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38話 勝負の時

仕事がしんどくてサボってました。


ちょっと、落ち着いたのでまた更新します。

「くふふ、あと5分……」


デートの待ち合わせ場所である、公園の噴水前。


そこに一人佇む、黒いローブを着た少女。


僕はその少女の事を遠くから見つめ、ニヤリとする。


現在、テートの待ち合わせ時間の5分前。


「そろそろ接近を始めるか……」


僕はデートの時間ぴったりに到着すべく、噴水への接近を開始する。


「さぁ、始めようか…… 念願のデートを」


ちなみにユエたんは15分前に到着していて、僕自身は不足の事態に備えて日付変更からスタンバイしている。


スタンバイは大分前からしているが、実際に待ち合わせ場所につくのは時間ジャストだ。


早ければ気を使わせてしまうし、遅れるのは美少女に対して失礼。


待ち合わせは時間どおりがベストだ。


多分だけどね。


「お早うございます、ユエルルさん」


ともかく……


僕はそう言いながら、狙い通り時間ぴったりに待ち合わせ場所に到着する。


「お待たせしてしまいましたか?」


朗らかな笑顔と、低く落ち着いた声で、そう声をかける。


「ぇ………… ぃ、いや…… 待ってはいない」


僕が声をかけると、ユエたんは少し驚いた様子で僕を見やり、そう返す。


その表情は少し戸惑った様子で、少しだけ顔も赤いような気がしないでもない。


印象としては「良い意味」で驚いているといった感じだ。


ユエルル博士の僕が言うのだから間違いない。


くふふ……


どうやら第一段階、「第一印象塗り替え作戦」は上手く言ったようだな。


ユエたんの前回の僕の第一印象……


それは一言で言えば「変人」であったと思う。


結局、ユエたんの方がそんな「変人」である僕に興味を持ってくれたおかげで事なきをえたものの、僕が変人であると言う印象はぬぐえていないはずだ。


そして…… それでは良くない。


変人はどこまで行っても所詮変人。


字面は似てても、変人は恋人にはなれないのだ。


いくらごり押しでよい感じでまとめたにしても…… そのままでは「コイツやべぇ」って印象は消えないのだ。


故にその印象は一度払拭しなくてはならない。


恋人になるには、良いイメージに作り変えねばならないのだ。


そして……


だからこその一ヶ月。


だからこその、この立ち振る舞いなのだ。


一ヶ月間を空けることで、前回の印象を薄くさせ…… そこに刷り込む強力な「紳士的」の印象。


それにより前回のダメさが今の僕を引き立たせて、更によく見せるのだ。


これぞ「第一印象変革作戦」。


そう…… 全ては計画の内。


前回、姫カットにテンション上がっちゃったのも計画の内………… なんだからね。


「な、なにか君……… 雰囲気違わないか?」


ユエたんが僕の姿をしげしげと眺めながらそう呟く。


とても興味深げに見ているのが分かる。


くふふ…… そうだろう。


何せ僕の今の姿は、ユエたんの好みを調べつくして服装をコーデして、その上で身長体格も変えて、更にはばれない程度に顔も整形もしているのだ。


つまり、今の僕はユエたんの好みに限りなく近い僕なのだ。


結果、意外とオリジナルの僕と違いがでてしまったが……


まぁ、一ヶ月も間を空けてるし、そんな些細な違いに気がついたりはしないだろう。


「雰囲気が違いますか? それは良かったです……」


「え?」


僕を訝しげに見るユエたんを見据えて、自然な笑顔を浮かべる。


「今日のデートの為に…… この一ヶ月、頑張ったんですよ」


印象の違いなんて、この一言で誤魔化せるはずだ。


何故なら…… 僕と違ってユエたんは僕の事など何も知らないのだから。


僕が笑顔でそう言えば、そうであると思うしかない。


それしか情報がないのだからな。


「………………………ぅ」


ユエたんが僕の目と表情をまじまじと見つめている。


見透かすような目線で…… 僕を見てくる。


そう…… 


彼女は見透かすのだ。


彼女は大企業を運営する才女。


人を見抜くすべには長けている。


彼女は、何か違和感を感じたときは、必ずこうして相手の目を見つめる。


そうして、その相手の目の色や動き、些細な表情筋の動きから…… 相手が嘘をついているかどうかを見透かしてしまうのだ。


しかもそれが魔力を用いない、単純な観察力だというのだから恐ろしい。


ちなみにこれは、ゴミ箱から見つけた彼女の髪の毛を『味確定テイスティング』して、彼女のスペックを調べつくした時に発覚した情報である。


