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52話 交渉は拗れるもの

「……………と、言う訳で闇市の誘致に協力して頂きたいんですよ」


とある建物の中の、最深部にある一室。


その一室が今、実に殺伐としている。


幾名かのガラの悪い男達が向かい合い、無言のまま互いに睨みをきかせあっている。


空気は凍てつき、それでいて蒸し暑く、息が詰まりそうなほどに重い。


つまりは最悪ってことである。


「………で、どうですか? 協力していただけますかね?」


でもまぁ、そうなるのも仕方がないと言えよう。


なにせ……


「『べヒモス』、『レヴィアタン』、『ジズ』のギルドマスターさん?」


三大犯罪者ギルドのギルドマスター達が一堂に会しているのだから。


「ほぉ………………」


「ふん………………」


そう言って切り出す僕を見やり、偉そうにふんぞり返りながらそう返す二人。


眼鏡を掛けた理知的な雰囲気の『レヴィアタン』ギルドマスターと、野獣の様な外見の野性的な『ジズ』ギルドマスター。


そして……


「…………………っ」


訝しむ様な顔で僕の事を見やるのは、僕がシルビアの件で攻め込んだ事のある『べヒモス』のギルドマスターだ。


長髪の、一見優男風のこの男は、いつか僕が攻め込んだ時に見た影武者のギルドマスターでは無い。


ふむ……


3人の互いに牽制をする様子を見る限り、どうやら3人とも本物が来ているようだ。


……よし。


「…………悪い話では無いと思うんですかね?」


僕は机に肘を突き、3人をざっと見まわして再度尋ねる。


半睨み、半笑いでそう問いかける。


すると……


「………………まぁ、確かに良い話ですね」


しばしの沈黙の後、ようやく眼鏡の男が口を開く。


『レヴィアタン』のギルドマスターだ。


「あなたの話が本当なら、確かにその闇市とやらに、私たちの商品を持ち込む価値はありそうですね」


人差し指で眼鏡を直し、僕の事を値踏みするようにしてそう言う。


そう………… 価値があるのだ。


なにせ『レヴィアタン』の主力商品は麻薬。


闇市で売るにはもってこいである。


恐らく三大犯罪者ギルドの中で、闇市により一番利益を得るのは『レヴィアタン』だろう。


まぁ……


それもあくまで、僕が参入するまでの話だけどね。


「そうです、国からの影響を全く受けず、あらゆる商売が許され、そしてまかり通る場所…… それが僕の闇市なのです」


僕は『レヴィアタン』のマスターと目を合わせて、微笑みながらそう言う。


「それは凄い話だ、本当に凄い…… 『影龍殺し』であり、あの『ラグナロクわるがきども』をいとも容易く手なずけた貴方なら、本当に可能なのでしょうね」


そして、微笑む僕に冷たい微笑を返してそう言う『レヴィアタン』。


「……で? 」


しかし『レヴィアタン』はその直後、その申し訳程度の微笑みを一瞬で打ち切り、ただ冷たいだけの表情へと変わる。


「あなたは……… 見返りとして何を求めるのです?」


そして、僕を睨む様にして問いかけるのだった。


「……………話が早くて助かります」


僕は睨んでくる『レヴィアタン』に、あくまで笑顔のままそう返す。


「いえ、私はこう見えてもせっかちでね……… まどろっこしいのは嫌いなんですよ」


そんな僕の笑顔が気に入らないのか、『レヴィアタン』は少し不機嫌そうにしてそう言った。


………ふむ。


こいつ、理知的なのはガワだけだな。


中身は他のヤクザ共と大差ない。


なら…… 脅威にはならなさそうだ。


「では早速本題に入りましょう」


僕は椅子に深く腰かけ、足を組見ながら3人を見やる。


「僕の闇市で皆さんを優遇する代わりに、皆さんの奴隷市の販権を全て僕に下さい……」


そして、優しく微笑んでそう続けるのだった。


すると……


「…………は?」


僕の事を睨み付けてそう言う『ジズ』。


「…………奴隷市を独占するつもりで?」


少し苛立った声でそう言うのは『レヴィアタン』。


そして……


「…………お前、ふざけてるのか?」


明らかに怒りを見せながら、ついに言葉を開く『べヒモス』。


「うちの主力商品を、売れっていうのかお前は?」


奴隷を主力商品としている『べヒモス』が僕に睨みをきかせながらそう言うのだった。


「………ふふっ」


僕はそんな『べヒモス』の視線を一笑に付して見返す。


余裕の笑顔で見返してやる。


「あ? ………おい、何笑ってんだよてめぇ」


歯をギリリと食いしばって、ドスの効いた声を上げる『べヒモス』。


「いや……… 何を勘違いしてるのかなって思って」


「……ぁ?」


僕はそんな『べヒモス』を見つめて…… いや。


「誰が売ってくれって言いました? …………僕はよこせって言ったんですよ?」


見下してそう言ったのだった。


「…………………………………………ああ、そうかよ」


『べヒモス』は暫くの間、ちょっと説明出来ない様なやばい顔で僕を睨んだ後、小さくそう言う。


「………………『ハイドドラゴンの牙』を持ってくる金ズルだから今まで黙っててやったが、そろそろ限界だ」


そして、こめかみに血管を浮かせながら立ち上がり、僕を見下ろしてそう言う。


「こっちも色々鬱憤溜まってるんでな…… 殺してやるよお前」


そして……


「戦争だ……… 覚悟しろよ」


はっきりとそう言いきったのであった。


「ふむ………」


僕は『べヒモス』から一旦視線を外すと、他二人を見やる。


「で? 貴方達はどうですか?」


そして、二人にも一応答えを聞く。


すると……


