AOR
日曜日の昼下がり。茉莉奈は由香理と子志駅で待ち合わせた。
近くにある、由香理の家に遊びに行くのだ。
茉莉奈は、私服のデニム・ホット・パンツに、黒いタイツにスニーカー、由香理は、白い超ミニスカートに、これまた黒いタイツにスニーカーという出で立ちだ。二人ともやはりダッフルを着ているし、ある意味、お揃いに近いと言ってもいいかもしれない。
そう思っている二人はテンションが若干上がり、ルン、と手をつないで由香理の家に向かった。
「お邪魔します」
家に着くなり、由香理は、ダッフルを脱ぎ捨てた。その下には、ピッタリの赤いニットを着ており、割と豊かな胸の膨らみが露わとなった。茉莉奈は、女子ながら、そんな光景に軽くドギマギした。
茉莉奈もダッフルを脱ぐ。下には、セシル・マクビーの白いニットを着ていたが、由香理の膨らみと、自分の控えめな胸元をつい、比べてしまった。
「どうしたの?」
「あ、なんでもないよ」
茉莉奈はちょっと慌てて答えた。
二人ともソファに座ると、由香理は、スマホにつないだコンポから、音楽を流し始めた。茉莉奈が初めて聴く、お洒落な音楽だ。
「この音楽、いい感じだね…」
茉莉奈がうっとり耳を傾けると、
「AORだよ。アダルト・オリエンテッド・ロックの略。説明は難しいけど、こんな感じの音楽ね。この曲は、ボビー・コールドウェルの、ハート・オブ・マイン」
「ふーん。もっと、教えて教えて」
「他だと、ボズ・スキャッグズとか、クリストファー・クロスなんかが定番かな。あと、トトとか」
「由香理さん、いい趣味してる」
茉莉奈は、由香理の肩にもたれかかって、聴き入っている。
そんな茉莉奈が可愛くなり、由香理はそっと肩を抱いた。AORの別のナンバーが、軽快に流れ始める。
「ね、魔法使って」
由香理が、半ば、おねだりするように、つぶやいた。
「いいよ」
茉莉奈はそういうと、浮遊魔法を使った。
部屋の中で、二人は寄り添ったまま、ふわふわと浮き始める。
「わ、楽しい」
由香理はさらに、茉莉奈を抱きしめた。部屋の中空を漂いながら、茉莉奈は、由香理の大きな胸に顔をうずめる。AORの雰囲気が、心地良くマッチしていた。