表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ  作者: ユウシャ・アイウエオン
第二章 新たなる自分への転生(人間やめよう)
31/78

30話 強かなる交渉

「身長は20cmアップの180にして、体つきは引き締まったがっしり系で…」


僕の体は今やスライム。


体型や身長を変える事なんて造作もない。


「『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』を使ってオーラとプレッシャーを増して威厳を出す」


この『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』は上級悪魔が持つべくして持つパッシブスキルであり、上級悪魔が、上級悪魔たらんとするためのスキルである。


具体的には低級の呪いの無効化とか、悪霊や小悪魔の使役とか、弱者に強制的に畏怖を覚えさせるプレッシャーとか…… 


つまりは「上級悪魔だもの、こうじゃなきゃおかしいよね?」って言う要素を全て盛り込んだスキルだ。


そういうオーラを纏えるようになるスキルなのだ。


「服装は『常闇の衣(コートノワール)』を応用して作った、スーツとトレンチコートで……」


うん、大分『常闇の衣(コートノワール)』の扱いには慣れてきたな。


今では結構ディティールを拘った服装でも表現できるようになった。


この通り白いワイシャツさえ着ておけば、後はジャケットもスラックスもベルトもネクタイもトレンチコートも全て『常闇の衣(コートノワール)』で賄える。


しかも全てオーダーメイドばりのフィット感だ。


我ながら結構渋い感じに仕上がっていると思う。


まぁ、スキルを解除したら裸ワイシャツになってしまうのだけどね。


パンツも穿いてないから。


「髪は上げてワイルドな感じに流す、表情は引き締めて…… こんな感じかな?」


僕はそう言いながら、鏡に映る自分の全身を見る。


そこには黒で上下を決めた、長身の目つきの悪い男がいた。


「ふむ…… どうかなマリア?」


僕は、真横で僕を見上げているマリアを見下ろしそう問いかける。


「……………………………か、かっこいぃ」


すると、マリアは少し熱に浮かされたような顔でそう答えた。


「……………………………マジで?」


おおう。


かっこいいとか言われたの生まれて始めてかも知れない。


「うん……、凄くかっこいい……」


頬を赤くして、僕に見惚れながらそう言葉を続けるマリア。


「その明らかにカタギじゃなさそうな服装も…… この吐き気がしそうなほどの殺気も…… コールタールみたいに真っ黒でどろどろした色の瞳も…… どこか異常性アブノーマルを醸し出すその表情も……… 凄くステキ……………」


…………………ん?


マリア?


それ…… 褒めてるかな?


「星屑、超かっこいい………」


……まるでアイドルか何かを見るような視線で僕を見るマリア。


そのまなざしは、熱くキラキラしていて、そして真剣だった。


「う…… うん」


どうやら…… 残念ながら本気で褒めてるみたいだ。


えっと……… 悪魔にとってはそう言うのかかっこいいってことなんだよね?


これは…… 喜んでいいのか?


「え…… やば… ホントかっこいい」


そしてマリアは顔を赤くしてわたわたとし始める。


う、うむ…… 


まぁ、これはこれでいっか。


マリアがなんかかわいいし。


でもあれだな…… 普通の女の子を相手にする時は絶対やめよう。


全力で猫かぶろうと思う。


うん。


「まぁでも、これで見た目的には問題なさそうだな……」


これで、強そうには見えるだろう。


ドラゴンを倒せそうな程度には……


――――


「星屑…… ここは?」


スーツモードの僕に手を引かれながら、マリアが僕に問いかける。


「ここは王国の暗部、社会の裏側………… 犯罪者ギルドだよ」


僕は目の前にある、巨大な廃屋を見上げながらそう答える。


この、スラム街の奥地にそびえる巨大廃墟の集合体…… 「ツギハギの哭城ジグソー・パズル」と呼ばれる場所。


そう……


ここは王国の裏を牛耳る、三大犯罪者ギルドの一つ…… 「べヒモス」の本拠地である。


「さて…… 行こうか」


僕は『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』を全開にして城の中へと歩を進める。


さて…… 


そこのゴリマッチョがいるところが入り口かな?


