手をつなぎながら
茉莉奈と由香理は、それぞれの同級生(香織と、典子)と会う以外には、次第に、二人で会う機会が多くなっていった。
カフェ・チェーンやドーナツ・チェーンで話す以外にも、例えば、戸沢駅西口の商店街をそぞろ歩き、思いついたようにプリクラを撮ったり(アイドルの自撮りのように顔を寄せ合って。その度に、茉莉奈は顔をほんのり赤くした)、一緒に、百均や、ドラッグ・ストアなどで、プチ・プラなコスメを試したり、ユーズド・ショップで、安くなったリズ・リサなどの服を見てみたり、だ。
そう、プチ・プラが好きと言っても、ブランドだって、安く買えるものなら興味がある。そんなところも、二人は似ているのだった。
街を歩いている時、二人は、時折、手をつないだ。というより、いつも由香理の方から茉莉奈の手を、さりげなく取っていた。茉莉奈はその度に、いちいち、照れた。
「あ、由香理さん・・・!」
「え、どうしたの?」
由香理はあまり気に留めていないようだ。
そんな風にして、茉莉奈は制服にキャメルのダッフル・コート姿、由香理はジーンズに赤いダッフル・コート姿で、手をつなぎながら、戸沢の商店街を行く。
「お腹すいたね、一緒に食べない?」
「あ、家に、メールします」
茉莉奈は、母親に、こう、メールした。
「今日は、女友達とご飯食べてくるので、夜はいらないよ」
由香理が、
「へえ、門限、厳しくないんだ」
「うち、母子家庭だし。女友達となら、OKなんです」
と茉莉奈はポニー・テールを揺らして笑った。
「じゃあ、居酒屋でいい?」
「あ、私、高校生なんで、居酒屋は、ちょっと…」
もっともな反応だ。
「だね。パスタ屋さんでいい?」
「あ、はい」
二人は、商店街の入り口にある、パスタ・チェーンに入った。