32話 あらぶる戦いの時
「てぇっめぇ!!!」
僕の「勇者(笑)」発言に怒り、目を見開いて怒鳴り、迫ってくる鳳崎君(笑)
「ちょ…! 鳳崎君、ここで暴れるのはまずいよ!」
そして、そんな鳳崎の肩に触れて、それを止める木島。
「ちっ……! くそっ!」
そんな木島の抑止に応じ、あっさり止まる鳳崎。
まぁ、王国公認のこの奴隷市は王国指定戦闘禁止区域に指定されてる場所だからな。
王族の保護下にいる鳳崎としては、それを破る事はできないってとこだろう。
ふん…… つまらんなぁ。
「おい! フグイス!!」
「は、はいッ!?」
歯をギリリと食いしばりながら、奴隷商へと向き直る鳳崎。
「金剛貨一枚と金貨一枚だっ!!」
そして、怒鳴るようにしてシルビアたんの値を吊り上げる。
「おい…… てめぇ……… この真っ黒野郎」
今度は僕の方を睨みつける鳳崎。
「てめぇみてぇにふざけた態度の奴は始めてだよ…… ほんとムカつくぜぇ」
歯をぎりりとして、目を全開に開いて僕を睨む鳳崎。
「俺はお前みてぇなその他大勢のクズが、ふざけた態度を取っていい人間じゃねぇんだよぉ!!」
そして……
「てめぇとは格が違うってことを…… 教えてやるぜ!」
とても勇者とは思えないような、凶悪な顔を浮かべるのだった。
しかし、それに僕は……
「はいはい、がんばってね、じゃあ僕は金剛貨一枚と金貨5枚で」
僕はそんな鳳崎を、あえてスルーしておちょくる。
「てぇ…… めぇっ!!」
鳳崎はそんな僕の態度に、面白いほどに激昂する。
くふふ……
あの勇者さんの顔マジウケる。
まじ(笑)なんですけど。
「おい!! 俺は金剛1の金6だ!!」
「じゃあ僕は更に金7で」
そして、再び競売が開始される。
鳳崎が僕を睨み、そしてそれを僕が鼻で笑う。
ぴりぴりと、ぎすぎすとした空気が張り詰める会場。
そんな最悪な空気の中で競売は継続されていくのであった。
……今回行われているこの「簡易即売形式」のルールは実に簡単だ。
開始してから10分間競売が継続され、10分の最後に一番高い値をつけていた者が競り落とせるのだ。
そして……
「残り一分です!」
開始からなんやかんやで九分が経ち、奴隷商がそう宣告する。
「金剛5の光銀6だ……(506万相当)」
僕は少し焦りながらそう言う。
額から汗を流して(スライム汁だけど)そう言う。
「おやぁ? 随分と余裕がなさそうじゃないか? あぁ? どうしたんだよ? さっきまでの余裕はよぉ?」
そして、そんな僕をにやにやと、嬉しそうに、楽しそうに見下してそう言う鳳崎。
「あはははは!! いい顔だなおい!! 金剛6だ!!」
馬鹿みたいに笑いながら、値を吊り上げる鳳崎。
「ぐぅ……」
僕はそんな鳳崎を見ながら、息を詰まらせ悔しげな顔を浮かべる。
「ふはははははぁぁはっ!! 本当に良い顔だなぁぁ!! 最高に無様な顔だよお前ぇ!!」
げらげらと気持ち悪く笑う鳳崎。
「金剛貨3枚までは余裕そうだったよなぁ…… それで俺がいきなり5枚まであげた途端に焦りやがって!!」
僕を見て笑うその姿は、本当に楽しそうで…… 本当に気持ちわるい。
「どうせ金剛貨6枚くらいしか持ってねぇんだろ? この貧乏人がぁ!!」
そして鳳崎は、焦る顔の僕を指差しニヤリと笑う。
「俺は勇者…… 強いんだよ! だから金だって持ってる! この前ガヴィードメタルオーガを倒したからなぁ!! 分かるか? あのガヴィードメタルオーガだぞ!!」
勝ち誇った顔でそう言う。
「ぐぅ…… く、くそぉ…… こ、金剛6枚と金1だ!」
僕はそんな鳳崎を睨みながら、搾り出すようにそう言う。
「あと10秒です!!」
そしてそのタイミングてかかる、奴隷商の声。
「くはははっはぁ!! 無様無様無様ぁ!! マジでお前かっこ悪いよ! 死んだ方がいい!! このクズが! ゴミが! 虫がぁぁ!!」
口元にいやらしい弧を描き、そして僕を指差して笑う鳳崎。
そして……
「ほらぁ!! さっさとどっかで死んでこい!! 白金貨一枚だぁぁ!!!(1000万相当)」
最高に嬉しそうにして、白金貨を地面に叩きつける鳳崎。
「そ、そんな……」
その金額を見て呆然とする僕。
そんな僕を見て、鳳崎は「にやぁ……」と気持ち悪く微笑むのであった。
そして僕は……
「じゃあ……」
静かに……
「神金貨一枚で(一億相当)」
ニヤァと笑ってそう言ったのだった。
「………は?」
ポカンと呆ける鳳崎。
「へ?」
