表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/78

56話 解 放

おかげさまで、ああ勇者がなろうこんで受賞致しました。


これも一重に皆様の応援のおかげでございます。


これからも頑張って執筆していきますので応援よろしくお願いします。


書籍化しても更新は続けますので、どうぞよろしくお願い致します。


また、エリュシオンライトノベルコンテストのサイトで作品への応援コメントを募集しておりますので、土下座するから書いてください。


お願いします、お願いします。(土下座執筆中)



生活が整ってきましたので、連載をまた頑張りたいと思います。

ただ、今後は更新頻度を上げるため一話あたりのボリュームは減るかと思いますがご了承ください。


これからもああ勇者をよろしくお願いします。


アイウエオン

「ぁぁ…… 完成だ」


マーキュリー王国から遠く離れた平原。


そこに巨大な体躯を持つ竜が座していた。


黒い竜が、僕の前で大人しく静止しているのだった。


「これで……」


まぁ……


本当の事を言えば、これは龍ではない。


龍の姿をしてはいるが、これは最高級の魔動骨格とシルビアが研究中のホムンクルス技術を流用した人工筋肉をベースに僕のスライム体で補填したものに、ハイドドラゴンの素材を張り付けてた、人造ドラゴンであり、簡単に言ってしまえば、ドラゴン型のゴーレムと言ったところだ。


とにかく……


僕が求めていた、ドラゴンが完成したのだ。


僕の計画の始動に必要な、最後のピースであるドラゴンが完成したのだ。


つまり…… 


つまりこれでやっと……


「これでやっと…… エル―、君を助けにいけるよ」


ついに…… この時がきたのだ。


僕は……


「くふふ…… 直ぐに解放してあげるからね」


僕は急ぎ、向かうのだった。


僕を待ち、そして僕が待つ彼の元へ、向かうのだった。


「さぁ…… ついに始められるよ」


エル―、君の復讐を…… ね。


――――


「エル―……… いるかい?」


前回と同じく黒猫の姿でエル―部屋に侵入した僕は、彼の姿を探し、小さく声をかける。


「…………居ないのかい?」


しかし、声をかけても返答は無い。


それどころか……


「ん? ……………気配が無い」


人がいる気配すら感じられない。


部屋はしんとしていて、ただ静寂が広がっていた。


「……………………隠れているのかい?」


その後、僕はエル―の部屋を一通り確認する。


そして、そのどこを探してもエルーの姿が無い事を確認した。


壁に埋め尽くされた呪いの文字、辺りに飛び散った血痕、血がにじむ深い爪痕。


凄惨なるエルーの痕跡はあれど、それを記した本人の姿はどこにも無いのだった。


「どこかに移したか……?」


エル―が今だ生きている事は解っている。


今やエル―の肉体は半分以上が僕に依存したスライム体であり、つまりは僕の生命とリンクした肉体で生存している。


普通の人間は70%が水分と言うが、エル―の場合は70%が僕のスライム…… 要するに僕が死なない限り、エル―もまた死なないのだ。


そしてリンクしているが故に、エルーの生存は確認しなくても分かる、感じる。


ただ、生存は分かっても所在は分からない。


エル―の肉体は僕の体の一部ではあるが、人の感覚を残したままにしたいと言うエルーの希望に沿う為に、その支配権を完全に譲渡している。


だから実の所、リンクはしててもシンクロ率は極めて低い。


僕はエル―の生存に必要なエネルギーを供給しているだけで、エル―に関しての細微な情報を得る事は出来きていないのだ。


「…………ここじゃ無いとすると、他に考えられるのはエリザベートの部屋か」


エル―がこの部屋に居ないのは確かである。


そして、ここに居ないのであれば、恐らくエル―はエリザベートの部屋にいるのだろう。


いつでもエルーの事を嬲れるよう、自室に監禁をする。


あの女…… エリザベートが考えそうな事だ。


「ふん…………」


僕は猫の姿のままに、エル―の部屋を抜け出す。


そして、エリザベートの部屋へ向かう。


エリザベートの部屋は既に調べてある。


こんな事もあろうかと、下調べしておいたのだ。


だが……


「本当にこんな事になっちゃったか……」


エル―を自分の部屋に持って帰る。


それは恐らく、エリザベートの自制が効かなくなっている事を意味している。


エリザベートにとって「この部屋に来た時だけ狂気を解放する」と言うのは、ある種の抑制であったはずだ。


狂気に満ちたエルーの部屋だからこそ、自己の狂気も解放できる。


あの女にとって、「エルーの部屋に行く」と言うのはそう言う「自制」であったはずなのだ。


そして……


その抑制が破られた今…… 狂気を自分の部屋に、日常に持ち込んだエリザベートは今。


あの女はエル―に何をしていると言うのだろうか…… 何をしてしまっていると言うのだろうか?


