58話 開業日
※応援コメントおねだり第二弾!
今回はマリアにおねだりしてもらいました。
なんちゃってサキュバス「え、えっと、せ、宣伝?」
クズの兄貴「そう、宣伝」
なんちゃってサキュバス「宣伝ってなにすればいいの!?」
クズの兄貴「僕にもわからないよ…… だだ」
なんちゃってサキュバス「ただ……?」
クズの兄貴「責任重大だろうなー……って」
なんちゃってサキュバス「…………え?」
クズの兄貴「この応援の成果しだいで、その後書籍化の売り上げとかも変わってくるんだろうなぁー……って」
なんちゃってサキュバス「…………ぇ?」
クズの兄貴「もしかしたら、このマリアの一言で今後の全てが決まっちゃうかもなぁー……って、下手したらみんな路頭に迷ちゃうなぁー……って」
なんちゃってサキュバス「………………っ!?」
クズの兄貴「まぁ……… ふと、そう思った」
なんちゃってサキュバス「………………(汗だく)」
クズの兄貴「………………(にやり)」
クズの兄貴「まぁ…… 気楽にやれよ(ゲス顔)」
なんちゃってサキュバス「出来ないよッ!!(泣き顔)」
「ゲゲゲゲ! タシカニ、カンセイ、シタ、カンセイ、シタ」
新生ギリアン地区の完成。
その宣言をしながら小躍りをする、醜いドヴェルグ達。
うん、めっちゃキモイ。
「実に良い出来だ…… 素晴らしいよ」
「ウゲゲゲ!! ハヤク、ヨコセ、オマエノ、タマシイ、ケイヤク!」
完成の出来を見て感慨に耽るっていると、ドヴェルグ共が騒ぎながら催促をして来る。
今回報酬…… 僕のしもべとなり、不眠不休で建築を行うと言う契約の対価を催促してくる。
そして、契約の対価とは即ち僕の魂。
つまり奴らは、あろうことか上級悪魔であるところの僕の魂を催促しているのだ。
「そうか…… そんなに僕の魂が欲しいか」
「ソウダ! ヤクソクダ! ハヤク! ハヤク!」
「そうかそうか、まぁ、約束だしな、くふふふふ………」
そう、下等な低級悪魔の分際で…………だ。
この僕の魂を、カスごときが要求してきているのだ。
ふふ、いや、全くもって……
「おこがましいな……………」
「……………………………ゲ?」
僕はそう言って、ドヴェルグ共ににこりと微笑む。
「いいだろう、たんと喰らえ」
そして……
「実際に使うのは初めてだ、光栄に思え…… 『喰暗い』!」
僕がそう言って微笑んだ…… 次の瞬間。
「ゲ……………? グゲェ!?」
僕を中心として、僕の影が周囲に広がる。
夜の闇を塗りつぶす様に、より深い黒色が辺りを埋め尽くす。
「くふふ………… 全員喰らってやるよ、綺麗残さずな」
「グギャ!? ギェ!? ケ……!? ヤ、ヤクソクガ、チガウ! 」
そしてその黒色は、次々とドヴェルグ共へと襲いかかる。
「約束ねぇ………… ヤクソクって破る為にあるんだぜ? 知ってた?」
地を這うように広がり、血を求めて迫り行く様に……
『喰暗い』がドヴェルグ共を喰い殺して行く。
「ケ、ケイヤクヲ……!! ケイヤクヲ、マモレェェェエエ!!」
「ははっ…… 馬鹿だなぁ、契約に『殺してはいけない』なんて書いてないぜ?」
そんな、僕の言葉と共に放たれる黒い闇。
奴らの足元から絡みつき、喰らいつき、飲み込み、取り込み…… そして噛み砕く。
ゴキ、バキ、ぐしゃ…… と、影と言うには嫌に生生しい音を立てて、ドヴェルグ共を次々と喰らって行く。
ふむ……
ごれが『喰暗い』。
遠距離攻撃が主体の僕にはあまり使い道の無い、死にスキルである。
「キサマァァァ!! ダ……… ダマシタナァァァぁァアアア!!!」
「騙す? 人聞きが…… いや、悪魔聞きが悪いなぁ」」
