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44話 見定める時に

「っち…… こんな不安定な椅子、座れたものじゃないわ」


そう言って、全裸の人間椅子から立ち上がり……


「ぐぎゃ!?」


そのまま椅子の腹部を思い切り蹴り上げるエリザベート。


「ぅが…… ぐ…くきゃ…っ」


腹部を思い切り蹴られた椅子こと、エルヴィス王子は、口から汚物をはみ出しながら床にのたうちまわる。


そして、そんなエルヴィス王子を見下しながらエリザベートは……


「ああ汚い… 汚らわしい… これだから雑民の血が入った粗悪品は」


ニヤリと微笑み、そして今度はエルヴィスの脇腹をふみつける。


「ぅぁ……あ や…めぇ…っ」


そして嬉しそうに微笑みながら……


「こんなゲロまみれの汚物…… いっそ粗大ごみにでも出してしまおうかしら?」


その脇腹をぐりぐりとふみつけるのであった。


「さて、椅子も丁度壊れたところですし、そろそろお開きにしましょうか…… ね」


「……がぁ…っ!?」


エリザベートは、エルヴィスの腹を一通りふみつけた後…… 今度はそう言って、エルビスの顔面を思い切り蹴り飛ばす。


エルヴィスの鼻にめり込まんばかりの蹴りを食らわす。


「っあ……ぁ……ぁぁっ」


鼻がひしゃげ、どくどくと血を流して嗚咽をするエルヴィス。


「ちょっと血を流しすぎよ、床を汚したらメイドたちの掃除が大変でしょう? 」


そんなエルヴィスを見下し、楽しげにあざ笑うエリザベート……


「本当だ、おい! 何やってるんだお前は? 王族としての礼節を守れよ?」


「まぁ…… 服も着られない愚民に礼節も合ったものでは無いですけどね? あはは」


そしてそんなエリザベートに胸糞悪い合いの手を入れる手下達。


ああ……


いやだ。


本当に嫌だ。


気持ち悪い…… こいつらも、この空気も、全てが気持ち悪い。


この独特の、虐めが楽しくて仕方がない奴らが放つ、愉悦に酔った雰囲気。


本当に気持ちが悪い……


ヘドロをのどに直接流し込まれたかのように…… 気持ち悪い。


気持ち悪い…… きもちわるい、思わず、殺してしまいそうになるほどにき も ち わ る い。


てか……


やってしまおうか?


