54話 この上ない理由
※ グロ注意。
※ 内臓をどうこうする描写あり。
「…………………こんばんわ、元気にしてたかい」
僕は前回と同じように、黒猫の姿で王宮へと忍び込み、薄暗いエルーの部屋に入り込んだ。
「エル―、僕だよ」
僕は部屋の中心で、ぺたりと座ったまま天井を見ているエル―に向かって語り掛ける。
「……………エル―?」
しかし、エル―から返事はない。
エル―はぽやっとして、天井を見つめたままだ。
「どうしたんだい……?」
僕は少し心配になって、急ぎ彼に近寄り、そして彼の前で元の姿に戻る。
「………………………ぁ」
すると、そこでようやく僕の存在に気が付いたエル―が僕の方をみやる。
そして………
「…………………ぁぁ……我が主」
そこで僕は、エル―の状態が正常でない事に気が付く。
エル―の状態が、僕の想像以上に悲嘆な事になっていると気づいた。
「…………こんばんは」
少し呆けた様な口調で……
そして、どこか虚ろな瞳で僕を見やるエル―。
焦点のあっていないエルーの片目が、ゆっくりと僕を捉える。
そう、片目が…… 片目だけが僕を捉える。
「エル―………」
なぜなら、エルーのもう片方の瞳は……
「……………どうされました?」
ぐしゃぐしゃに潰れていたのだから。
「痛むかい……?」
僕はエル―の頬に優しく触れてそう尋ねる。
まぁ…… 聞かなくとも相当痛むだろう。
ぐしゃぐしゃの眼球が、治療されることなくただ突っ込まれているのだ。
抉り取られる方が、まだマシなのでは無いかとさえ思える。
まだ壊死はしてないところを見ると、どうやら潰されたのは最近のようだが……
こんなにも酷い仕打ちをしているとは予想外だ。
最低限死なないようにはしてあるとは言え、エルーの痛覚はいじっていない。
痛みで発狂してもおかしくはないハズだ。
「痛みですか……?」
僕がそう尋ねるとエル―は頬に触れる僕の手に、自らの手を重ねてそう返す。
そして……
「痛いです、狂いそうなほど……………」
優しく微笑んでそう答えたのだった。
「……そうか」
僕はその笑顔に、少しだけぞくりとしたものを感じながら微笑み返す。
うん…… 相変わらずエルー笑顔は綺麗だな。
「さぁ…… 治療をしてあげるよ」
僕は、地面に座るエル―を立たせてそう言う。
そしてエル―の右目の治療を始るのだった。
先程のエル―の笑顔……
その笑顔が僕に語っていた。
エルーの笑顔が「自分は大丈夫」と僕に言っていたのだ。
エル―本人がそう言うのであれば……
今、僕にできる事は何もない。
僕はその意思を尊重してあげたい。
今ここでエル―の痛覚を消したり、エリザベートを半殺しにしてやるのは簡単だ……
だが、そんな事をしてこの復讐に水を差すわけにはいかない。
なぜならこれはエル―復讐だから……
エル―だけの狂気なのだから。
「ねぇ……… 我が主」
右目を治療する僕を見上げて、エル―が尋ねる。
「なんだい?」
僕はそんなエル―を見下ろして微笑む。
「…………最近、とても楽しいんです」
エル―は、虚ろな瞳を、楽しそうに揺らめかせる。
楽しそうに瞳を輝かせて………… いや、違うな。
この瞳は少しも輝いてなどはいない。
そんな言葉で彼を評価するのは不当だ。
彼の瞳は……
血を流す右目と、涙を流す左目は。
力強く濁っていて……
勇ましく汚れていて……
楽しそうに爛れていて……
「貴方がいるから毎日が楽しい……… だからどんなにつらくても笑えるんです」
その瞳は決して輝くことはなく、ただ闇を深くしていく。
悪魔に魂を売った少年は…… 闇に醜く嗤うのだ。
「これを……… 希望っていうんですね」
エル―、君の瞳は美しい。
――――
「…………なるほどね」
「はい、我が主………」
エル―の右目を治療した後、僕は契約をしたあの夜から今日まで、エル―に何があったのかを聞いた。
エリザベートやマスタングを含む、他の王子達の状況を含め…… なぜ彼がこんな大怪我を負うに至ったのかを聞いたのだ。
「大変だったな」
「いえ…… 別に」
そしてその内容は、概ね僕の予想通り。
僕が事前に得ていた情報の通りだった。
今回、エル―がいつも以上に虐待を受けてしまった理由……
その原因は、アカシックカンパニーの経営不信である。
それがどう言う事か簡単に説明すると…… 昨日、僕はエリザベートにアカシックカンパニーを売りつけたのだが、おつむの足りないエリザベートではそれを上手く運用できず、あげく持て余して経営不振にまで持っていく不才ぶりを発揮したかのだ。
そして、その経営不振からくる苛立ちをあろうことかエル―に虐待する事で発散している。
………つまりは、そう言う事である。
まぁ、実際のところこの事態は予想の範疇であると言える。
