50話 壮絶なる戦いの後に芽生える
やっと50話。
皆様応援ありがとうございます。
これからも頑張って執筆させて頂きます。
「あ! そうだ…… お前、戦う前に回復してやるよ」
赤目が僕に対してニヤリと笑ってそう言う。
これから始まる戦いが楽しみで仕方がないと言った表情でそう言う。
「お前防御下手そうだしさ…… いくら打たれ強いからって、回復しとかないと直ぐ終わっちまうぜ?」
そして、楽しそうにそう言いながら僕に手をかざし、回復魔法の光を放つ。
「だから…… せいぜい楽しませてくれよ?」
ふむ…… 最後の一騎打ちはフェアにってことか?
なるほど…… だ、け、ど。
「ふんっ!」
「がばッぁっ!!」
僕は赤目との距離を一気に詰めて、奴に思いっ気入り腹パンする。
ふぅ…… ようやく手加減出来るレベルの相手だな。
やっと殴れる。
「なあ"っ!? お、お前!?」
腹を抑え、涎を垂らしながら僕を見上げる赤目。
その赤く揺らぐ目は「全く反応できなかった」と僕に驚愕していた。
「これは僕の奥の手だ…… 一定時間身体能力をあげる魔法でね、まぁ、油断していた君が悪いだろ?」
僕はそんな赤目を見下ろして、とりあえずそう言っておく。
「ぅお!?」
そしてやつの顔面に拳を振り下ろし、寸止めする。
「な…… なんのつもりだ?」
顔面に拳を突き立てられながら、僕を睨みつける赤目。
「本来なら今ので君は死んでたね…… つまり僕の勝ちだ」
僕は赤目を見下してそう言い捨てる。
「俺は…… まだ、死んでない、だからまだ負けてないっ!」
すると赤目はギリリと歯を食いしばって、そして僕に突きを放とうとする…… が。
「はいダメ~」
「ぎゃッ!?」
僕は突きを放とうとする奴の肩を蹴飛ばし、それを止める。
「お前弱いなぁ…… 凄く弱いなぁ」
そして、ニヤニヤとしながら、赤目を挑発するようにしてそう言う。
「な……… ぐぅ… お、俺が弱いだとぉ!!」
瞳孔が開かせ、怒りの形相で僕を見やる赤目。
「お前、弱すぎて相手にならないからさぁ…… もう終わりにしないか?」
僕はそんな赤目を見下しながら、にこりと微笑む。
「て………てめぇ!! 調子にのってんじゃねぇぇ!!!」
すると……
怒声と共に、赤目がどす黒いオーラを纏って立ち上がる。
黒い炎の様なオーラを纏い、瞳を深紅に輝かせ、ギリギリと歯を食いしばって立ち上がる赤目。
ふむ…… これが噂の『ラグナロクモード』って奴か。
なんでも赤目が追い詰められた時に発動する、本気の戦闘モードなのだとか。
聞くところによると、1年程前に発動して以来、一度も発動していないらしい。
「殺す… 殺す! 殺すッ!」
赤目が放つ殺気に、大気が震える。
ああ…… やべぇ、こいつ目がちょっといっちゃってるな。
生来の「殺戮性」を取り戻したって感じなのかな?