本当に恐ろしい娘だ。


しかもその的中率は凄まじい精度で…… 僕がストーキング中で見た限りでは、その的中率は100パーセントだった。


つまり、彼女には僕が何かいかがわしい事をしているとばれてしまうのだ。


もちろん……


「どうかしましたか?」


それは何も対策をしていなかったらの話だ。


「な、なんでもない…… えっと、何か気を使わせてしまったか?」


恐らく、妖しいところは無いと判断したのだろう。


ユエたんは少し申し訳なさそうにそう答える。


「いえ…… 僕がやりたくてしたことですから」


僕はそれに嬉しそうな笑顔を浮かべて返した。


そう…… 


あらかじめ設定していた笑顔を浮かべてだ。


僕は、ユエたんが魔力に頼らず嘘を見抜く力を持っていると知ってから、スライムの『束縛無き体躯(フリーダム)』を応用して表情のプログラミングをしたのだ。


自分の「純粋で自然な笑顔」を完全に分析して、僕の意思一つでそれを完全に再現できるようにしたのだ。


つまり……


ユエたんに僕は、「心から喜んでいるだけ」の男に見えているはずなのだ。


その情報しか、彼女には与えられないのだ。


僕が腹の中でこんな事を考えているなどと言う情報を、彼女は手に入れることが出来ないのだ。


くふふ……


所詮この世のは情報戦なのだよユエたん。


「さぁ…… 早速デートへむかいましょうか?」


僕はユエたんを見やり、そう言う。


「う、うむ…… 宜しく頼むよ」


プログラミングした笑顔でそう言う。


120パターン用意した表情を状況に使い分けて、そう言う。


さぁユエたん…… 


この勝負デート、勝たせてもらうよ。


――――


「いやぁ…… デート日和ですね」


「確かに…… 晴れたな」


二人で公園から続く道を歩きながら、僕らはたわいも無い話をする。


まぁ、雨だったら、雨雲吹き飛ばす気だったんだけどね。


「ユエルルさん…… そのローブ似合ってますね」


僕は隣を歩くユエたんに微笑んでそう言う。


「ふん…… 世辞はいい……」


しかし、僕がそう言うとユエたんは少し不機嫌な表情でそう返す。


そして……


「僕だって、デートと言う物にローブがふさわしくないと言う事は分かっている…… しかしだな、生憎僕は女子の服というものに関しての知識が皆無なのだ」


少しだけそっぽを向いてそう言うユエたん。


うん…… 


分かってるよ。


全部分かってる。


ユエたんが僕とのデートに時間を空けるために忙しくしてたことも。


そのせいで服を買いに行く時間がなかったことも。


そして「デートに行く服を買ってきてくれ」って恥ずかしくて言えなかったことも。


全部分かってる。


「君がそんなに頑張ってくれたのに、僕がこんな格好だというのは確かに申し訳ないが、僕だってただ在り合わせの服を選んだ訳では……」


そして僕は………


「いえ…… 本当に似合ってます」


「え?」


このローブが、ユエたんなりのおしゃれだと言うことも……


「この手触り…… 生地は黒楼蚕の魔楼シルクで編んだものですね、そしてこのエンブレムとふくよかで味わい深い型はラグラストの89年モデルだ……」


「ぅえ!?」


十分理解している。


当然、下調べもバッチリだ。


「しかもこの袖のスリットが入ってるのは限定モデルですね? すばらしい」


「わ…… わかるのか?」


心底驚いたような顔をして僕を見やるユエたん。


まぁ、確かにクラシックタイプの魔道師様ローブなんてマニアの領域だからなぁ。


僕も最近までは全く興味がなかったよ。


「ラグラストのこの時代の作品は、力強い炎属性を意識しつつ、同時に落ち着いた水属性を意識したデザインのものが多い…… 炎と水属性を得意とする貴方にピッタリのローブですね」


でも、君がクラシックローブコレクターだと知ってからは超勉強した。


今では、マニアと語らってもまともに返答を返せる自身があるね。


「髪もローブに合わせた結い方で…… 本当にかわいいです」


僕は最後にそう言って、また微笑む。


笑顔、そして褒める。


これぞ恋愛の鉄則だと、僕が『悦覧者アーカイブス』で見た恋愛指南書には書いてあった。


「ぅ………… あ、ありがとう… き、君もその…… スーツ似合っているぞ」


「ありがとうございます」


かわいいといわれた事に照れているのか……


少し顔を紅くしてどもるユエたん。


くふふ……


相手のおしゃれポイントを完全に理解したうえでの褒め。


これはどうやら少しは効いたようだな?