それと同じようにして間抜けな声を出す木島。
「え…… えっと…… それでは競売を締め切ります」
そしてそこで奴隷商の声が、静かに響いたのだった。
「…………………………ぁ?」
シンと静まり返った競売場に、間の抜けた鳳崎の声が響く。
「神金貨? は………ぇ? なに言ってんだよお前…… ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ………」
わなわなとしながら、面白い顔をしてそう言う鳳崎。
「ほら、神金貨だ…… 『硬貨鑑定』は当然使えるんだろ? 奴隷商」
僕はそう言って奴隷商に神金貨を投げて渡す。
「あっ……! は、はい…… ええと…… ぉ…… ほ、本物です」
奴隷商はそれを慌てて受け取り、そしてそれを鑑定する。
「た、確かに受け取りました…… お買い上げありがとうございます」
奴隷商は気まずそうにしてそう言う。
「ぁ………… な……っ!?」
そして、その思いがけない結末に、絶句をする鳳崎。
僕はそんな鳳崎を見つめて……
ニヤニヤといやらしく笑う。
「おやぁ? 随分と余裕がなさそうじゃないですか? どうしたんですか? さっきまでの余裕は?」
僕は鳳崎を見下しながら嗤う。
「くふふふふ…… いい顔ですねぇ……!」
そして先ほどまでの鳳崎の台詞をなぞるようにして……
「あははははははっ!! 本当に良い顔ですねぇ! 最高に無様な顔ですよ勇者(爆笑)さん!!」
思い切り奴を馬鹿にする。
「ぐぉ…ッ! ぉ…まぇ!!」
歯をくいしばり、拳を握り締め、ぶるぶると震える鳳崎。
「白金貨出して余裕そうな顔してましたねぇ…… それで僕が神金貨出した時の顔!」
ああぁぁ、やべぇ……
超楽しい、鳳崎をなぶるの……
「どうせ白金貨1枚くらいしか持ってないんでしょう? この、貧、乏、人」
楽しすぎる、楽しすぎるぞ……
「いやぁ、さすがガヴィードメタルオーガを倒した勇者さんですねぇ…… マジで半端ないです(笑)」
僕はくすくすと嗤いながら、鳳崎を嘲る。
「半端のない無様っぷりですよ、もう無様すぎて目も当てられないですね…… 最早無様すぎて勇者(笑えないw)ですね」
とても楽しく、そしてとても笑顔で元気良く……
「もう死んだ方がいいんじゃないですか?」
僕は鳳崎を全力で馬鹿にしたのだった。
「こ…………っ」
真赤な顔で、怒りに震える鳳崎。
その表情は正に鬼の形相と言ったところだ。
鳳崎は僕を睨みつけ……
「殺すッッ!!」
怒声をもってそう言い放つのだった。
「てめぇは絶対殺すすすすすうぅぅッッ!!!!」
鳳崎は喉を壊さんばかりに叫び、完全に頭に血を昇らせ、臨戦態勢に入る。
目を血走らせ、殺気を放ち、魔力を解放する。
「ちょ! 鳳崎君! や、やばいよ!!」
木島はそんな鳳崎を、一応止めようとはするが……
「うるせぇぇぇ!! コイツはぜってぇぇぇ殺すぅ!!!!」
そんなのでは全く止まりそうにない鳳崎である。
「『五重結界』強化展開ッ!!」
鳳崎を覆う五重の結界がその厚さを増す。
「『四精融合』発動!!」
土、風、水、火の四大元素属性を同時に自身に付与する。
「『三連駆動』、詠唱、詠唱、斬撃!!」
1ターンで3回行動できる、特殊時空間魔法。
「『二大剛剣』フレイムタン!アイスコフィン!」
魔法剣を二つ同時に召喚する。
「『一拍詠唱』!! 『イグニスフレア』、『ボルダートサンダー』ッ!!」
どんな大魔法だって魔法名を言うだけで発動する、詠唱破棄スキル。
「はぁ…… これだからチートって奴は」
この五つのスキルこそが勇者の固有スキル…… 通称「カゾエ之神技」だ。
鳳崎はその力を惜しみなく使いながら僕へと向かう。
強力な結界で防御しながら、自身の攻撃に四大元素を付与して、『イグニスフレア』『ボルダートサンダー』と言う中級魔法と剣による直接攻撃を同時に発動しながら、二刀流は不可能とされている魔法重大剣を二刀振りかざして僕に向かってきている。
しかも詠唱はなしだ。
いやぁ…… これで200レベルくらいだってんだから、実にふざけている。
普通に300レベル分くらいは強さがカサ増しされてるだろう。
まぁ……
「1200レベルの僕にとっては雑魚だけどね……」
僕はそう言ってニヤリと笑い、そしてまずは先に飛んできた魔法を見やる。
「『絶対不可視殺し』は魔法の実態だって捉える」
僕は飛来する、『イグニスフレア』『ボルダートサンダー』を……