前に来た時からいくつかの時間が経過し、エリザベートを取り巻く状況は更に変化している。


悪化している。


その無能っぷりを遺憾なく発揮したエリザベートは、「アカシックカンパニー」の業績をさらに悪化させているのだ。


加えて、現在このマーキュリー王国経済界において一番熱を持つ話題である、ユエを主導とした「新事業」に参入出来ていないと言う現状。


それらの事柄がエリザベートの精神を殊更に追い詰めているのだろう。


特に「新事業」については、「ライバルのマスタングは参入できている」と言う点が、ダメ押しとばかりにあの女の精神をを攻めたているのだ。


………………前の時点で、あれだけの狂っていたあの女。


果たして今は、どれ程までに壊れていると言うのか?


「……………………………エル―」


エル―の心の強さは………… 


もとい、エル―の心の壊れぶりは半端ではない。


もうこれ以上は無いとばかりに壊れているあいつの心は、最早どうにかできるものでは無い。


だから影響は無いはずである。


僕の知るエル―が、あれ以上壊れる事は無いのだ。


だが……


だが、それでも少し不安を感じる。


そこはかとない不安を……


「…………大丈夫だよな」


僕は、少しだけ早足でエリザベートの部屋へと向かうのだった。


――――


「………………さて」


黒猫の姿のままエリザベートの部屋へと入り込んだ僕は、周囲を見渡してエルーの姿を探す。


その部屋は、地下牢のようなエルーの部屋とは違い、豪華絢爛で美しい。


一応は同じ王族であると言うのに、なぜここまで違うか。


「ふむ…… いないな」


部屋を一通り見渡した僕は、小さくそう呟く。


直ぐにわかるような所には置かないだろうと思ってはいたが、予想どおりエルーの姿は見えない。


「だけど、この部屋の中にはいるはずだ」


兄弟の監禁。


そんな王族らしからぬ異常な行動は、いくらエリザベートが馬鹿だとしても、大っぴらにはやらないだろう。


だが、かといって離れたところに監禁したりはしないはずだ。


離れたところに置くのだったら、エルーの部屋に監禁したままでも変わらないのだから。


そう…… 


間違いなくエリザベートは自室にエルーを監禁しているはず。


自分の狂気を…… 部屋へと持ち帰って大切に暖めているはずなのだ。


「ん…………? エルーの気配か?」


うろうろと部屋を探していると、微弱ながらエルーの気配を感じる。


本当に微弱ではあるが、確かにエルーの気配だ。


僕とエルーのリンクは、細いが確かに繋がっている。


近くに寄れば感知できる程度には繋がっているのだ。


だが……


「気配がすごく小さい、どこにいるんだ? だけど……」


生きているのかどうか分からないほどに微弱な気配。


その、あまりの気配のか細さに、一抹の不安を感じる。


しかし…… 僕はその時、それよりも気になってしまう点があった。


「…………いったいどこにいるんだ」


そう、いないのだ。


いや、正確には「人がいそうな場所」が無いのだ。


辺りに人を閉じ込めているような箇所が見当たらないのだ。


確かにエルーの気配はするのに、そのエルーがいそうな箇所がどこにも見当たらない。


そう…… 


そこには…… 僕の目の前の光景に「人間一人を隠しておけるスペース」が見当たらないのだ。


「ん………?」


しかし…… そんな僕の視界に、一つの物体が映り込む。


「…………………………………まさか」


一つの違和感ある物体が映り込んでくる。


「いや、まさか……」


そこに、明らかに怪しい物が存在していた。


皇女エリザベートの自室の隅に…… とても異質なものが存在していたのだ。


「そんな………… マジか……?」


それは一つの箱。


きらびやかな装飾が施された綺麗な宝箱。


王宮に存在してなんら違和感の無い、至宝が入っていることを期待させるような、立派な宝箱。


そう…… 


その見た目事態に違和感は無いのだ。


だが…… その存在感が明らかに異質であった。


まるで…… パンドラの箱を思わせるような、とても不吉で破壊的な存在感を帯びた箱であった。


そして、その箱は……


「この小さな箱………… に?」


人が一人はいる大きさではない。


「………………………」


僕は人の姿へと戻り、スライム化した指を宝箱のかぎ穴に流し込んで開錠をする。


そして一息呼吸を整えてから、その箱にゆっくりと手をかけた……


「………………っ」


恐る恐るあけた、その宝箱の蓋の先にあったもの。


僕はそれを見て思わず息を呑む。


あまりの光景に、僕は思わず停止してしまう。


そこには……


「え……… る……」


いた。


僕の知る彼が、僕の知らない姿でそこにいた。




彼は。




小さな箱にぴったり入るようコンパクトにされ。




瞳のない視線を虚空に向け。




塩辛の様に自らの臓物に漬けられていたのだった。











「………………………………」


汚物と体液に塗れた彼を、僕は救い上げて抱きしめる。


そして無言のまま、僕は彼の治療を始めるのだった。