だが、もちろんこんなのは序の口。


ジャブに過ぎない。


たたみかけるのはこれからだ。


「えっと…………… そ、それで僕達はこれからどうするのだ?」


「そうですね…… まずは軽く食事でもどうですか?」


現時時刻は12時の30前。


昼飯に向かっても不自然な時間ではない。


「ふむ、僕は問題ないが…… ところで何を食べるのだ?」


「それは着いてからのお楽しみと言う事でいかがですか?」


僕はそう言ってまた微笑む。


笑顔ナンバー46のちょっとニヤリとした笑顔で微笑む。


「ほう…… おもしろい」


するとユエたんも少しニヤリとして僕を見やる。


「では、楽しみにしていよう」


そしてリードする僕の隣をゆっくりと歩き始めるのだった。


――――


「こ、ここは………」


そう、小さく呟きながら目の前の光景に驚くユエたん。


僕とユエたんの目の前には……


「どうですかね?」


漆黒を基調とし、いたるところに髑髏の装飾を散りばめ、そして真赤な血飛沫を連想させる赤色の彩りを施した……


実にエキセントリックな外装をした店舗であった。


「どうって…… 君…… 正気か?」


そんな店舗と僕を見比べて、ちょっと呆れた表情を浮かべるユエたん。


まぁ……


言わんとしてることは分かる。


確かに、デートでこのエグイ外装の店は無いだろう。


こんな店を選んでは、せっかく塗り替えた第一印象をまた崩しかねない。


それは分かっているのだ。


だが……


「正気ですよユエルルさん、ここはですね……」


僕がそれでもここを選んだのはには理由があるのだ。


それは……


「ここは実は…… ヘロリモペペンが食べられるのです」


そう、ヘロリモペペンが食べられるのだ。


「へ……… ヘロリモぺペンが……!?」


僕がヘロリモぺペンの名前を出した途端に、食いつくように僕を見やるユエたん。


ふふ…… さすがヘロリモぺペンだ。


凄まじい威力だぜ。


ところで…… 


ヘロリモぺペンってなんなんだろう?


「な…… こ、こんなところであのヘロリモぺペンが食べられると言うのか…!」


少し興奮した様子でそう言うユエたん。


そんなにヘロリモぺペンを食べたかったのだろうか?


「ええ、ユエルルさんは珍しい味の物がお好きだと風の噂で聞きまして…… どうでしょうか?」


まぁ、要するにユエたんはゲテモノ好きらしいのだ。


ユエたんの日記帳を『悦覧者アーカイブス』で盗み見たところ、しきりにヘロリモぺペンとゲモゲロバルバモスの名前が出ていた。


そして、最寄でそれらが食べられる所が無いか、メニュー表を検索したらこの店のライナップにヘロリモぺペンがヒットしたのだ。


そんな訳で僕はこの店を予約した。


ふむ…… どうやら想像以上にユエたんは喜んでくれてるみたいだが……


結局ヘロリモぺペンってなに?


下見でこの店には一度来ているのだが、そのときにヘロリモぺペンは置いてなかった。


どうやらあまりの人気の無さのせいで完全に予約制となっているようだ。


いったい…… どんな味だと言うのだヘロリモぺペン。


どんな文献を見ても「………………………ない、あれは無い」としか書いてなかったから…… どんな物かまったく分からないのだ。


「き、君…… 早速行こうじゃないか」


子供のようにワクワクとしながらそう言うユエたん。


まぁ、実際に子供なのだけど。


でも、こうして素の表情を目撃できたと言う事は大きい。


たとえそれが、食べ物に釣られた物であろうと「この人の前で素になった事がある」と言う事実は残るのだ。


そして、そういった事実は意識しようがしまいが心の中に残る。


心に残り…… やがてそれが蓄積して、それは「気安さ」となり、更には「親しみ」になり、そして「信頼」となるのだ。


そう、つまり恋愛とはいかにその人の素を引き出すか……


それにかかっているのだ!


