5話 愛を持って接する事は信頼を結ぶ。
シュトレーゼ・セイムルの楽しいスライムレシピ♪
さて!
やってまいりました! シュトレーゼ・セイムルの楽しいスライム作りのお時間でっす♪
今日はシーソルトスライムをウォータースライムにか・え・チャ・う・ぞ♪
やり方は実に簡単!
まずシーソルトスライムを用意します!
そしてこれにまず、リンジカド鉄粉を優しく優しく塗りこみます!
そうですね! ざっと5時間くらいです!
あ! スライムに皮膚が溶かされちゃうからグローブをこまめに変えるのを忘れちゃだめですよ?
まぁでも、スライムへの愛があればできますよね! 楽勝ですよね!
ちなみにリンジカド鉄粉は強烈な地属性と火属性を含んだ素材でっす!
それがシーソルトスライムの変性水属性を相殺して属性薄弱の状態にするんですよ?
そ・シ・て♪
五時間もみこんで属性薄弱にしてあいまいな状態になったシーソルトスライムを、煎じたミカトル草を溶かした精霊水に漬け込みます!
ミカトル草は真性の水属性なので、属性効果を上げる精霊水に沢山溶かし込むと、強水属性の液体になりますね!
そんな水属性に属性薄弱のシーソルトスライムをつけておくとどうなるでしょうか!!
そう!
真性の水属性のスライム、ウォータースライムになちゃうゾ♪
――――
……と、書いてありました。
ちなみにシュトレーゼ・セイムルさんとは、彼の隣人の日記を『悦覧者』で見たところ、錬金術工房経営兼学者の人で、現在40歳のガチムチ筋肉質のオッサンらしい。
何でもいつも来ている魔術ローブがパツパツでタイツのようになっているのだとか。
うん…… いつかお会いしたいものだ。
凄く仲良くなれそうなきがする。
まぁ、とにかくシュトレーゼ・セイムルさんのスライムに関する研究資料はどれも秀逸なものばかりだ。
こんなレポート内容ばかりだから、学会では全く認められてないが、内容はとても素晴らしいのだ。
そして…… こちらが強水属性の液体に3時間ほど付け込んで完成したウォータースライムでっす。
元来、ウォータースライムは本当に水がきれいなところでしか発生しないから天然物を手に入れるのは少し難しいらしい。
まぁ、凄く手間だったけど、どの道購入価格が高そうだったら造るつもりだったからいいんだけどね。
人工物のウォータースライムは天然物に比べて含有魔力量が極端に落ちるから、素材として使うには適さないけど、僕が必要なのはこのウォータースライムそのものだから問題はない。
さて……
ここからが本番だ。
シュトレーゼ・セイムルさんの極秘文献。
スライムの変体について研究している彼の研究の集大成。
「イノセントスライム」への変体だ。
まず全スライムの中で一番不純物が無いとされているウォータースライムにクラロドル岩塩を細かく砕いて塗りこみます。
スライムの変体の基本は「愛と一緒に塗りこむこと♪」とはシュトレーゼさんの言葉だ。
とにかく塩を塗りこむ。
ぬりぬり、ぬりぬり………
3時間くらい。
――――
「よし……」
目の前の箱の中のウォータースライムが凄く小さい。
クラロドル岩塩の塩分と地属性の加護で水分と水属性が抜け切った、きわめて「素」の状態に近いスライムだ。
そしてこれを、一時間前から浄化石を入れて、完全にクリアな状態にした精霊水に入れる。
そしてそこからさらに一時間待つ。
ちょっと寝るか……?
いや、精霊水につけすぎるとウォータースライムに戻ってしまうとシュトレーゼさんのレポートには書いてあった。
スライムが透明に輝くというその瞬間を見極めなくては。
よし…… 薬学で造った興奮剤を飲もう。
ん…… おお、効いてきた。
効果がた効きすぎて、違うとこまで元気になってしまっている。
むぅ……
とにかく今夜は徹夜だな。
――――
「ぉ…… おお……」
僕は目の前にあるこぶし大の綺麗なスライムを見つめる。
ぷるぷるとして透明で白くキラキラと輝くスライム……
「これが…… イノセントスライムか……」
イノセントスライム。
それは普通の各種スライムが極稀に突然変異で産む、属性無しのスライムだ。
無属性ではなく、属性無しだ。
だけどこのイノセントスライム自体は10分もすれば周りに適合し、すぐに何かしらの属性を得てしまうので、自然界でお目にかかることはまず無い。
そしてこのスライム…… 特徴としては物凄く弱いことが挙げられる。
スライムは基本的に全て固体では弱いが、このイノセントスライムは特に弱い。
攻撃すればあっと言う間に死んでしまうのだ。
まぁ、その分強い点が一つあるのだが……
とにかく。
基本的に弱いスライムと契約しようなどと言う奇特な人間はいない。
それはそうだろう。
なんて言ったって一生のパートナーなのだから。
誰だって、役に立つ相棒が欲しいに決まっている。
だけど僕は、これと契約する。
この最弱の魔物…… イノセントスライムと、一生で一度の契約をする。
こいつを生涯のパートナーにする。
こいつと契約をして…… こいつをイノセントスライムのまま、固定するのだ。
過去スライムと契約した人の日記によれば、使い魔の儀を施したスライムはその状態で固定され変体をしないらしい。
くふふ…… 楽しみだなぁ。
こいつは…… 無限の可能性を秘めている。
「よし……」
僕はグローブを外してイノセントスライムに直接触れる。
少し熱い。
どうやら僕の肌を溶かしているみたいだ。
『友に歩まん悠久の時を』
そして僕は呪文を唱える。
するとすぐに輝き始める。
僕と、イノセントスライムが。
うん……
手が熱くなくなった。
どうやら僕を溶かすのをやめたみたいだな。
こいつは基本レベルが1の魔物で僕は42レベル。
支配関係は絶対だ。
「さて……」
僕はイノセントスライムを持ち上げる。
そして頬ずりをする。
うん、ひんやりとして気持ちいい。
スライムの方も僕に擦り寄ってきてくれている気がする。
多分こいつに知能はないから気のせいだけど。
よし…… こいつの名前はイノセントスライムだから、イノスでいいかな?
「くふふ…… イノス」
さあ次のレベル上げだ。
イノス、君には…………
腐食の森を喰ってもらうよ。
御宮星屑 Lv42
【種族】 人間
【装備】 なし
〔HP〕 10/50
〔MP〕 10/10
〔力〕 210
〔魔〕 0
〔速〕 0
〔命〕 210
〔対魔〕0
〔対物〕0
〔対精〕0
〔対呪〕0
【使い魔】
イノセントスライム
【称号】
なし
【スキル】
『悦覧者』