でも……
「がぎゃぁ……ッ!?」
構わず僕は赤目に拳骨を落とす。
「くあぁぁ……っ」
すると赤目は『ラグナロクモード』のまま頭を押さえて蹲り、悲痛の声をあげた。
「なぁ…… また僕の勝ちだけなんだけど? やっぱ弱いんじゃない、お前」
僕は蹲る赤目を見下し…… そして赤目の頭を撫でながら、馬鹿にするようにしてそう言う。
「ぐぁぁ…… お、俺はまだ負けてねぇぇ… 負けを、認めてねぇぇ!!」
赤目は半泣きで僕を見上げ、唸る様にそう言う。
「ほぉ…… じゃあいいぜ、ならお前が負けを認めるまで付き合ってやるよ」
僕は泣きそうな赤目を、冷たい目線で見下し、そう返した。
「ばっ、ッかにしやがってぇぇ!!」
そんな僕を赤目は半泣きのまま睨みつける。
「そのかわりさ…… こっちは弱いお前とわざわざ遊んでやるんだからさ」
僕はそこで魔力練り上げ、そして……
「もし負けを認めたら、『僕の下僕になれ』よな」
さりげなく悪魔の言葉を紡ぎ……
「上等だぁ…… やってやるよ!! 『下僕にでもなんでもなってやる』よぉぉ!! お前は絶対に殺してやるぅぅッ!!」
しっかりと言質を取る…… 悪魔的な意味で。
まあ、契約書を交わしてはいないから「生殺与奪を含む全権」を奪う様な権限は得れないけど……
僕とこいつのレベル差なら、この口約束だけで十分「主従」を築くだけの拘束力は得られる。
まぁ、相手は男だしな。
一生面倒見てやるまでの義理ないから、この程度の契約で十分だろう。
さて…… 必要な手続きは済んだし。
ここからは……
「いいぜ、さぁ…… どっからでもかかって来な」
調教タイムだ。
「もっと速く…… あいつより速く… 速く」
…………ん?
なんだ?
赤目が、ブツブツ言いながら僕の事を見てる。
そして魔力を……
…………お?
「もっと速く!!」
その瞬間。
僕の目の前から赤目が消える。
僕の命中補正をもってしても補足出来ないスピードで姿を消す。
否。
僕の〔命中〕で補足出来ない速度の物など、今や存在しないに等しい。
………………だとすればこれは瞬間移動だ。
速さ、ではなく。
消えた、のだ。
……………が。
姿が消えたからと言って、補足出来ない訳ではない。
大気の揺れ、魔力の流れ、そして僕の〔命中〕だからこそなせる…… 未来予知に等しい第六感。
あいつが移動したのは…… 多分この辺だ。
「なぁ!?」
僕は顔を背後に向けて、そこに突然出現した赤目と視線を合わせる。
赤目はそんな僕を見て、驚いた様に声をあげた。
はいどうも、コンマ0.2秒ぶりですね。
「ぐほぉぁ!?」
そして僕は、僕の背後に出現した赤目に振り向きざまの回し蹴りを腹に食らわせる。
「ああああっっ!!」
そして地面に転がり、腹を押さえながらのたうち回る赤目。
ふぅ…… ちょっと焦った。
どうやらごく近距離を飛ぶだけの瞬間移動能力みたいだな。
しかもこれ…… 様子を見る限り、今さっき思いついて発現した能力みたいだ。
………これが赤目の自己進化能力と言うことか。
普通に恐ろしいな。
悪魔殺しとか都合のいいの発現されたらどうしよう。
これはあれだな…… さっさと負けを認めさせとこう。
「ぅぁ!?」
僕はのたうち回る赤目を起こし……
「ぎゃ!!」
そして拳骨を食らわせる。
「いたぁっ!?」
そこから流れるように肩パンをお見舞する。
「ぁうぇ!?」
続けざまにデコピンを食らわせた。
「ひぃぃいっ!!」
ふふふ…… 僕のシッペは痛かろぅ。
「アーーーッ!!」
か、ら、の、カンチョー攻撃。
「痛い、痛いぃ!!」
太ももの内側を思いっきりつねる。
「腕が痺れるぅ!!」
肘のジーンってするところを執拗に攻撃する。
「あ、熱い!! 痛っ、熱いぃ!!」
腕の所を雑巾絞りする。
「うぁぁぁぁぁ!!」
こめかみをぐりぐりぐりぐり。
「にぎゃあああああ」
これが! 奥義! 四の字固め!
「ふ、ふぉぉ!! や、やめろおおおおおおお!!」
それは僕のお稲荷さんだ。
「痛い!! 痛い!! 痛いよぉぉぉ!!」
僕は、お前が、泣くまで、殴るのを、やめないっ!!