…………と。


悦覧者アーカイブス』で検索した「ケルビィン伯爵のモテモテ街道まっしぐら」と言う本に書いてありました。


「ええ、さっそく行きましょう」


僕はそう言って自然に微笑み、そしてこれまた自然にユエたんの手を取る。


「お………… おぉ」


さりげなく手を取る僕を見上げ、そして少し戸惑うユエたん。


ちょっとだけキュッと結んだ口元が何となく愛らしい。


僕はそんなユエたんに、全く下心の無い笑顔(笑顔ナンバー65)で見下ろし、そしてエスコートするのだった。


「楽しみですね?」


「む…… うむ……」


まぁ、死体を食べても美味しい僕だ。


どんな味でもいけるであろう。


――――


………………と、思っていた時期が僕にもありました。


「いやぁ…… 僕にとっても予想外の味だったよ、なんと言うか…… 感動だったな……!!」


僕の隣で、そう言って微笑むユエたん。


食事中の会話が割と弾んだのも手伝って、少し表情が柔らかくなっている。


そして何より……


「ええ、とても良い体験ができました!」


楽しいと言う感情を共有できていると言う事が、僕らの関係をより近しいものへと変えていた。


まぁ実際は……


「本当に素晴らしい体験でした」


などとは微塵も思ってはいないのだが。


「うん、うん…… 君も中々いける口なのだね」


と、嬉しそうな表情の彼女には申し訳ないが、正直なところもう二度とヘロリモぺペンは食べたくない。


いや、二度とヘロリモぺペンは食べないとここに誓おう。


本当になんなのだ…… あの味は。


なんと言うか…… 


ソフトクリームに墨汁とシャンプーを混ぜ合わせたものを剣道部の篭手に詰め込んで三日見晩寝かした物にジャーマンスープレックスをかけた様な……


そんな異次元の味がした。


正直めちゃくちゃ気持ちわるい。


なんだこれ。


本当になんだこれ。


表情の設定ができて本当によかった。


それがなかったら、完全に顔が真っ青だったよこれ。


ないわぁ…… あれはほんと無いわぁ。


「ふふ…… 君と僕は意外と味覚が似ているのかも知れないね」


そういって微笑むユエたん。


うん……


君の馬鹿舌と一緒にしないでくれ。


「ふふ、そうですね」


まぁ、でも……


彼女にとってはそんな些細な事が嬉しいりのだろうな。


基本スペックも、魔法の技術も、頭の良さも、味覚のいかれっぷりも……


全てが孤高で孤立気味の彼女にとって、こうした理解者が何より嬉しかったりするのだろう。


「では、次はどこに行くのだ?」


そういって、僕をチラリと見上げるユエたん。


うん、仕草の一つ一つが…… 明らかに食事前より親密だ。


やはり、共に食事を取ると言うのはコミュ二ケーションの基本だな。


「ええ…… 実はこんな物を用意していまして」


僕はそう言って懐から、二枚のチケットを取り出す。


「わ…… それはもしかして」


それを見て意外そうな顔をするユエたん。


「はい、バーラのチケットです」


僕はユエたんの好きな「演劇」の演目、バーラのチケットを出す。


ユエたんの趣味の一つ。


それは演劇だ。


この世界の演劇は魔法を応用した派手な演出が多く盛り込まれ発展した演劇であり、下手をすれば前の世界よりクオリティが高い。


そして、ユエたんはそんな演劇全般を愛していて、軽くオタクと呼ばれる域にまで達している。


まぁ、優秀な頭脳を持つ彼女が、真剣に鑑賞と収集を始めた上での、当然の結果であるのだが。


ともかく…… このバーラと言う演目はそんな演劇オタクの彼女も納得の演目であり、非常に質の高い物なのだ。


「ほう…… バーラを選ぶとは、君もなかなか通なのだね」


まぁ、そう言うことらしい。


ちなみに『悦覧者アーカイブス』で彼女の日記を呼んだ結果…… これに関しての項目は非常に熱が入った文脈であった。


それだけ、これは彼女にとっては思い入れのある演目なのであろう。


まぁ、ほかにも熱の入った文のものはいくつもあったが……


その中でもこれが一番、一般客に人気の無いものだった。


「これの良さが分かるとは、君はなかなか素敵な感性をしているのだな」


そう……


人は自分のマニアな部分を共有できる人にシンパシーを感じるのだ。


これもまた、心と心の素の触れ合いである。