「………………エルー」


エル―を見た直後に湧き上ったこの感情。


それはもう、怒りとかそう言うのじゃなかった……


もう、何かを超越していた。


とにかく…… 


何か凄い感情が芽生えた。


その感情は僕が初めて感じる気持ちで、そしてとてつもなく激しくて静かな感情だった。


僕は……


初めて感じるこの感情の名前を知らない。


斬新すぎて、まったくわからいない。


だが……


そんなわからない気持ちの中で、ただ一つ確信できるのは……


僕はこの気持ちを生涯忘れる事は無いだろうと言う事だ。


絶対に……


そう、絶対にだ。


――――


「……………………………ぅ」


僕の腕の中で、完全に元通りになったエル―が少しづつ動き始める。


そして、僕の体に身をあずけながらゆっりとその顔を起こし、呆然としながら僕の顔を見つめる。


「……………………………?」


そして虚ろな瞳で、彼は無言のまま小首を傾げた。


「ふふ………………… 気が付いたかい?」


その寝起きの子供の様な所作に僕は少しだけ笑みをこぼし、優しく声をかける。


実際は寝起きなんて生易しい物ではない。


恐らく、意識が正常に起動すること自体が久しぶりのはずだ。


「僕だよ…… ちゃんと分かるかい?」


僕は完全に修復した、エル―本来の顔を見つめ、そう問いかける。


エルーの美しい顔を見てそう問いかける。


精神崩壊しすぎた事で「人間味」が完全に消失しているその表情は、生来の美しく整った造形も相まって、正に人形だ。


「ぁぁ………………… おはようございます我がマイマスター


白く、冷たく、無機質で…… とても美しいその顔。


「私があなたを忘れるはずはないです……… だって」


だが、その中でも一番美しいのは……


「だって、貴方は私の復讐きぼうなのですから……」


やはりこの醜い瞳だろう。


この、黒く暗く昏く、深く闇を携えた…… 奈落の様に美しい、この瞳だろう。


「くふふ…… 大分待たせてしまったね」


僕はエル―を抱きしめながら、その後頭部を撫でてあげる。


そして、彼の飲み込まれそうな程に深い瞳を見つめながら、優しく囁く。


「ようやく準備が終わったよ…… さっそく始めよう、もう、我慢しなくていいんだ」


彼に微笑みかけながら、そう囁いてあげる。


「さぁ………… 君の素敵な復讐みらいが待ってるよ」


きっと僕は今、僕の今までの人生の中で一番優しい目をしている事だろう。


「…………………………………」


僕がそう言ってあげると、エル―は僕の事を見つめたまま停止をする。


表情が変わらな過ぎて分からないが、多分驚いているのだと思う。


「……………………………」


そしてそのまま静止を続けるエル―。


ふむ……………


あまりの朗報に思考停止してしまっているのだろうか?


「………………………」


エル―はしばし静止をした後、ゆっくりと顔をさげて俯く。


「…………………」


彼は俯いたまま、僕の胸元にこつんと額を当てる。


「……………」


そして彼は、ふるりと小さく体を震えさせた。


「……………………嬉しいかい?」


僕はそんな彼の背中をぽんぽんと優しくたたき、そう声を掛けた。


「……はぃ」


しばしの間を置いてから、吐き出すようにちいさく返事をするエル―。


そして彼は、返事の後にゆっくりとその顔を上げる。


僕に抱っこされたまま、僕の瞳を見つめ、人形の顔に笑顔を作った。


「とっても嬉しいです」


しかしその笑顔は………… 


笑ってなどいなかった。


いや、あれは彼にとって、きっと心の底からの笑顔なのだとは思う。


だが、あれを笑顔と言ってしまったら、「笑顔が絶えない」と言う言葉は地獄を表す言葉に成り果ててしまう事だろう。


それほどに、それほどまでに……


彼の笑顔はおぞましく狂気的で猟奇的だった。


血が冷え切るほどに、そして暖かい笑顔だった。


その日僕が見た、エルーの満面の笑みは……


「そうか…… 喜んでもらえて何よりだよ」


世界に類を見ないほどに、醜悪ふつくしいな笑顔だったのだ。

御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【眷属】


マリア(サキュバス)


【契約奴隷】


シルビア


【契約者】


ユエルル・アーデンテイル


【従者】


エルヴィス・マーキュリー


【舎弟】


御宮緋色


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』 『脳内浸食』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『悪夢の追跡者ファントム・ストーカー


絶投技オメガストライク』 『火とめ焔れの一夜ハートストライクフレイム


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)』 『魅惑アプローチ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