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45話 即断の契約

僕は……


「………っな、 こ…これは」


僕は、部屋に入るなり息をのんだ。


息をのんで、その異形の光景を見つめた。


「これは……」


それは、後宮にある、一部屋での光景。


12人いる王子の中の一人、エルヴィス王子の私室での光景。


僕はその部屋の中で、それを見る。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


それは、部屋に入るなり、小さくぶつぶつと呟きながら、「殺す」と言う文字を書きなぐる王子の姿。


部屋の床に、'壁に、天井に、机に、ベッドに、椅子に……


その部屋は、文字通り「殺意」で埋め尽くされていた。


狂おしいほどの「殺意」で満たされていた。


「ぁ……………」


それは正に、圧巻の一言だった。


人を食い、悪魔を殺し、人を貶め、幼女を奪う…… そんな僕を持ってしても戦かせる。


一瞬でもこの僕を、恐れさせるような……… それは狂気の塊だった。


「あいいつら絶対殺す絶対殺すよくもよくもよくも私をこんなめによくもお父さんを侮辱したなよくもお母さんを愚弄したな絶対に許さないぞ許さない憎い憎い憎い自分が憎い奴らを殺せない自分が憎いあいつらが憎いエリザベートが憎い見て見ぬふりをする周りの奴らが憎い僕を見下すマスタングが憎い殺してやる殺してやる腸を生きながらに引き裂いてちぎってその口に詰め込んでぐちゃぐちゃにしてやる……」


純粋で不純で汚れきってて澄みきってて美しく禍々しい……





そんな。





殺意。





僕は、一心不乱に殺意を紡ぐその人ですらないそれを見て……


素直に……





「……………ふつくしい」





僕は感動した。


感動したのだ。


衝撃だった。


頭のてっぺんからつま先までかち割るような衝撃だった。


心が爆発した。


胸が高鳴った。


高揚した。


その狂気にあてられた。


情熱にほだされた。





いや…… 理由はなんだっていい。





僕はとにかく打ち震えたのだ。


これは……


この人は…… すごい。


凄い。


なぜ…… なぜこの人はこんなにも人を憎しめるのか。


あんな目にあってなぜ…… なぜこんなにも人を憎悪できるのか。


なぜこんなにも…… 狂いながら壊れながらもなお、憎しみを保っていられるのか。





なぜ……


こんな環境のなかで…… こんなにも。


こいつは…


こいつはは弱く、惨めだ。


こいつは卑屈をこじらせ狂っている。


こいつは歪みきって、目もあてられない程だ。




だが…… だがこいつは……




屈してはいない。




凄い。


それが凄い。


ただただ凄い。


人は…… こんなにも狂人でいられるものだったのか。




こいつが……


こいつが使える奴かどうかはわからない。


だけど……


だけど僕はコイツを使う。


エルヴィスを…… 僕は使おう。




――――




「やぁ」


「……ッ!?」


誰もいないはずの部屋。


そこに突如響く人の…… いや、人成らざるものの声。


その声にエルヴィスは驚き、そして声の主である僕を見やる。


「……………ぁ」


そして見やる僕の姿。


その姿はただの猫。


だけどただの猫ではない。


それが一目見て解る。


そのようなオーラをまとって僕は向き合った。


「突然だけど、僕は悪魔だ、解るよね?」


そして僕は語りかける。


エルヴィスの目を見て、低く小さな声で語りかける。


黒いオーラをまとって、赤く目を光らせ、悪魔と解りやすくしてそう語りかける。


「君の…… その素晴らしく黒い感情に誘われてやってきたんだ」


まぁ……


そんなのは当然嘘なのだけど、適当に言っておく。


「復讐をしたいんだね? 殺したいんだね? 解るよ… 解る… 君の『負』が解るよ」


そして僕は、次々と語り出し、話を進めて行く。


こっちのペースで話が進むように持って行く。


そんななかエルヴィスは…… 少し驚いた顔をしながらも、無言で僕を見つめていた。


「ねぇ…… 君、僕と契約をしないかい? そうすれば僕は君の望みを…」


「します……」


「叶えてあげる…………… って、え?」


ん?


……へ?


「い……… いま、するって言った?」


僕は、ちょっとだけ…… いや、結構戸惑いながらエルヴィスを見返す。


するとエルヴィスは……


「言いました」


強い視線を持って僕を見返してきたのだった。


「……………………………あ、じゃあこの契約書にハンコお願いします」


「わかりました」


僕はそう言って、魔道的な拘束力をもった契約書を提示する。


…………本当は、「え? いいの?」とか「その代わりに君は一生僕の物なんだけど」とか言いたかったけど、それは飲み込んだ。


悪魔の契約書は「知らなかった方が悪い」が原則だ。


向こうがそれで良いと言うなら、契約しちゃった方が都合がいい。


まぁ…… 結構フェアな(あくまで僕的にはの話だけど)条件で提示してる契約書だからエルヴィス的にも問題は無いはずだからいいんだけどね。


「あ、それじゃあ契約成立なんで…… ええっと、よ、よろしく?」


「宜しくお願いします」


僕はそう言って、とりあえずエルヴィスの体に触れる。


そしてその体の傷口からスライムを流し込んだ。


「ッ!?」


それに一瞬体をこわばらせるエルヴィス。


しかし、契約書の内容により、僕を拒む事の出来ないエルヴィスは、抵抗せずにそれを受け入れるしかない。


ふむ……


とにかくこれで魂的にも肉体的にも完全に僕の支配下だな。


取りあえず、その目障りな体中の傷も、一通り治しておくか。


「……………ねぇ」


「はい」


僕は、猫の姿のままに…… エルヴィスを見上げて、そして尋ねる。


体中の傷が治って行くエルヴィスを見ながら聞いてみる。


「なんで即答で僕を受け入れたの? 疑ったりしないの?」


当然の疑問を…… 聞いてみる。


「…………………私には何にも力がありません、なにもできません」


すると…… エルヴィスは僕を見つめて、小さな声で語り始める。


「でも…… あなたならできそうだと思ったんです…… 一目みて解りました」


ひしゃげた鼻が戻り、元どおりの顔になったエルヴィスは……


「あなたなら……」


狂い咲きの花の様に……




「……全てを壊してくれるって」




美しく笑ったのだった。


「…………………………ふーん」


僕はそんなエルヴィスを見て、小さくそう言う。


「なるほど…… 気に入った」


そして僕は思う。


考えていた事を変えようと……


「ねぇ…… エルヴィス、いや…… エル―と呼ぼうか」


「なんでしょう」


エル―を僕の物にして、生かしておこうと考えていたけど。


こいつの顔を見て、気が変わった。


「願いが叶ったら、君には死んでもらうけどいい?」


「…………願いを叶えて頂けるなら」


こいつには別の使い道もある。


くふふ……


「じゃあ、改めて宜しく…… エル―」


「はい」




さぁ……


これでスラム街の全権は得たも同じだ。


それじゃあ次は、商売の下準備にとりかかるとしようか…… ふふ。

ようやくスラム街での商売編に行けますねw


御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【契約奴隷】


シルビア


【契約者】


ユエルル・アーデンテイル


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『悪夢の追跡者ファントム・ストーカー


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)』 『魅惑アプローチ

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