そもそも、アカシックカンパニーはユエのある種神がかり的な直観とそれと同等の先見性、あふれ出るカリスマ性によって運営されてきた会社だ。
アカシックカンパニーの研究員及び専属契約を結んでいる錬金術師から上がってくる無数の企画書を一人で捌き、それらから使えそうなアイディアを直観と計算で導き出し、そこから商品の原案を仕上げ、それを社員に作らせる。
それでできた製品はどれも逸品ばかり故、無駄な宣伝もいらない。
更に言うなら、アカシックカンパニーの幹部陣はユエのカリスマ性に心酔し統率をされているので、指揮系統及び進行過程に乱れはほぼ生じない。
ユエがやって来た仕事というのはそう言うものであり…… つまりユエ以外には出来ないような仕事内容なのだ。
そう、あの会社は実は「ユエが優れていた」だけであり「会社自体」が優れていた訳ではない。
故にこの経営不振は至極当然の事といえる。
いや、 あのエリザベートか経営者となった以上、これは必然の事であったのだ。
そして…… それによりエリザベートの機嫌が悪化すると言うのも想定済みであり、エル―に対しての虐待が苛烈になって行くことも想定はしていた。
が…… ここまでとは少しだけ予想外だった。
正直、エル―の傷は想像以上に深刻だった。
よほど執拗に右目を抉ったのだろう……
エルーの右目に収まっていた眼球であった物は、まるで掻き混ぜたゼリーの様にぐちゃぐちゃになってどろりとたれ流れ、網膜はズタズタになり、視神経はちぎられ、傷は脳の表層に達する程に深かかった。
しかもその深刻な傷は……
右目だけかなのと思われたその「致命傷」は、よく見れば体中に存在していた。
舌部には千枚通しか何かを無数に通した後があった。
アキレス腱は両足とも切断されていた。
肩甲骨の辺りから尾てい骨の辺りまでに大きく走るギザギザの大きな醜い切創があった。
太ももに、ペンチのようなもので肉を千切られた痕跡が無数にあった。
睾丸は潰されて腐りかけていた。
右肘から肩にかけての腕が、一回転してねじれていた。
爪は全部剥がされて、代わりに釘が撃ち込まれて代いた……
「…………よくもまぁ」
これだけ出来るものだと、いっそ関心してしまいそうだった。
エル―は既に、簡単に死ねないよう処理してあるから大丈夫と言えば大丈夫なのだが……
もし処理をしていなかったら、確実に死んでいた。
さすがに…… これは予想外だ。
正直なところ僕は、いくらエリザベートの機嫌が悪化しようとも、致命傷になりそうな怪我は負わせないだろうとタカを括っていた。
しかし…… 現実は違った。
エリザベートは、この程度の不機嫌でここまで狂化する人間だったのだ。
後先考えず、形式上とは言え身内を殺す行為を容易く行うような人間だったのだ。
「しかし……… ここまでするか?」
僕はエル―の頭を撫でながら、彼を見つめる。
無表情に僕を見上げる、彼を見下ろしてそう言った。
「…………たぶん、初めてなんです」
すると、エル―は小さな声で独り言の様に語りだす。
「いままであの人は挫折をしらないんです……… 第一王位継承者と言う身分の下…… 優しい父と、媚へつらう家臣と、崇め奉る民衆に囲まれて育ってきたあの人は……」
エル―はぼそぼそと語らいながら、静かに僕から視線を外し、そしてどこか遠くを見つめる。
「気分屋の彼女を不機嫌にさせないよう…… 周りの人間は彼女に気を使ってきた… 彼女に挫折をさせないように… 気を使ってきた… ずっと…」
エル―は遠くを見つめたままに言う。
真っ暗な瞳で、抑揚なく語り続けた。
「彼女は…… そんな彼女だけに優しい世界の中で増長し、自分を特別な存在だと信じ込んでいた…」
いつもの様に機械の様に喋るエルー。
そんな彼が……
「そんな彼女が味わう初めての挫折…… 周りがフォロー出来ないほどの大きな挫折…………」
静かに口元を歪める。
口角に小さく弧を描かせ、上品に笑う。
「彼女の優しい世界が壊れたんです……… 世界が壊れる…… だから正常じゃいられない…」
そして彼は再び、ゆっくりと僕を見上げて……
「壊れていく彼女を見るのが…… とても楽しい………」
まるで花を愛でる無垢な少女の様に、柔らかい微笑みを見せるのだった。
「…………………そっか、君は良く知ってるんだなあいつの事を」
「ええ…… 良く見てますから………」
暗い部屋の中でそう言葉を交わし、僕らは小さく微笑み合う。
ふむ。
しかし、なるほど……
つまり、エリザベートにとってこの挫折はただの挫折ではなく、そしてこれは最早不機嫌などと呼べるレベルのものではない。
そう言う事か……
そして、不安や苛立ち、絶望などの溜まりに溜まった負の感情を、エル―で発散をしている。
普段、平静を装い大物ぶるばかりに生じている反動を、一番発散できる相手で発散していると言った所か。
ふむ…… 最低だな。
………ん?
