パスタ・チェーン
パスタ・チェーンで、茉莉奈はとカルボナーラとピンク・グレープフルーツ・ジュース、由香理はペペロンチーノとソーヴィニヨン・ブラン(白ワイン)をグラスでオーダーした。
オーダーが済むと、由香理から話し始める。
「茉莉奈ちゃんって、母子家庭だったんだ。大変じゃない?」
「いえ、普通です、暮らし向きも悪くないし」
「そういえば茉莉奈ちゃんって、普段魔法使わないの?あれ以来、見てないんだけど」
あれとは、カフェで由香理がこぼしそうになったラテを、茉莉奈が魔法で元に戻してあげた一件のことだった。
「はい…なんというか、人前であまり使いたくなくて…」
「でも、空飛ぶ魔法とか使えるんでしょう?」
「はい。飛ぶ魔法と、テレキネシス、テレポート、時間退行魔法くらいでしょうか」
「あ、そろそろ、その敬語、やめない?私たち、友達なんだからさ」
「はい…あ、うん」
慣れない口調で、茉莉奈は話を続ける。
「実は、魔法を使ってるところ、皆に見られると、変な風に思われてそうで…恥ずかしい、の」
「そんなこと、ないでしょう」
「でも、いきなり街中でテレポートなんて使ったら、どう思います?それに、ちょっとしか移動できないし」
「まあね。でも、もっと誇りに思ってもいいんじゃない?自分のこと」
「そうでしょうか・・・あ、じゃなくて…そうかなあ?」
「そうよ。あたしなんて、魔法科学を専攻しているのに、魔法が使えるわけじゃないんだもの」
「うーん、そう、言われると…」
「お待たせしました」
オーダーした品が運ばれてきた。
「いただきまーす」
二人は食べながら、更なるおしゃべりを続けた。
「その制服、可愛いよね」
由香理は、茉莉奈が胸元につけている、紺に白い線の入ったリボンタイを指差して言った。
「そう…かな。あまり自分では、気に入ってないんだけど。由香理さんは、魔法科学部だっけ」
「そう。子志駅から、スクールバスじゃないと行けないくらい遠いけどね」
「魔法科学部って、楽しそうだね」
「あたしは魔法文化コースなんだけど、けっこう楽しいよ。そうだ、茉莉奈ちゃんなら、魔法科学部に、魔法推薦で入れると思う」
「そうかなあ…自信ないけどなあ」
「もっと、自信持ちなさいって」
と言って、由香理は茉莉奈の肩を叩いた。
茉莉奈はそんなことだけでも、少し照れてしまった。