魔法研究部の活動
茉莉奈は、自転車で、登校していた。
制服のスカートを、サドルに覆いかぶせるようにして直に座り、AORのマイケル・フランクスを聴きながら。由香理に教わり、音楽聞き放題サービスで、ダウンロードしたものだ。
自転車で走りながら、「こないだのトーク、刺激的だったな…」と、思い出していた。
学校に着き、自転車を降りると、彼女は、前かがみになって片脚ずつ上げながら、紺に赤いワンポイントの入ったソックスを直した。ポニー・テールの触覚(横髪を頬に這わせた髪型)が、だらんと垂れる。
そうしていると、後ろから声をかけられた。
「おはよー!」
香織だった。
「おはよう。放課後、部活でね!」
と茉莉奈。香織とは同じ魔法研究部だが、クラスは違っていた。
彼女たちは普通科で、授業は今日もつつがなく終わった。
終礼が終わると、魔法研究部の部員たちは、部室に集まった。
部の活動はどんなものかというと、魔法を使える人(現在は、部長の茉莉奈だけだが)が魔法を使って、その種類や使い方を、部員で研究するというものだ。
部員は、男女五人ずつだ。
この日は、浮遊魔法を皆の前で使った。
制服姿なので、スカートの中が見えないように飛ぶのが大変だ。特に、男子からの視線を感じてしまうのが常だ。
しかも、動画や写真に撮って資料として残すのだから、なおさら、見られるわけにいかない。
無事、茉莉奈が飛び終わると、顧問の女の先生から始まり、部員から拍手が起こる。いつも、茉莉奈が少し、照れくさくなる瞬間だ。毎回慣れない。
「その魔法、登下校とかに使わないんですか?」
女子の一年生部員から質問が飛ぶ。
「ちょっとの間しか飛べないし…体力も意外と使うんだよ」
と、茉莉奈は答える。
「どうやったら使えるの?」
とは男子の二年生部員。
これには、
「わかんない…私の場合、気持ちを集中すると使える…ただそれだけ」
と答えた。
魔法は、特別に選ばれた女子しか、使えないようなのだ。
生まれつき、というわけでもないようで、少なくとも中学生か高校生になってから、使える例がほとんどだ。ほんの一握りの、JCとJK。なぜなのかも含め、よく、わかっていない。
部活が終わると、男子の二年生部員のうちの一人から、声をかけられた。
「ちょっと、いいかな」
「何、柳沢くん…」