「……………我が主」
僕がそんな事を考えていると、不意にエル―が声をかけてくる。
僕に顔を近づけて、小さな声でそう呟く。
「ど… どうした?」
内緒の話をするように語りかけてくるエル―に、僕は少しだけ動揺しながらそう返す。
「もうすぐ来ます…… 今日はお帰り下さい…………」
エル―は再び無表情で僕にそう言う。
感情が消えうせたかの様にして、そう囁いたのだった。
「あの人は最近…… 僕をここに閉じ込めて、食事を運んでくるんです…… ほら足音が…」
僕を見つめたままそう言うエル―。
「足音……?」
言われて見れば、確かに足音が近づいてきているのが聞こえた。
「…………我が主、どうか」
「…………わかった」
そう言ってじっと見つめてくるエル―に僕は頷き、そして再び猫の姿に変化する。
「今日は楽しかったです……… では…」
するとエル―は猫の僕を優しく一撫でして、小さくそう言うのだった。
「………またな」
「はい……」
そう言って僕は闇に溶ける様に、エルーの前から姿を消す。
そして……
そこから、エル―に知られないようにして物陰にかくれたのだった。
エル―の言う「もうすぐ来る人」…… それは間違いなくエリザベートの事であろう。
先ほどのエルーの話を要約すれば、ここ最近……
つまりエリザベートが精神的に不安定になってから、エル―はずっとこの部屋に監禁されていると言う事だろう。
形式上は「家族の団らん」と言う事になっているディナールームでの食事にも参加させて貰えずにここに閉じ込められていると言う事だろう。
そして……
周りからは秘匿する形で、あの残虐行為をしているのだ。
「…………見ておかなくちゃな」
エリザベートの精神状態、それに対するエル―の実際の耐久強度、そしてなにより……
「エル―の覚悟と恨みの深さを……」
僕は見ておかねばならない。
かちゃり……
そんな音と共に開かれる扉。
そして、ゆっくりと顔を出す……
「御機嫌ようエルヴィス…… 元気にしてたかしら?」
醜い醜い悪魔。
左手にパンとスープの乗ったトレイを持ち、右手に刃物を携えた……
そんな、おぞましい笑顔の悪魔が現れたのだった。
「あら、相も変わらず醜く爛れた顔ですこと…… でも、それでこそ愚民血統であるあなたに相応しい面構えですわ」
いつもの澄ました顔でエル―に近寄り、近くのテーブルにトレイを置いて、見下してそう言うエリザベート。
「しかし…… いつ見てもおぞましいですわねこの落書きは」
彼女は部屋にあふれかえる「殺意」の文字をぐるりと見まわし、クスクスと嗤いながら言う。
「本当…… 殺されても文句は言えませんわ…… こんな悪魔の所業」
そして…… くすりと笑いながら口元を歪め、彼女はゆっくりと刃物を構える。
「やっぱり悪魔が巣食っているのよね…… あなたの体には」
刃物を構えた彼女は…… 冷たく笑いながら、エル―へと歩み寄る。
「大丈夫よ、わたくしは家族を見捨てたりはしないわ…… そう、愚民と言えども貴方は私の弟、助けてあげますわ、私が」
そう言って彼女は、構えた刃物を…… 滑らせる様にしてゆっくりとエルーの頬に走らせる。
「ぁ…」
線を引くように描かれた切り傷から…… 血がだらだらと滴り始める。
今まで無表情だったエルーの表情が、わずかに恐怖に歪む。
どうやら………
エル―のスイッチが入ってしまった様だ。
普段は擦り切れてしまって無表情のエル―だが……
エリザベートからの暴行を切っ掛けに恐怖が動きだしてしまった様に見える。
心では諦めていても…… 刷り込まれた恐怖による拒絶反応が、体を動かす。
多分、そう言う事なんだろうと思う。
そして……
「あぁ、怖がらなくてよくてよ…… 別に殺す訳じゃありませんんから」
スイッチが入ってしまうのは、どうやらこいつも同じの様だ。
少しだけ呼吸を荒くし、瞳をとろんとさせてそう言うエリザベートは、明らかに、もう、出来上がっている。
「痛みで悪魔を追い出すの…… そうやって貴方の中にいる悪魔を追い出すのよ」
少しだけ涎を垂らしながら、嬉しそうにニヤついて、言い訳をするようにそう言うエリザベート。
