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竜王祭カウントダウン 1

「くふふ………… それじゃあ明日の竜王祭以降は、そういう感じでいくから」

「はい、わかりました」

僕が椅子に座るエルーに、目線を合わせてそう言えば、エルーは呆けた顔のままそう返した。エルーはだいたいいつも、この表情をしている。純真無垢な赤子のような、それでいて老い朽ち果てた老人のような…… 

まるで、薬物で自我を飛ばした人間の様に、その瞳にはくもりなく。

そして、全てを諦め捨て去った浮浪者のように、その視線は真っ直ぐと虚無を見つめてていた。


要するに、それは枯れ木の美しさである。


僕は、その枯れ木に、復讐の花が咲き誇ることを願わんばかりだ。


「さしずめ僕は、灰をぶちまける花咲じいさんってとこかな?」

「……なにいってるんですか?」

…………うん。今のは流して欲しかった。

たとえ、エルーにとっては単なる機械的返答であるのだとしても。

「まぁ、いいや…… ともかく、明日からの竜王祭での火竜討伐遠征では、僕もクズ子モードで付き添うから、そこからは手はず通りよろしく」

「はい」

 手はず通りにとは言うものの、実際にエルーがすべきことはほぼない。エルーはただ座っているだけでいい。まぁ、エルーの場合は「すべきことがない」というよりは「できることがない」と言う方が正しいのだろう。なにせ彼は、人間として大切なものを、いくつも欠落させてしまっている。そんな彼に、復讐以外のことを期待する方が間違っているのだ。どうせこの対話だって、彼はほとんど理解していないのだろう。どうせ彼は、復讐以外のことを心に止めはしまい。まぁ、そう言ってしまったら、そもそもこの会話自体が無意味なのだが。 …………ぶっちゃければ、僕が単にエルーと話したかっただけだ。

「ふふ、楽しみだね」

「はい」

僕はエルーを撫でながらそういう。エルーは僕に撫でられるまま、頭を揺らしている。

「期待してくれていていいよ。仕込みは念入りにしてある」

本当に楽しみだ。竜王祭………… その、後が。

「はい、よろしくお願いします」

 さぁ、いよいよ祭りが始まる。僕の用意した祭だ。せいぜい躍り狂うといいさ。



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