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ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ  作者: ユウシャ・アイウエオン
第一章 夢と希望の始まり(勇者マジ殺す)
6/78

6話 腐りきった世界に一石を投じる。

ある冒険者の手記


今日は面白い事がわかった。


面白い事というのは俺のスライムについての事だ。


俺はスライムをパートナーにしている。


俺の家の家系は代々冒険者なのだか、なぜか全く回復魔法が使えない。


だがその代わりの秘伝として、薬草を食わせたグリーンスライムをパートナーにして傷口に塗るという一族の秘術があるのだ。


そのグリーンスライムに関しての事なのだが……


ある日俺は森に入って狩をしていた。


そしてその途中で薬草の群生地を見つけたので、いつもの様にそれをスライムに食わせて薬草を取り込ませていた。


しかし、その時ハンバルトタイガーが現れたんだ。


奴はかなり強い魔物だ。


だから俺は奴の姿を見るなり、一目散に逃げた。


薬草を食べていたスライムを置いてだ。


もちろん、そのスライムは俺のスライムの分裂体なので置いていっても安心だ。


本体は俺のポケットの中にいるのだ。


スライムは他と違ってこういう事が出来るから便利だ。


とにかくその日は無事に逃げ帰った。


面白い事があったのはその翌日だ。


俺はまたその森に狩に出かけた。


すると、この森にはいないはずのフォレストスライムがいたんだ。


フォレストスライムはグリーンスライムの上位混成種だ。


だから俺はピンと来た。


ああ、これはあの時置いていったスライムが運よく生き残って進化したんだと。


そしてそのスライムは、俺に気付くと俺の元によってきたのだ。


攻撃をしないところを見ると、どうやら種類が変わっても、俺のスライムの分裂体である以上『使い魔の儀』の支配内にいるらしい。


こうして俺は…… グリーンスライムとフォレストスライムの二種類のスライムを使い魔に出来るようになったのだ。


とても面白い発見だ。


もしかしたら、フィールドスライムやクレイスライムとかも作れるのかもしれないぞ。


――――


と、まぁそういった文献があった。


この文献から分かる事は三つ。


1 スライムは分裂させる事ができて、その分裂した別固体も同じスライムとして支配下に置くことが出来る。


2 別固体のスライムは契約したスライムでありながらそうでないグレーな存在であり、そのため契約時の属性で固定される本体のスライムとは違い、状況によっては変体をする。


3 変体して種別が変わったスライムでも、元は同じスライムであるため使い魔としての支配が有効。


と、言う三点である。


そして、それを踏まえて言おう。


僕のこのイノスは最強であると。


イノス…… 弱いスライムの中でも更に最弱のイノセントスライムだが…… ただ一つ、素晴らしい能力を持っている。


それは、どんな環境であっても適応し変体するという凄まじいまでの適応性だ。


戦意がこもった「攻撃」であればどんなに弱い魔法でも攻撃でも、泡のごとく砕け散るイノセントスライム。


だが、それがただの「環境」であれば凄まじくしたたかに適応するのがイノセントスライムなのだ。


つまり……


使い魔の儀で固定したイノセントスライムをベースに持ちながら、分裂体をあらゆる環境下に送り出せば…… 僕は全種のスライムのみならず新種のスライムだって生み出す事ができるのだ!!


文献の冒険者は、ベースがグリーンスライムだったから、せいぜいフォレストスライムやダークグリーンスライム、フィールドスライムくらいしか造れないのだろうけど。


僕のスライムは何にでもなれる…… つまり無限だ。


くふふ…… 最強だ。


いや、まあ所詮はどこまでいってもスライムだから強くはないんだけど…… でもその汎用性は恐ろしいまでに広い。


あらゆる状況に対応できるというのは単純に凄い。


そしてそのうち、あらゆる種類のスライムを手に入れて、そして……


くふふ…… あれに使う。


まぁ、ともかく今はレベル上げだ。


少し寝てから場所を変えよう。


――――


「ふぁぁ………」


僕は5時間ほど寝てから、王国の西の城門へと向かった。


もうすっかり日が高い。


僕は西の城門の門番に身分証を提示して外へと出てゆく。


ちなみに身分証は金剛貨をくれたミルカルトさんがその時一緒にくれたものだ。


鳳崎が僕だけ追い出すと言い出したとき、素直にそれを受け入れたちょっと冷たいミルカルトさんだけど、本当にそこはありがたい。


さぁ、薬局で買った対毒薬を飲んで…… 進もうかな。



この西門付近には魔物がいない。


だから、防御系のステータスが1レベルと変わらない僕でも危険なく出歩く事ができる。


この対毒薬を飲んで、数時間の間でなら。


うん…… 肌がぴりぴりしてきた。


毒素がただよってきてる。


あれが腐食の森か……



腐食の森。


文字通り腐った森だ。


いや、正確には全てを腐らせる強力な呪力を帯びた木々が生える森だ。


その木々や草々は、吐き出す呼気や樹液、花粉に至るまで全てが悪臭を放ち、腐敗をしている。


そういった、魔物が住む事も近寄る事も出来ないとても危険な森だ。


まぁ、この森が魔よけになってるおかげで王国の西側は安全なんだけどね。


王国自体は結界が張ってあるから、ある程度離れているここの毒素は入ってこないし。



とにかく…… 


この腐敗の森の中では、この腐敗の森の植物以外は生息できないとされている。


もちろん…… 


このありとあらゆる「環境」に適応する事ができるイノセントスライムを除いてだ。



この森にイノセントスライムが生息した事はかつて無い。


何故なら、イノセントスライムが発生するには、何かしらのスライムがここで生息し、そして突然変異しなければならないのだから。


だが……


この森に生息できるスライムはいない。


フォレストスライムだって朽ち果てるし、ポイズンスライムだって腐り落ちる。


普通のスライム達はここに順応する事ができないのだ。


イノセントスライム以外のスライムには。


つまり……


僕のようにイノセントスライムを直接持ち込むしか、この腐食の森にイノセントスライムを、そしてスライムを生息させることができないのだ。



「さぁ、イノス行ってきな」


僕は森にある程度近づくと、イノスをそっと地面に置く。


するとイノスは地面をゆっくりと進みながら森へと向かって行く。


そして森の手前で一回だけ分裂すると、また僕の下へと返ってきた。


これだけレベルの差があれば、些細な命令など思いのままだ。


知能のないスライムの操作なんて容易い。


もちろん、それは別固体への遠隔操作であってもだ。


「さぁ帰ろうイノス」


僕はイノスを持ち上げて、そして来た道を戻る。


イノスはぷるぷるとしていて相変わらず可愛い。


さて……


宿屋に帰って、スライムの操作の練習でもしようかな?


くふふ…… 腐食の森、いったいどのくらいで堕ちるかなぁ


御宮星屑 Lv42


【種族】 人間


【装備】 なし


〔HP〕 40/50

〔MP〕 10/10


〔力〕 210

〔魔〕 0

〔速〕 0

〔命〕 210

〔対魔〕0

〔対物〕0

〔対精〕0

〔対呪〕0


【使い魔】


イノセントスライム


【称号】


なし


【スキル】


悦覧者アーカイブス

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