「おい! てめぇ……ッ なんの様………ぅ… で、ですか…?」


門番が僕に声をかけようと近寄るが僕はそれを一睨みで黙らせる。


門番は僕を見ながらガタガタと振るえ、見てはいけない物を見るかのようにしている。


顔面は蒼白で、歯をがちがちと鳴らし、ぷるぷると震えるそのゴリマッチョの姿が……… 


非常にキモい。


これが女の子ならまだしも、男とか本当にやめて欲しいと思う。


「ビジネスの話だ…… 通るよ」


僕は門番をスルーして足を踏み入れるのであった。


――――


「……………………っ」


「……………………ぉ」


「……………………ッち!」


「て……………………ぅ……」


ジグソーに足を踏み入れ、僕は受付的な所でギルドマスターを呼び出す。


そうして待つ間に、周りにいる沢山のごろつき達が僕を睨みつけるが、直接何かをしてくる事はない。


完全に僕にびびっているようだ。


全員が僕に必要以上近寄ろうとしない。


ああ…… 


なんかこの感じいいなぁ。


周り全てが僕に怯えてるこの感じ…… 超興奮するんですけど。


「ほ…… 星屑……」


「ん? どうしたの?」


僕がそんな事を考えていると、マリアが不意に僕に声をかけてくる。


「お、大きくなってるんだけど……」


マリアが、すこし顔を赤くしながら僕を睨むようにしてそう言う。


……………………しまった。


視線にちょと興奮してしまったようだ。


「マリアおいで」


「…………………………うん?」


僕はカモフラージュ代わりにマリアを正面に抱きかかえる。


「ちょっと…… お、押し付けないでよ」


マリアは僕を見上げながらそう言うが、そんなに嫌そうではなった。


よかった……


嫌そうにされたら、もっと興奮してしまうところだった。



「お、おい……」


僕とマリアがそんなやり取りをしていると、正面から世紀末的な風貌をしたモヒカン男が歩いてくる。


先ほど僕が話した、受付的なところにいた、受付的な男だ。


さすが裏とは言え、大手ギルド。


一応受け付けはあるんだな。


でも…… 


なんで受付が男なんだよ。


受付といえば美人が勤めると相場が決まっているだろう。


くそ…… 美人でクールな裏組織受付嬢と、ちょっとアダルトな会話を繰り広げつつ最終的には go to bed すると言うエロゲ展開を繰り広げるのが僕の密かな夢だったのに……


これじゃあ台無しじゃないか!!


台無しじゃないか!!


「ひ、ひぃ!! そ、そんな目で睨まないでくれよ!」


モヒカンは僕に恐れ慄きながらそう言う。


しまった。 


がっかり感が顔に思いっきりでまくってしまったようだ。


ちょっと睨みすぎたか。


「あ…… あんたが渡したドラゴンの牙は確かに本物だった…… ボスがお会いになるそうだ」


モヒカンはガクブルと震えながら僕にそう言う。


ふむ…… どうやら、ここまでは順調に行っているようだな。



僕は先ほど、この受付につくなり、モヒカンの目前にドラゴンの牙を突き刺し……


「ひぃ!」と、小さい悲鳴をあげて僕を見上げるモヒカンを見下しながら…… 


「ハイドドラゴンの牙だ、しめて100個ここにある……… 買い取れ」と命令したのだ。


この『ハイドドラゴンの牙』はこの大陸で…… いや人間世界で手に入りうる最高の素材アイテムだ。


何せハイドドラゴンは、人間には到達できない魔界に生息する生物なのだから。


つまり、基本的には人間世界には一切出回らないアイテムであり、つまりはめちゃくちゃ貴重品なのだ。


しかもその貴重性に加え、このハイドドラゴンの牙は素材としても非常に優秀である。


何せ、人間界には存在しない1000レベル越えの素材だ。


剣にするのも良し、防具に組み込むも良し、加工してアクセサリにするも良しの超素材なのだ。


この国の国宝である、『影龍ノ剣』もハイドドラゴンの牙から作ったらしいし。


つまり…… このハイドドラゴンの牙は凄まじく高価値のアイテムであるという事なのだ。


それこそ、人一人が一生遊んで暮らせるレベルの金額がつく価値であり、それが100個ともなれば…… 

 

「こっちだ…… ギルマスがお待ちだ」


このように組織のボスが直接会いに来るレベルであると言う事なのだ。



――――



「この部屋だ……」


モヒカンの案内で、僕はジグソーの最深部にある一室へと足を運んだ。


そして、他とは全く異なる高級で重量感ある綺麗な扉を開けて僕は部屋へと入る。


そこには無駄にでかめな皮の座椅子に踏ん反りかえる、無駄に強面の男がいた。


「貴様がハイドドラゴンを持ってきたと言う男が…… 意外と細身だな? これはまさか貴様が倒した訳ではあるまい? どうやって手に入れた? 全て正直に話せ」


その男はやたらと偉そうな態度で、命令口調でそう言う。


僕はその男を冷めた目で見つめて…… その問いかけをスルーする。


「………………なんだ? 貴様しゃべる事もできないのか? その程度の頭もないのか? 何をしに来たのだ貴様は? 何か答えろ」


僕を見下したまま、そう言葉を続ける男。


完全に僕を格下に見ている。


まぁ、それはそうだろう。


この部屋に入った途端に僕は『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』を切っているし、加えて『束縛無き体躯(フリーダム)』で体を弱そうに作り変えている。


