出逢い
ジンジャー・ブレッド・ラテは、マグを倒したそのJDに、襲いかかるはずだった。彼女の、ジー・ユーで買ったニット・セーターを、汚すはずだった。
しかし、果たして、それは、起こらなかった。
「あれ」
彼女は不思議に思った。無理もない。一度倒れたはずのマグは、起き上がり、液体が中に戻っていた。というより、倒す前の状態になっていたのだから。
「あ、魔法使っちゃった…!」
茉莉奈が口走る。そう、彼女は、とっさに魔法を使うことにより、そのJDを助けたのだ。
「あなた、魔法使えるの?」
JDは茉莉奈に尋ねた。
「…はい」
茉莉奈はなぜか、それを明かすことに消極的だ。
が、JDはさらに聞いてくる。
「その制服、西高のだよね?」
「はい、戸沢西高校です」
「何年生?」
「二年です」
「そうなんだ!すごおい。JK2で、魔法使えるなんて!」
そこに、香織が話に割り込んでくる。
「この子、魔法研究部の部長やってるんです」
「香織だって、部員でしょう」
「私は、魔法使えないもん。茉莉奈は魔法が使えるから、部長になったようなもんじゃん」
「そうだけど…」
話を聞いていたJDは興味深げに、茉莉奈に顔を近づけてきた。
「…やば…」
茉莉奈は思わずつぶやく。
それにも構わず、JDは名乗った。
「あたしは由香理。洞島由香理ね。あなたは?」
「高梨茉莉奈です」
そこに香織がまた割り込む。
「私は、岸田香織です。そちらの方は?」
由香理の隣の黒いキャップをかぶったJDを、手のひらでスッと指し示す。
「あ、私は、神田典子」
かくして、四人は、知り合った。