――――
「うぐ…… ぐすっ…… ごめ… ごめんなさぃ… 許してください」
地面に伏して、泣きながら許しを請う赤目。
ふ…… ようやく負けを認めたか。
いやぁ、楽しか…… や、凄く苦労したなぁ。
「じゃあ、『負けを認める』か?」
「はい…… 『俺の負け』です、ぅぅ…」
よし…… これで契約終了だ。
こいつの自己進化能力は怖いから、後でもっとしっかりした契約させとこ。
まぁ… でもようやくひと段落だな。
「これでお前は僕の下僕だ」
「…………ぅぅ」
僕はしゃがんで赤目と目線を合わせる。
ふむ…… 綺麗な顔をしている。
髪も長いし……
ふむ、成長止めて「男の娘」にしようかな?
……………ありかなしかでいったら、超ありだな。
ロリな男の娘…… 僕の直属の配下として申し分無しだ。
くふふ……
なら……
「いや、下僕はやめよう、そうだな、今日からお前は僕の弟だ」
「…………弟?」
ロリの男の娘に「お兄様」と呼ばせる……
おお…… これは新境地。
いや、まて……
もしかして「お兄ちゃん」と言う選択肢もありか?
これは夢が膨らむぜぇ。
「そう、弟、つまり義兄弟だ…… 強い僕が、弱いお前を守ってやる、そして導いてやるよ」
「導く、守る、兄弟……… か、家族?」
僕がそう言うと、赤目がハッとした目で僕を見やる。
そして…… 潤んだ赤い目を輝かせる。
「そうだ、家族さ……」
「ぁ…………」
僕が家族と言ってやると、赤目の表情がわずかにほころび、そして子供の様な目をする。
庇護を求める様な…… 幼い子供の目をする。
ふむ……
そうか、こいつそういや親とかいないんだっけな。
愛に…… 飢えてるとか?
ふむ。
「お前の目って…… 赤って言うより、緋色だな」
「……え?」
僕は赤目の頭を撫でながら、赤目の瞳を見つめてそう言う。
「そうだな、お前の名前は今日から緋色だ…… 御宮緋色、これがお前の、僕の弟の名前だ」
「御宮…… 緋色……?」
すると緋色はわずかに震えて、その名を復唱する。
新たな自分の名前を復唱する。
しかし……
こいつに 正式な名前が無いのは幸運だったな。
おかげでこの名を、こいつの真名として縛ることが出来る……
くふふ…… これで制約がより強固になった。
「お、俺…… あんたみたいに強い奴に会ったの初めてなんだ」
緋色が僕に、少し涙ぐみながらそう言う。
「それに…… か、家族とか、 俺にそんな事言ってくれたのも初めてだ」
そしてすがる様にして僕の手を取る。
「あ、あんた…… 名前は?」
そして… 緋色は僕の名前を尋ねた。
餌をねだるひな鳥の様に…… 僕に尋ねた。
「僕の名前は御宮星屑だ」
だから僕は緋色の手を握り、緋色の目をしかと見つめてそう答えた。
「……………………っ」
ぶるりと一つ、小さく震えて僕を見つめる緋色。
そして……
「…………おい!! お前らぁぁ!!!!」
緋色は立ち上がり、そして『ラグナロク』全体に声を響かせた。
強く、力のこもった声を……
良く通る、そして何故か心に直接響く声を……
カリスマ性を有する者の声を…… 響かせた。
そう…… これは人を導く者の声だ。
「見てただろう、この人は俺より強い!! だからこれから俺はこの人の下につく!!だからお前らもこの人の下に着け!! 力で俺の下についたお前らだ、文句はねぇだろう!! 」
緋色はその瞳を…… 色鮮やかなスカーレットの瞳を熱く輝かせて言う。
その姿は、先ほどまで僕にいじめられていたとは思えない程に堂々としていて……
無条件に人の目を惹く、何かがあった。
はぁ……
…………これだからカリスマは。
どんな情けない姿を曝した後でも…… 「本人に迷いが無くなりさえすれば」突然に化ける。
つまりカリスマってのは…… 主人公ってことなんだろうなぁ。
うらやましくは無いけど、ずるいぜ。
「いや、文句なんていわせねぇ…… いいか、俺らは今日から星屑組だ、全員黙ってついて来やがれぇ!!!!」
そして……
緋色はギルド会館廃墟全体に響く声で、堂々とそう言いきったのだった。
『…………………ぅ……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああおおおおおおおおおおぁぁあおおおおおお!!!!!!』
そんな緋色の咆哮に、叫び声で返す組員達。
緋色の勢いに、飲み込まれるようにして共鳴する不良達。
……………こいつらちゃんと考えて生きてんのかな?