断末魔と共にそう叫ぶ、低級悪魔共。
僕は次々と食い殺されていく哀れな悪魔共を一瞥し、そして振り返る。
「騙してんじゃない…… これは搾取してるんだ」
「グ…… ゲ…ェ…… グゲェェェェェェェエェッッ!!!!」
そして僕は、そのまま歩き出すのだった。
「くふ…… 騙すってのは対等の相手にする物だろ? 身の程をしれよ」
さて……
今日は予定が押しているから、ゴミ処理にそんなに時間は割けない。
次の仕事が待っている、もっと効率的に動かねば。
「さぁ…… 始業の時間だ」
くく…… ああ、今日は忙しくなりそうだぁ。
――――
「さぁ!! 皆様!! 本日はようこそおいで下さいました」
ざわざわと騒ぎ群がる愚民を見下し、僕は声高にそう言う。
クズ子モードことジョースターさんの姿で龍の頭の上にたった僕は、存在感をフルに発揮して、そう宣伝をする。
「今日はこの、新生ギリアン地区を十二分に堪能してください!!」
そう…… 今日はついに完成した新生ギリアン地区…… つまり、僕の「新事業」の記念すべき開業日なのだ。
先日の「龍を従えた王族」と言う強力な宣伝と、マスタング陣営の信頼ある経営の安心感も合わさって、本日の来場人数は凄い事になっている。
人がうじゃうじゃとせめぎ合っている。
「間もなく開門いたしますので、しばしお待ちください!」
今……
このギリアン地区の門前が、おびただしい数の人間で埋め尽くされているのだ。
凄いなぁ、実に壮観な眺めだ。
何というか、こう……
今までの努力して来た物が、こうして実を結んでいるのを見ると…… 何か感じる物があるなぁ。
うん、何かいい気分だ。
なんて言うか…… くふふ、テンションがあがるぜぇ。
くふ… くふふふ………
くふぁはっははははぁっッッ!!!!
全く、虫の様にこんなに湧きやがって人間がぁ!
人がまるでゴミの様だぜぇ!
「それでは、始業の合図をとって頂きましょう!!」
あぁ……
だめ、もう僕我慢できない。
もう、始めよう、さっさと開店しちゃおう。
もう、なんか、僕、わくわくすっぞ。
くふ…… さぁ、行くぞ。
僕が、楽して金を稼ぐ為の商業地区を……
そう…… 僕の、僕による、僕の為の理想郷を!
今…… 始めよう!!
「さぁ、エルヴィス殿下!! 開門の合図をお願い致します!!」
そして僕は、逸る気持ちを押さえながら、だけどもノリノリでエル―を見やる。
昨日さんざん一緒に練習をした、開業の挨拶をしてもらおうと、彼に視線を送る。
すると……
「…………………………………?」
するとエル―は、そんな僕を見上げて小さく首をかしげる。
いつもの様に僕を見つめ、「なに?」とばかりな、あどけない視線を送る。
「エ…… エルヴィス殿下? ほ、ほら…… 昨日練習した奴」
僕はそんなエル―を見返し、昨日の練習を思い出してもらえる様、とりあえず促してみる。
「………………………………ぇ?」
しかし、反応は芳しくない。
うん………
だめだこいつ。
完全に昨日やった事忘れてるわ。
すごいおばかさんだわ。
3歩あるいたら忘れるタイプだわ。
「えっと………… うん」
あぁ…… 完全に復讐の事しか頭にないわこいつ。
「そ、そうでした!! ………………そういえばエルヴィス殿下は、本日、喉の調子が芳しく無かったのでしたっ!!」
うん、もそもあれだな。
エル―にそう言う事を、期待した僕が愚かだった。
そうだ、こいつは復讐以外は何も無いやつだったんだ。
「では、代わりに私が宣誓させて頂きます!!」
そう…………
他に何も無いんだ………… 本当に、何も。
「新生ギリアン地区………… 開門!!!」
だが……
君はそれでいいよ、エル―。




