか!」

「あー、別に嫌ならいいですよ」

「え? いいの?」

「はい」

「なあんだあ、驚いて損しちゃいましたよハッハッハ」

「ハッハッハ」


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