そして彼女はのしかかるようにしてエルーの手足を押さえ付ける。
「悪魔さえいなくなれば、きっと貴方は良い子になるわ…… きっと私の会社も良くなる…… そう全部悪魔が悪いのよ、悪魔が」
エリザベートは鼻息を荒くして、涎をエル―に垂らしながら、彼の脇腹に刃を当てる。
「貴方が愚かで低俗で下劣なばっかりに悪魔に取りつかれてしまうから…… だけど安心なさい…… わたくしは貴方を見捨てないであげるから…… わたくしは貴方と違って、高貴で美しい、選ばれた人間なのだから……ねッ!!!」
「っ!!ッぁぅッあああぁぁくあっっ!!!」
そしてエルーの脇腹を切り裂き、開腹をするエリザベート。
「だからだからだから!!わたくしには義務があるの、あなたのような愚民を導いて上げる義務があるのよっ!! 高貴だから!選ばれた人間だから!!嫌だけど嫌だけどショウガナイカラシテイルノォォォォ!!!」
そして彼女は、その開腹したエルーの脇腹に手を突っ込みその内臓をかき回す。
「ぅあ"ぁ"あああああがぁ"ぁ"××××××××××"xっづぁ"××××××××ッ××××"××"×××××××××××××××××××××××××××ぁ"ぁ"ッ」
エル―は言葉ではない絶叫を上げた。
「あはっはははっははははは!!! どう!? 悪魔!? 痛いでしょ? 苦しいでしょ? さぁ!! 出ていきなさい!! さっさとここから消えるがいいわぁっ!!」
喜々としてエル―の体内を掻き回すエリザベート。
脇腹からはどぷどぷと血があふれ出し、飛沫となって周囲に飛び散る。
しかしエリザベートは気にもせず…… 手につく血も、顔にかかる血も気にせずに、一心不乱に内臓をかき乱す。
まるで汚れを気にせず泥遊びをする子供の様に…… エルーの腹部をめちゃくちゃにするのだった。
「ぁ"っあ あ'' あ''あ''っ'' ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ''」」」」」」
気絶と悶絶を繰り返し、血と涙をまき散らし、痙攣しながら失禁して絶叫を繰り返すエル―。
阿鼻… 叫喚…… で… ある。
「感謝しなさいよっ!! 敬いなさいよ!! ここまでしてやる私を崇めなさいよぉぉ!! この愚民が、愚図が、蛆虫がぁぁぁぁあああああ!!!」
そんなエル―の事を、乙女のように潤んだ瞳で見下し、心底楽しそうに嗤いながら、彼の腸を引きずり出すエリザベート。
「あははははははっ、あはははははははははぁ! あはははははははははははははハハハハハハハハハハぁッ!!」
そして握った腸を握りつぶした彼女は、何かが解放された様に気持ちよさそうに笑うのであった。
本当に幸せそうに…… 彼女は笑うのだった。
そうか……
なるほど、分かった。
彼女はこうして全てを「悪魔」のせいにしているんだな。
経営不振も、挫折のストレスも、エル―を苛める事でストレスを発散している自分の矮小さも、現実逃避をしたい情けなさも、全て悪魔のせいにしているんだ。
悪魔討伐と言う仮初の正当性で全てを誤魔化し、それを誤魔化したままに発散しているんだ。
自分を「高貴な選ばれし者」とするが故に認められない、「自分の弱い心」を全て「悪魔」に擦り付けていると言うわけだ。
どう言う切っ掛けで知ったのかは知らないけど、エルーのこの異常な部屋を知ったのは彼女にとっての良い切っ掛けになったと言う訳か。
悪魔と言う、自分に都合の良い存在を作り出す切っ掛けに……
そして……
「うふふふふっふっ!! 貴方が悪いのよ!! 貴方が悪魔になんて取りつかれるからぁぁあああああああああああああああああああはははははははははははははははははははははははははははははははははぁぁ!!!!」
彼女は嵌まってしまったのだ。
この異常な、拷問の如き所業に快楽を見出してしまったのだ。
殺人スレスレの残虐を楽しむ快楽に…… どっぷりと漬かってしまったのだ。
それに依存をしてしまう程に……
「ぁは……っ はは…… ふ… ぅふふふふふふはは」
