4話 全ては準備が大事。
42レベルだ。
つまり30レベルを超えた。
そしてそれはある魔法が使えるようになったことを意味している。
そしてその魔法とは…… 『使い魔の儀』だ。
それはこの世界にいる人間であれば、30レベルを超えさえすれば誰しも扱える魔法である。
その内容は、その名の通り使い魔を得るための儀式魔法である。
やり方は簡単。
自分よりレベルの低い魔物に触れながら、「友に歩まん悠久の時を」と唱えるだけ。
それだけでこの魔法は成立する。
それだけで、その魔物を支配下に置き、従わせる事ができるのだ。
そして生涯の友とするのだ。
この魔法は一生で一回しか使えない。
しかも代えが効かない。
一度パートナーを決めたら変えることは出来ない。
魔物の寿命も主人に依存する形でリンクするので、本当に一生を共にすることになるのだ。
そのため、一般人は適当な馬とか犬とかの扱い易い魔物を使い魔にするが、冒険者や騎士など戦う事を目的とする仕事に就こうと考えている奴は、箔付けの為にこぞって強い魔物を従えようとするのだ。
とにかく、要するに、この世界の人間は30レベルになると使い魔を得られるってことだ。
だからこそ、この世界の一般人の平均レベルは30なのだろう。
どうやら、使い魔を得たら一人前と言う風習もあるみたいだし。
ちなみに鳳崎はまだ使い魔を得ていない。
どうやら彼はドラゴンを狙っているのだとか。
さて……
そこで、42レベルになった僕が何を使い魔にするのか……
それは、これから買いに行く。
――――
「こんばんわ」
僕は薄暗くて、謎の光を放つ鍋がぐつぐつとなる店内へと入る。
ここは錬金術の工房。
僕が昼に精霊水を買い付けた店だ。
「いらっしゃい…… おや… 昼のおにいさんじゃないかい……」
店の奥から薄気味悪いお姉さんが出てくる。
口元からは鋭い犬歯が生え、、片目に眼帯、銀色の髪は地面に付くほどに長く、その髪の隙間から除く瞳は黄金色。
明らかに人外じみた格好のお姉さん。
ちなみに昼に話を聞いたところ、犬歯はつけ歯、眼帯の下には健康な目、髪は特殊な染料で染め、金色の瞳はそう言う魔法らしい。
なんだかその中二臭さがとても好きになれそうなおねぇさんだ。
正直好みのタイプだ。
「あ、お店まだやってますか?」
「ああ…… 私の店は12時までやってるよ、ウチの顧客は夜型が多いからね」
仕事熱心なのもポイントが高い。
「良かった…… ところでウォータースライムって売ってますか?」
「ああ…… 残念だ、申し訳ない…… 今丁度ウォータースライムは切らしていてね、シーソルトスライムならいるのだが……」
「ああ、じゃあシーソルトスライムで良いです、ついでに精霊水を5リットルとミカトル草とリンジカド鉄粉それに浄化石とポーションにクラロドル岩塩を下さい」
僕は店内をざっと見回して商品を確認すると、おねぇさんにそう言った。
「ほぅ…… ミカトル草とリンジカド鉄粉か…… 君、シースライムを加工してウォータースライムを作るつもりだね? 若いのに良く知っている…… 感心するよ」
おねぇさんが、少しだけ見える金色の瞳をにぃっと細目ながら僕を見やる。
ああ、悪魔みたいでかわいいなぁ。
「ふふふ、私は君が気に入った…… サービスするよ…… 1黒銅貨(一円相当)おまけしてあげる」
「ありがとうございます、ではまた…… 何かあればまた、ここに買いに来ます」
「どうぞ…… ごひいきに」
僕は袋につめられたそれらを受け取り、そしておねえさんに微笑む。
おねえさんもそんな僕に、口を三日月にゆがめて微笑む。
うん…… 不気味でかわいい。
いいものが見れた、今夜も頑張れそう。
「あ、ちょっとまって……」
「はい?」
お姉さんが僕を呼び止める。
そしておねぇさんは、つけ歯を外して僕に手渡した。
「おちかづきの印に、あげるわ……」
彼女はまた…… にぃと笑う。
「ありがとうございます、大切にします」
僕はそのつけ歯をその場でつけてそう言い、立ち去ったのだった。
――――
さぁ、宿屋に戻って早速ウォータースライムを作るぞ。
そしてウォータースライムを更に加工して……
くふふ…… 楽しみだなぁ。
御宮星屑 Lv42
【種族】 人間
【装備】 つけ歯
〔HP〕 20/50
〔MP〕 10/10
〔力〕 210
〔魔〕 0
〔速〕 0
〔命〕 210
〔対魔〕0
〔対物〕0
〔対精〕0
〔対呪〕0
【称号】
なし
【スキル】
『悦覧者』