「ええ、しかも今回の講演はマルデロス監督ですからね…… 期待できますよ」


「おお……! 君もマルデロス監督が好きなのかい?」


「もちろんです、ですが魔法演出担当がエルリーさんだと言うのが気になりますね、彼にマルデロス監督の世界観が理解できるのでしょうか?」


「ほぉ…… さすがだ… 君もそう思うのかい?」


なんだかとても嬉しそうにニヤリとするユエたん。


どうやらコアな話ができる事がかなり嬉しいらしい。


かなりご満悦だ。


ふふふ…… 


製作サイドについても語れる。


これぞオタクの醍醐味。


演劇も、アニメも…… オタクであることには変わりないと言うことだな。


「まぁ、バーラについての談義はまた後でたっぷりとしましょう」


僕は、演劇についての話を数分したあと、そう言って話を止める。


このまま、離し続けたら演劇についての話題ストックがすぐ無くなってしまう。


バーラを見終わった後のトーク様に残しておかないといけないからな。


いったんセーブしよう。


「それより、演目の開演までまだ時間がありますね」


「ふむ…… 確かにそうだな」


僕はそう言って、ユエたんに視線を合わせる。


そして少しだけ雰囲気を変えて、新たに話を切り出した。


「実はですね、恥ずかしながらデートを上手く行かせるために、ユエルルさんの事を多少調べさせてもらいまして……」


僕は、人の良さそうな笑顔を浮かべてそう続ける。


「ほう…… 何を調べたのだい?」


そんな僕を見つめて、ちょっと楽しそうに言うユエたん。


ふむ、この好反応……


確実に友好関係を築けているみたいだな。


「まぁ、大した事ではないです…… 趣味とか好きな物を分かる範囲で」


「それで? なにか僕についてわかったかい?」


僕は、僕を見上げるユエたんにはにかんで答える。


「はい…… 三つの共通点を発見したんです」


「へぇ、そうなのかい?」


僕の答えに、興味深そうにそう言うユエたん。


「ええ、一つは珍しい味の食べ物がお互い好きなこと、二つ目は演劇がお互い好きなこと、そして……」


「……そして?」


僕は、「お互い好き」と言う事をさりげなく強調しながら、ニコリと微笑む……


そして……


「アンティーク魔道具がお互い好きなことです」


そう言ったのだった。


まぁ、もちろんそんなのは全部嘘だ。


この一ヶ月、ユエたんのことを調べつくして得た情報から、自分で勉強しただけで、僕自身はこの三つに何の興味もない。


だが、ユエたんと「感情の共有」をするには趣味をあわせねばならない。


が……


適当にあれもこれもと趣味をあわせていては、まずいのだ。


頭の良いユエたんのことだ……


恐らくこっちが勝手に趣味ををあわせているのだとばれてしまうだろう。


しかし……


それが三つだと限定すればどうか?


あれもこれもではなく「この三つだけ趣味が合う」と言えばどうか。


三つ……


妙にリアルな数字では無いかと思う。


これは「まぁ、そいんな事もあるかな?」と思える程度の数字ではないだろうか?


「ほぉ…… なんだ、君もアンティークが好きなのか?」


「はい、そうなんですよ」


嬉しそうにそう聞き返す、ユエたん。


どうやら…… 違和感は感じていないみたいだね?


さて…… それじゃあ。


「どうです? 演劇の開演まで、アンティークめぐりにでもいきませんか?」


僕はそういって自然に手を差し出す。


それに、ユエたんは……


「…………………ふむ、まぁ、悪くはないかな」


ちょっといたずらっぽく微笑んで、僕の手をキュッと握るのだった。


くふふ……


いいねぇ…… 確実に進行しているよ。


全ては…… 万事計画通りだ。


御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【契約奴隷】


シルビア


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『悪夢の追跡者ファントム・ストーカー


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)』 『魅惑アプローチ

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