「私の所の奴隷市も結構な規模でね…… 正直話になりませんよ」


『レヴィアタン』が席を立ち上がり。


「俺の所はほぼ賭博だからな…… 別に乗ってやっても構わんが」


『ジズ』もまた……


「キサマの態度が気に食わん…… 断らせてもらおう」


不機嫌な表情で席を立つ。


「………………そうですか」


僕は…… そんな三人を見上げて、微笑を浮かべる。


「では、次の会合は一週間後にしましょう…… 皆さん色々準備があるでしょうしね」


そして、スケジュール帳に日付を書き込みながらそう言うのだった。


「………………………お前、状況解ってんのか?」


そんな僕の事を見下し、吐き捨てるように『べヒモス』がそう言う。


「次も何もねぇんだよ…… お前は俺ら3人を敵に回した」


怒気を孕んだ、低い声で……


「お前…… もう終わってんだよ」


奴はそう言うのだった。


「………そうですか」


だが僕は、それに笑顔で返すのみであった。


「死ねよお前っ……」




ふふ……


嫌に強気だな『べヒモス』。


どうやら、さぞかし「強い味方」が手に入ったと見える。


かなり強い…… 僕と同じ位の強さの味方がね。


くふふ………




「さぁ、では今日は解散しますか」


無言のまま暫く睨みあった後、僕はそう切り出して退室を促す。


「ああ…… そうだな、てめぇの面なんてもう見たかねぇからな」


「それでは、失礼します」


「…………………………」


すると、面々が殺伐とした空気のまま、部屋を出て行く。


そして……


『レヴィアタン』と『ジズ』が退室し、最後に『べヒモス』が退室しようとした時……


「ああ…… そうそう」


『べヒモス』が最後に振り向いて僕を見やる。


そして……


「果たし状の変わり…… 送っておいてやるよ」


にやりと笑ってそう言ったのだった。


ふむ………




――――




「果たし状か……」


僕はギリアン地区公営ギルド会館跡こと、星屑組本部前でそう呟く。


「いやぁ…… なんて言うか、マジ計画通りだなぁ」


何故か、内部が騒がしい、星屑組本部前でそう呟く。


果たし状…… それが何か、僕はまだ目にしていない。


目にしていないが…… まぁ、それが何かは知っている。


これは……… 先日の話だ。


僕は、組員の中の、一つのお調子者グループを洗脳した。


それがどんな洗脳かと言うと…… 完全な洗脳だ。


今までこいつらにやってきた、ちゃちな洗脳じゃない。


脳に直接スライムをぶち込んだ、完全に逝っちまうタイプの洗脳だ。


そして僕は洗脳したそいつらを……


『べヒモス』へとおちょくりに行かせた。


具体的には「どうせ、お前らは星屑さんに頭あがんねぇんだろ?」と言った旨の発言をさせながら、『べヒモス』直営の酒場で暴れさせたのだ。


酔った勢いの感じで盛大に暴れさせたのだ。


で………


まぁ、一触即発の今、そんな調子こいたことをさせたら当然……


「殺されるだろうなぁ」


僕はそう呟いて、何故か騒がしい星屑組の扉を開けたのだった。




「星屑さん!!」


「組長!!」


「屑の兄貴!!」


僕が中に入るなり、組員達が僕の方を向いて叫ぶ。


うん……………… 呼び方統一させよう。


てか、「屑の兄貴」って言ったやつ、後で殴る。


「……………………話は聞いてる」


僕は、僕を見つめる組員達を見返し、小さくそう言う。


組員達が群がる中心には、見るも無残に痛めつけられた死体と、その死体の横に座る緋色がいた。


「………………ふざけやがって」


僕は低い声で、怒りに打ち震えているかのようにしながら、死体に歩み寄る。


そして……


「ヨハン、ケルブ、ジョン、ベグ」


死体の手を取り、一人ずつ生前の名を呼ぶ。


「…………………」


目を瞑り、無言でその手を握ったのだった。


「星屑さんぅ……」


「組長ぉ…………」


「屑の兄貴ぃ……」


静かに黙祷を捧げる僕に、組員達が涙声でそう呟く。


よし、「屑の兄貴」って言ってたのおまえだな?


顔覚えたからな。


「……………………緋色」


僕は……


近くいる緋色の名を呼ぶ。


「……………………兄貴」


そんな俺の事を、緋色がまっすぐ見つめてくる。


怒りを孕んだ…… 緋色の瞳で僕をじっとみつめた。


「お前ら、出かけるぞ」


僕は立ち上がり、そして歩き出す。


「……………弔い合戦だ」


極悪非道(笑)なる『べヒモス』の元へと……


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおっッっスッ!!!!』


そして僕の後に、緋色以下483名の雄たけびが大きく木霊したのであった。

御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【契約奴隷】


シルビア


【契約者】


ユエルル・アーデンテイル


【従者】


エルヴィス・マーキュリー


【舎弟】


御宮緋色


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』 『脳内浸食』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『悪夢の追跡者ファントム・ストーカー


絶投技オメガストライク』 『火とめ焔れの一夜ハートストライクフレイム


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)』 『魅惑アプローチ

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