一通り内臓を持て遊んだ彼女は、血にまみれていない方の手で、自分の目じりを拭う。
笑いすぎで出てきた涙を、どこか愛らしい所作で拭いさる。
「ぁはは……… ぁぁ楽しかったぁ… うふふ」
そして、無意識に本音を漏らしながら、まるで本棚に本を戻す様に……
その握りつぶしたその内臓をしまうのだった。
「さて……と」
そして彼女は、大きく開いた傷口を火炎魔法で焼いて塞ぐ。
「ぁ…………ぁ…」
焼けた肉の匂いの中で、かすれ切ったエルーの悲鳴がかすかに聞こえた。
「…………うん、うん」
エリザベートはその声を、まるでクラシックの余韻を楽しむかの様に、穏やかな表情で聞く。
そして……
「ん~~!!」
彼女は立ち上がり、明るい表情で元気に伸びをした。
とても幸せそうな顔で、満たされた顔で、伸びをしたのだった。
うん。
よし。
殺そう。
「…………………む」
と…… 僕が思い立ったその時。
僕は視線に気が付いた。
冷たさの感じる、殺気のような視線に。
「………………ぅ」
そしてその殺気の主は、他ならぬエル―の物だった。
エル―が僕を、真っ暗な瞳で見つめていたのだった。
なんだよ……
僕が帰って無い事しってたのか。
「……………わかってるよ」
計画通りに、あいつの「全てを奪った挙句惨たらしく殺したい」んだよな?
最後は自分の手で殺したいんだよな。
分かってるよ…… くそ。
「じゃあ死なないで下さいね? エルヴィス」
最後にエリザベートが、笑顔のままに申し訳程度の回復魔法をかける。
「これで大丈夫」とばかりに、快活な笑顔で……
そうか……
あいつ、この程度の回復魔法でエル―が完治してると勘違いしてるんだ。
だから、あんな事を気兼ねなく出来るんだな?
自分の回復魔法も「特別」だと思ってんだな?
はっは……
こ ろ し て ぇ ……
「では、御機嫌ようエルヴィス…」
そして部屋の扉を閉めて施錠するエリザベート。
彼女は鼻歌交じりに立ち去るのであった。
「なぁ……… エル―」
僕はエル―に近寄り、彼を治療しながら見下ろす。
「……………………」
最早声も上げられない程に疲弊したエル―は、ぐったりとしたまま、目線だけを僕に向けた。
「僕が絶対、君に復讐させてやるから……」
僕はそんなエル―の頬を優しく撫でる。
「一緒に…… 頑張ろうな」
そして小さな声でそう言ってあげたのだった。
すると……
「……………………」
エル―は小さく首を動かし、一度だけ僕の手に頬を摺り寄せる。
「………ぃ…………」
そして、瞳を細めて、小さく笑ってくれたのだった。
うん…… 頑張ろう。
僕は今、この上なく努力出来る気がする。
計画をそっちのけで、グロ回に8千字……
ふん! 書きたかったんだい! 久しぶりに思いっきりグロ書きたかったんだい!
※ 次回、頑張っちゃった星屑が計画をザックリ進行w
御宮星屑 Lv1280
【種族】 カオススライム 上級悪魔
【装備】 なし
〔HP〕 7050/7050
〔MP〕 3010/3010
〔力〕 7400
〔魔〕 1000
〔速〕 1000
〔命〕 7400
〔対魔〕1000
〔対物〕1000
〔対精〕1100
〔対呪〕1300
【契約魔】
マリア(サキュバス)
【契約奴隷】
シルビア
【契約者】
ユエルル・アーデンテイル
【従者】
エルヴィス・マーキュリー
【舎弟】
御宮緋色
【スライムコマンド】
『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』 『脳内浸食』
【称号】
死線を越えし者(対精+100) 呪いを喰らいし者(対呪+300)
暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)
龍殺し(裏)
【スキル】
『悦覧者』 『万里眼(直視)』 『悪夢の追跡者』
『絶投技』 『火とめ焔れの一夜』
『味確定』 『狂化祭』 『絶対不可視殺し』
『常闇の衣』 『魔喰合』 『とこやみのあそび』
『喰暗い』 『気高き悪魔の矜持』 『束縛無き体躯』
『完全元属性』 『魅惑』