この男には今、僕が相当に弱そうに見えているはずだ…… 


それこそ、ダダの使いか何かに見えるほどに。


ギルマスを名乗るレベルの男だ…… 恐らく眼力には自信があるのだろうな。


沢山の人間を見てきた経験を元に、僕をそう判断したのだろう。


くふふ…… 


だが、お前の目は節穴だ。


「影武者が舐めた口を聞かないでくれますか……? あと、僕に読心のスキルは無駄ですよ?」 


僕は…… にたりと笑ってそう言う。


「っ………………!」


その瞬間、男が眉を一瞬しかめた。


ふん…… どうやらあたりみたいだな。


まぁ、裏のギルマスだったら影の一人や二人は持ってるだろうし、ドラゴンを倒したかも知れないような男と二人っきりで会うはずなんてないと思ってたけどね……


読心も含めて読み通りか。


「……………ほぉ、思ったよりやるようだな」


すると、男は冷静な様子で踏ん反りかえる。


どうやら、偉そうな態度は崩さない方向で行くらしいな。


まぁ、多分向こうの方としては……


「ドラゴンを100匹倒せる人間なんていやしない…… 

恐らくリスクなくドラゴンを倒せる方法を編み出したのだろう

それを何とか聞きだして、ギルドで独占できれば」


見たいな事を考えてるのだろうと思う。


でなければ、こんな高圧的な態度がとれる筈もない。


だけど…… 


それはとても浅はかだね。


想像力が足りないよ。


確かにドラゴンを100匹も狩れるような人間は存在しない。


しないが……


それはあくま・・・で人間は…… って話だろう?


生憎僕は違うんだよ、「べヒモス」。


そして…… 


君達は一つミスを犯した。


それは…… 


僕にぶちきれる理由を与えたってことだ。


まぁ…… 僕がそう仕向けたんだけどね。


「おい貴様、それなりに頭があるなら分かるだろう? 今すぐハイドドラゴンを捕らえる方法を明かせ…… いいかこのまま貴様を拷問にかける事だって………」


「うるせぇよ……」


僕はその瞬間『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』を起動『束縛無き体躯(フリーダム)』の弱体化を解除。


そして…… 


「なッ!?」


束縛無き体躯(フリーダム)』を全開、右手をスライム化によって巨大化、それに硬化を加えて即席ギガトンハンマーを作成……


それを、男のすぐ右をかすらせるように…… 7400の怪力で打ち込んだ。


「へ……………?」


激しい轟音を響かせて、男の右後方数十メートルを吹き飛ばす僕の右手。


男は、大きな風穴が開いたジグソーを見つめて、ポカンと口を開ける。


呆然としている。


「これで分かっただろう…………?」


「へ………………?」


僕は『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』全開の…… マリア曰く「コールタールの瞳」と「異常者じみた表情」で男を見下す。


高いところで僕を見る男を見上げながら、虫を見るように見下す。


「僕がドラゴンを狩った…… この力で殺した…… 分かるか? これは交渉じゃねぇ、僕の、僕による、僕のための、てめぇらの買取サービスなんだよ」


そして、僕はふわっと飛んで、男の目の前にある執務机に降り立つ。


「さぁ…… いくらで買わせてやろうか」


僕は、男の頭を踏みつけながらそう言った。


――――


「で、では…… 神金貨10枚で宜しいでしょうか?」


「じゃあ、牙は10個だけですね…… まぁそちらの手持ちがないのなら仕方がない、残りは後日で」


その後の交渉は、非常に上手くいった。


何せ僕がニコニコしているだけで交渉はとんとん拍子に進んでいったのだから。


今回の交渉で、一気にめちゃくちゃ大金持ちだな。


「最後に、もう一つ牙をおまけでつけますから…… 頼まれて欲しい事があるんです」


僕は男の頭を踏みつけたまま、言葉を続ける。


「な…… なんでしょうか?」


僕の事を靴越しに見上げる男。


「あなたのギルドは奴隷商の最大手でしょう? そのコネクションで、この奴隷市への参加を取り付けて欲しいんです」


僕は紙を落として、男に渡す。


男は僕に後頭部を踏まれながら紙を受け取り、そして「こ…… これは」と驚いた顔をする。


「こ…… これは王国管理下の『やれよ、できるだろ?』」


僕は、男の言葉にかぶせるようにしてそう言う。


こっちは『悦覧者アーカイブス』で裏帳簿を見ているからしってるんだ。


この裏ギルド「べヒモス」はこと奴隷商に関しては、王国の管理下のものであっても干渉できる。


まぁ、物凄く面倒くさい作業ではあるのだろうけどね。


「僕が無理やりねじ込んで入るから、あなた達は正式な参加証を発行してくれるだけでいいです…… できますよね?」


僕は、再度男にニコリと微笑むのだった。


その笑顔に、少しだけ踏む力を増した僕の足に、すこし震えだす男。


そして男は……


「…………………………やらせていただきます」


本当のギルドマスターに許可を取るまでも無く…… そう言ったのだった。


よし…… これで準備は完全終了だね。


くふふ……



御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『ストーカー(Ⅹ)』


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