ノリと勢いで生きてるんじゃなかろうか?
なんか…… 正直拍子抜けだ。
本当は、緋色を洗脳して僕の配下にした後、とりあえず僕が形だけのリーダーになってから、一人一人を自我を殺さない程度に洗脳しようと思ってたのにな。
まぁ…… 手間が省けていいんだけどさ。
ふむ…… 思ってた以上に、緋色の組員達からの信頼が厚かったってことか。
もしかしたら、カリスマ性だけでいったらユエ以上かも……
……………いや、違うな。
ユエが正統派ヒーローだとしたら、緋色は多分ダークヒーローなんだろう。
ユエからは根本的な意思の強さと、努力に基づいた自信からくる気品と優雅さがある。
しかし緋色から感じるのは、むせかえる様な血の匂いと、それとは相反した純粋さだ……
ユエは基本的に安定してるけど、緋色は凄く不安定に感じる。
だが…… その不安定さこそが緋色のダークヒーローとしての魅力になってるんだろう。
その欠陥具合が…… はみ出し者達の心を、無意識に惹いてしまうのだろう。
多分…… カリスマ性が上と言うより、単純に緋色が「悪」に惹かれやすい体質と言った方がいいのだろう。
ふむ……… だが好都合だ。
これで計画が、予定より速く進みそうだ。
「………これでいいか?」
「ん?」
演説を終えた緋色が僕を見やり小さくそう言う。
「あんたが俺の所に来たのは…… このラグナロクが欲しかったからなんだろう?」
「………………」
僕を見上げて、少し切なげにそう言う。
「いや別にそれはそれでいいさ、俺はトップでいることにこだわりはないんだ、ただ……」
そして緋色は、まるでおねだりをする幼子の様に僕を見つめるのだった。
「あ、あんたみたいに強い奴が兄貴だったら、俺、本当にうれしいからさ…… だから、出来れば本当に俺の…」
「おい、緋色」
語り続ける緋色を見下ろし、僕はそれを遮る。
「……え?」
そんな僕を、緋色は驚いた様に見やる。
ちょっとだけ不安そうな顔で僕を見やる。
だから僕は緋色の……
「あんたじゃないだろ…… 星屑お兄ちゃんだ」
頭を撫でてそう言うのだった。
「……………………ぁ」
途端に安心したように、顔をほころばせる緋色。
そして……
「わ、わかったよ…… 兄貴ぃ!!」
緋色は元気よく僕の事を兄貴と…………… え?
お兄ちゃんは?
太ももの内側………
な、なんて恐ろしい攻撃を……(震え)
御宮星屑 Lv1280
【種族】 カオススライム 上級悪魔
【装備】 なし
〔HP〕 7050/7050
〔MP〕 3010/3010
〔力〕 7400
〔魔〕 1000
〔速〕 1000
〔命〕 7400
〔対魔〕1000
〔対物〕1000
〔対精〕1100
〔対呪〕1300
【契約魔】
マリア(サキュバス)
【契約奴隷】
シルビア
【契約者】
ユエルル・アーデンテイル
【従者】
エルヴィス・マーキュリー
【舎弟】
御宮緋色
【スライムコマンド】
『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』
【称号】
死線を越えし者(対精+100) 呪いを喰らいし者(対呪+300)
暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)
龍殺し(裏)
【スキル】
『悦覧者』 『万里眼(直視)』 『悪夢の追跡者』
『絶投技』 『火とめ焔れの一夜』
『味確定』 『狂化祭』 『絶対不可視殺し』
『常闇の衣』 『魔喰合』 『とこやみのあそび』
『喰暗い』 『気高き悪魔の矜持』 『束縛無き体躯』
『完全元属性』 『魅惑』




