00-01『序』XX/XX
00-01『序』XX/XX
皆様におきましては、とっくに御存知だとは思いますが、恐怖が怖いのは恐怖のタガが外れるまでで、外れてしまえばもうこいつは恐ろしいとかは関係なくなってしまいます。
あー、なんだ恐怖が怖いって間抜けな言い回しは? 恐怖が怖い、恐怖が恐ろしい、頭痛が痛い。まあいいや、ご勘弁いただきましょう。
漢字で書くと『箍』のタガでございますよ、何、タガが判らない? 樽とか桶をですね、あの形にしておく為の輪っかみたいな、え、樽や桶が判らない? 判るけどあれはプラスチックで一体成型してるって?
まあ留め具と思っていただければ構いません。
つまり、あまりの恐怖で留め具が外れて心はガタガタ、精神の歯車が現実と噛み合わなくなって、噛み合わないンじゃぁ怖いもへったくれもありゃしない。
そのまま戻らなきゃ発狂ってことでありまして、万事めでたしめでたしでございます。万事じゃないか。少なくとも本人にとってはで。
ですが大概、この噛み合わなくなった歯車は、結構都合よく元に戻ってしまうのでございます。
なんで留め具で済むとこを、タガなんて言葉を使ってたのかと言いますと、幸か不幸かタガってものは外れても締め直しが利くのですよ。
この宇宙、いや宇宙という概念さえ否定する根源たるウネウネにゅるにゅるピカピカした恐怖の使徒の皆様が呑気にフラフラ散歩してて、それをこっそり覗いているといたしましょう。
ところが不注意にも、うっかり足元の小枝を踏んじゃった、ポッキリ音がしてこっちの存在が気づかれちゃって、さあ大変、ザラザラふさふさギラギラした使徒の皆様方が、てめえぶっ殺してやる! と息巻きながらこちらに向かって迫り来るとこで恐怖のタガがポンと外れ、……ハイ、ここまではよろしい。そりゃタガも留め具も外れますわね。今どき、小枝が地面に落ちてるのかはおいといて。
問題はそのタガがスコンと元に戻って正気になった、辺りを見渡して考えるに、どうやら僕は使徒から上手い具合に逃げ切って、学校の裏の雑木林で気絶していたようだね、アッハッハ。ってンじゃぁ困ります。
まあ、どこにでもいる普通の高校生である、我らがタケヤ君の災難は、恐怖のタガがスコンと戻ったとこからはじまるわけですが。あぁ、タケヤ君の一件と、恐怖の使徒がどうこうの与太話は関係ありません。
ちなみに本名は、竹屋影一郎。えいいちろう。かげいちろうじゃありません。なんとなく忍者っぽい感じもしますがまったくの名前負けでございます。