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58話 その②

「さて…… 取りあえず見回りに行こうか」


開店の直後、僕は本日の方針を決める。


「全5エリア、正常に運営されてるかチェックしないとな」


その予定とは、この新生ギリアン地区を構成する5つのエリアを視察する事だ。


まぁ、あのユエが入念にマーケティングをした上でつくったのだから、問題など無いのだろうけど。


だが一応、一通りは見なくてはなるまい。


てか、見たい。


「そうと決まれば…… 早速始めるとしよう」


僕はクズ子モードを解除し、ただの星屑として群衆に紛れる。


唯の客と言う視点で、この「新事業」の全体を巡る事にする。


「ふふ…… 楽しみだなぁ」


まぁ…… 


一応は仕事として巡のだが、単純に客としても楽しみである。


「あぁ…… 今日はいい天気だ」


本日の天気は、気象操作をしたので当然晴れ。


最高の開業日和である。


「さて…… まずはファッションエリアに行くとしようか」


そう言って僕は、愚民共が金を落とす様を観察しに行くのであった。


――――


「うわぁ……!! 凄くかわいいぃ!!」


「見て!! こっちも凄く可愛いわぁ!!」


「あぁん!! これも素敵! こっちも素敵ぃ!!」


「こんなにあったら選べないわぁッ!!」


そう言ってはしゃぐ女ども。


服選びで興奮するのは、異世界だろうと現代だろうと同じである。


「ふむ…… アウトレットモールは売れ行き好調だな」


僕は今、新生ギリアン地区を構成する5つのエリアの一つ、「ファッションエリア」に来ている。


ここは所謂アウトレットモールの様な形態をとっており、ちょっとオシャレな造形の小売店舗が立ち並ぶ、服屋の商店街だ。


まぁ、実際はそこまでアウトレットしてはいないので、ただのショッピングモールなのだが。


「ふふ…… やはりウインドウショッピングの効果は絶大だな」


このショッピングモール。


実はこの世界には無い概念が豊富にある。


そう、この世界にはなかった業態なのである。


まぁ、従来の業態にも商店街みたいのはある。


しかし、服屋だけが立ち並ぶ商店街は無い。


このショッピングモールの様にファッション系に特化した商店街は存在しないのだ。


それは、この国の住民の衣服に関しての関心レベルが低いからでは無い。


むしろ高い。


魔術を用いた被服技術は現代のそれにも劣らず、デザインも独創性に長けた物や実用性が高い物など色々豊富であるからだ。


しかし、その被服技術のレベルとは裏腹に、流通技術と量産体制の方が低いためこのモールの様な商業形態は存在していなかったのだ。


だが今回、僕の「ショッピングモール構想」を、ユエが膨らませ、そこにマスタング陣営の協力を得る事で、それを実現した。


被服の素材やベースを、マスタング陣営の協力で一括で作り上げる事で、全体の生産コストを押さえると共に製造効率を上げ、加えて「配送業」と言う流通専門の業態を立ち上げる事で、流通体系を整えたのだ。


こうして、このアウトレットモールは完成した。


そして、製品を作るだけでなく、宣伝の方にも力を入れている。


この世界には無かった商品展示の概念、「ウィンドウショッピング」を成立させたのだ。


今まで店内に入って、折りたたまれた商品を見るだけだったこの世界の住民からしたら「ウィンドウショッピング」と言う概念は、ある種コロンブスの卵的衝撃であろう。


しかも……


「きゃぁあ!! この服安いわぁ!!」


「ぇえ!! 期間限定!? 今しか買えないの!?」


「どうしましょう!! 買わなきゃ!!」


「開店セールですって!? 今だけなの!?」


限定、記念、まとめ売り、フェア等のセール概念は女を狂わす。


購買意欲を否応に掻き立てる。


これぞ孔明の罠。


完璧な計略である。


「大繁盛だな」


どうやら、全てが上手くはまっているようだ。


全員が上手い事、金を落としていってくれている。


「くふ…… いいぞ、いいぞ、もっとやれ」


さぁ…… もっと金を落とすのだ、女共よ。


――――


「ふむ…… いい匂いだ」


僕が次に訪れたのは、「フードコートエリア」である。


ここは沢山の飲食店が立ち並んでいる。


旧ギリアン地区の公園を中心とした居住区の一区画全てが、飲食店になっているのだ。


そう…… この区画の元住居は全て、飲食店にリフォームされているのだ。


この国にある有名所の飲食店は大半は誘致しているし、加えて僕の前の世界の料理をベースとした寿司などの料理も「ギリアン地区名物料理」として出店している。


更に各種スイーツや、各地区特産のB級グルメ的な物も店頭販売と言う形で出店をしている。


そして、それらの通常業態に加え……


「やはり…… この祭り感がいいよな」


この区画の中心にある公園だったスペースには、一般市民が出店する出店がある。


この公園を自由出店できる「フリースペース」として一般市民に格安で貸し出しているからだ。


このスペースではマーキュリー王国国民が自由に、自由な形態で屋台を出店して良いと言う事になっている。


出店に必要なのはリーズナブルなショバ代だけであり、さらに出店に必要な機材をリースしている。


つまり、気軽に出店をしやすい環境ができているのだ。


そのかいあって、出店予約は数か月先まで埋まっており、この楽しげな縁日の空気感を毎日維持できると言う訳だ。


このように、色々な飲食業態が出店している我が「フードコートエリア」であるが、その魅力はそれだけではない。


このフリースペースのお祭り感を含めた、独特の雰囲気もまた魅力なのである。


例えばこの店舗のデザイン。


高級料理から大衆食堂…… それ等がオシャレな造形の店舗で出店されている。


業態や取り扱う料理、客層や店主の趣味などで、店舗のデザインも多種多様であり、それらが複数立ち並ぶ事で、何とも不思議な空気感が生まれている。


しいて言うなら横浜の中華街や浅草の商店街に通じる、独特の雰囲気だ。


価格帯も味も色々で、そこに縁日の雰囲気も加わり…… 複雑で、何か楽しい。


そんな、何度でも楽しめる…… 


とても良い飲食街に仕上がっていると思う。


「あぁ……!! 旨かったぁ!!」


「ねぇ! あのお店も言ってみたい!!」


「あの店の酒とつまみ…… 最高だったなぁ」


「甘い物は別腹よ!! あそこも行ってみましょう!!」


実際、みんな楽しそうである。


みんな幸せそうで何よりだ。


僕は人の幸せを見るのが、生きがいだからな。


うん。


「ふふ…… 折角だから、僕も食べてこうかな」


ちなみに……


「やっぱりここはギリアン地区名物、『萌え萌えロリっ娘焼き』かな?」


僕の息のかかってる飲食店は全て、リピーター確保の為に、依存性を持つ無味無臭の薬品が微量に含まれている事は……


「そうだ『幼女の雫』も買おう」


ここだけの秘密である。


萌え萌えロリっこ焼き…… いったいどんな食べ物なんだ。


ただ、クズの兄貴プロデュースなのは間違いない。

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