「つまり7000越えの【命中】は魔法にだって攻撃を【命中】させる」
拳で地面にたたき落とした。
「な!?」
その光景に驚愕する鳳崎。
だが、既に僕に向かって踏み出しているその勢いは止められない。
「そして、7000越えの【力】は…… 純粋過ぎる物理攻撃は」
僕は『束縛無き体躯』によるスライム化で拳を硬化、ついでに質量も10割増しにする。
「最早、強力な魔法に近い」
僕は左手で鳳崎の結界を軽く砕き、そして……
「くふふ、出直してこいよ……」
向かってくる鳳崎に、カウンターで……
「このクソ勇者が」
拳をあわせたのだった。
「ぐぎゃああああああああああ!!!」
僕の拳が当たった鳳崎の肩が、「ぐしゃぁ」と音をたてて腕ごと吹っ飛ぶ。
まぁ、今の僕の力をまともに受けたら、そりゃあ手足の一つは吹っ飛ぶよね。
「ぎゃああああ!! うぁああ!! あああ!! うでがぁ!! うぁああああ!!! 俺のうでがああああ!!」
血を撒き散らし、泣き叫び、絶叫する鳳崎。
「煩いよ、勇者君」
僕はそんな鳳崎を見下しながら、彼の腕を拾い、そして近づく。
「ひゃあああああああ!! うでがああああああ!! うでがああああああ!!」
僕はそんな鳳崎の千切れた部分に、スライムを流し込み、そしてくっつける。
「ぎゃああああああああ…………あ?」
一瞬でくっついた腕に、キョトンとする鳳崎。
「応急処置だ、後はちゃんとお家で診てもらうんだな」
僕は、鳳崎にそう言うとすぐに鳳崎から目を逸らす。
「あ…………?」
鳳崎は、そんな僕を情けない顔で見上げていた。
まぁ……
あんまり攻めすぎて心が折れちゃったら困るしな。
鳳崎には、もっともっと酷い目にあってもらわないとね…… くふふ。
「ぁ………………………ま、待てっ!!」
鳳崎はシルビアたんのところへと行こうとする僕を呼び止める。
「お………… お前ぇぇ!! お前の事は絶対に忘れないからな!! 絶対に仕返ししてやる!! 絶対にだ!!」
そして、僕の後ろ姿に怒鳴り、泣き叫ぶ。
どうやら……
成す術もなくやられ、あまつさえ情けをかけられたのが、相当に悔しかったらしい。
「おまえぇ!! 名前はなんだ!! 名乗れよぉぉ!!」
叫ぶ鳳崎、しかし僕はそれを無視する。
「くそぉ!! 『広域検索』ォ!!」
鳳崎は『広域検索』で僕の素性を知ろうとする、しかし……
「な……… なんで!?」
僕は『常闇の衣』を纏っているので、検索はできない。
鳳崎の『広域検索』は広さはあっても深さはない。
僕の『常闇の衣』を破れるほどの検索深度はないのだ。
まぁ僕の方は今後、今さっき流しこんだスライム経由で鳳崎のステータスをリアルタイムで監視できるようになったけどね。
「くそ…… くそおおおおおおおおおおおお!!」
僕は、そんな鳳崎の叫び声を背後に聞きながら……
「さ、行こうか……」
「ぇぅ……………」
この一連の流れを見ながらポカンとしていたシルビアたんを牢から出す。
くふふ…… ようやくシルビアたんをゲットできたよ。
「さ…… 行こうか?」
「ぅ………」
僕は困惑するシルビアたんを抱きかかえ、会場を後にするのであった。
ああ…… 今夜が楽しみだなぁ。
※ 次回、第二部最終回。
御宮星屑 Lv1280
【種族】 カオススライム 上級悪魔
【装備】 なし
〔HP〕 7050/7050
〔MP〕 3010/3010
〔力〕 7400
〔魔〕 1000
〔速〕 1000
〔命〕 7400
〔対魔〕1000
〔対物〕1000
〔対精〕1100
〔対呪〕1300
【契約魔】
マリア(サキュバス)
【契約奴隷】
シルビア
【スライムコマンド】
『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』
【称号】
死線を越えし者(対精+100) 呪いを喰らいし者(対呪+300)
暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)
龍殺し(裏)
【スキル】
『悦覧者』 『万里眼(直視)』 『ストーカー(Ⅹ)』
『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』
『味確定』 『狂化祭』 『絶対不可視殺し』
『常闇の衣』 『魔喰合』 『とこやみのあそび』
『喰暗い』 『気高き悪魔の矜持』 『束縛無き体躯』
『完全元属性』