僕なら…… 今の僕なら…… かんたんだ…… そう、それはいきをするように、はなをつむようにむように……


いまならたやすい、いまのぼくなら……





「……く……ふ」





いや……


やめておこう。


いま… 良いことを考え付いた。


だからやめておこう。


そう…… もちろん。


今は……… ね。


くふふ……


「くふ…」





さて…… と。


「それではごきげんよう、マスタング」


「ああ、ごきげんよう、姉さん」


どうやら、エリザベートが帰る見たいだ。


そして、どうやらそれに続き全員が部屋から出てゆくようだ。


一人、二人、三人と……


ばらばらに席を立ち、このディナールームを立ち去って行く。


「く……ぐぅ…ぅ」


床に転がり、ボロボロになった無残な兄弟を……


ただ横目で一瞥して。


それだけで…… 何もせずに、何も言わずに立ち去って行く。


汚物を見るように…… それを蔑み、見下し、そして立ち去って行く。


そして……


最後の一人もまた…… 立ち去る。


「ふん…… 負け犬が、立ち向かおうとも思わんのか」


マスタングが…… 最後にそう吐き捨てて部屋を出て行ったのだった。





「く…ふぅ… ぐっ…… ぅぅ」





誰もいなくなった部屋。


部屋の照明も落とされ、真っ暗になったディナールーム。


この部屋に人は…… 誰もいなくなってしまった。


あるのはたった一脚の椅子のみ。


実の家族達から迫害され、苛められ、肉の椅子にまで堕とされた椅子が一脚のみ。


ボロボロになった椅子が、苦し気な嗚咽を吐きながら横たわっていたのだった。


母親の身分が低い……


ただそれだけ。


たかがそれだけの理由で、王族の一人でありながらこんな目にあってしまう。


そんな理不尽で下らない理由で、自分ではどうすることもできない理由で、こんな目に会っている…… 人としての最低限の扱いすらされない、椅子ががいた。


「理不尽な理由ね……」


まぁ……


でも、虐めの理由なんていつもそんなものだ。


僕の時は確か、「キモイから」だったっけな。


たかがそれだけの、自分ではどうすることもできない、そんな理不尽な理由で苛められたっけな。


そう…… 切っ掛けはそんなものだった。


そんな些細な切っ掛けで始まった虐めが、やがて日を追うごとに成長し、いつしか周り全体をも巻き込んだリンチに等しい、壮大な残虐へと変わっていくのだ。


地獄へと…… 際限なくエスカレートしてゆく無限地獄へと変わっていくのだ。


初めは一つのグループに虐められていただけなのに…… いつの間にか周り全てが苛めるようになる。


周りが…… 苛められている者を「格下」と認知した周りが…… よってたかって苛めるようになっていく。


虐めとはえてしてそういうものだ……


麻薬のような狂気が、楽しい楽しい狂喜が周りに広がり感染してゆくのだ。


そして虐めが全体に広がり、全体にそう言う空気が完成してしまった時……


その苛められている者は、人権を失うのだ。


苛める権利を持つ人間と、そうでない人間に世界が分かれてしまった時……


それを持たざる者は人権を失うのだ。


それを持つものの遊び道具へと成り下がるのだ。


そう……


「ぅ…… く… ひぃ……っぐぅ…」


こいつの様に。


そして、昔の僕の様に……


「立ち向かう…… か」


マスタングは最後にそう言っていたな。


「立ち向うか、そんなのはさぁ…」


できないんだよ…… 本当に。





臭いな…… 臭い。


嫌な臭いがする。


ここには人の嫌な匂いがする。


そしてそれはかつて嗅いだことのある匂い……


かび臭い涙の匂いと、腐きった絶望の匂いと、むせかえるような悪意の匂いだ。


ああ……


全て燃やしてしまいたい。





「さて……」


僕は一つ静かに深呼吸した後に、もう一度エルヴィス王子を見やる。


ふむ……


こいつ…… どうしようか?


生かそうか…


それとも殺そうか?


ぶっちゃけ…… 僕が欲しいのは、あくまでこいつの立場だけ。


こいつの内面や心情は、はっきり言って不必要だ。


何より、こいつは美少女じゃないしな。


まぁ……


確かにこいつの立場には同情するところは多分にあるし、共感もできる。


だけど……


だけどそれだけだ。


同情も共感もできるけど、それで僕の目的が達せられる訳じゃない。


勿論…… 同情も共感もできるから、こいつ自身が使える奴で、目的を達成するのに邪魔でさえなければ、生かしてやるのもやぶさかではない。


だがしかし……


こうまでなった人間が…… 立ちあがれるのだろうか?


こうまでなった人間が…… まともに生きれるのだろうか?


正直…… こうまでなってしまった奴が、使えるとは思えない。


使うにあたって邪魔になるのならいっそ……


こいつを殺して僕が成り代わってしまおうか?


「…………ぅぅぅ…」


……と、僕がそんな事を考えながらエルヴィスを見ていると、エルヴィスが足を引きずりながら移動を始めた。


どうやら、自室へと帰ろうとしているらしい。


「ふむ……」


僕は、そんな彼を見ながら、彼の処遇を考える。


エルヴィスをどうしようか考える。


そして……


「とりあえず…… 見定めてみるか」


僕はとりあえず、彼の後について行くことにした。


彼を…… とりあえず観察しよう。


そうだな…… まぁ、一週間は猶予をやろう。


それで見て、使えそうならそのまま使う、使えなさそうなら……


そうだな、記憶を消して、こいつの管理するスラム街にでも放りだそう。


まぁ…… それでもここにいるよりはましなはずだ。


「さぁ…… 見極めさせてもらおうか…」


僕は……


僕は「強い者の敵」だけど「弱い者の味方」じゃない。


ただ弱い者は、嫌いなんだ……


前の僕を見ているようで…… 不快だ。


「まぁでも…… 結果は見えているだろうけどね」


そう…… 結果は見えているだろう。


こんな環境の者が、強い訳がない。


こんな環境の者が、卑屈で無い訳がない。


こんな環境の者が、歪んで無い訳がない。





こんな環境の者が…… 屈していないはずがない。





使える奴のはずがないのだ。


残念ながら…… ね。









































……… と、思っていた僕の考えは。


この直後、見事に裏切られる事になるのだった。

明日も多分更新するはずである。


御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【契約奴隷】


シルビア


【契約者】


ユエルル・アーデンテイル


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『悪夢の追跡者ファントム・ストーカー


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)』 『魅惑アプローチ

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