25話 隠された真実
※ 食人表現あり
王国中央監獄所「セントラルケージ」 初代所長 エドワード・クライシスの密書
ここに「セントラル」に隠された一つの秘密を記しておく。
「セントラル」最下層、西側にある第16番倉庫。
その16番倉庫の真下。
更に地下5メートルほどの位置に、入り口のない密室がある。
そこに至る方法はただ一つ。
掘るのみである。
そして……
その密室にはある物が隠してある。
それは、悪魔を…………
――――
…と言う訳で僕は今、王国中央監獄所こと「セントラルケージ」の前に来ています。
「ねぇ、星屑」
「ん?」
僕と手を繋ぎながら横にいるマリアが、僕を見上げて声をかける。
「なんだかここ、警備凄そうだけど…… どうやって潜入するの?」
高く分厚い壁に囲まれ、要所要所に警備員が立つ監獄所。
さすがは王国で一番大きく、そして一番罪が重いものが収容される監獄所だ。
実にものものしい。
だが……
「どうやって? そんなの決まってるだろ」
僕はマリアを見下ろし、ドヤ顔を決める。
そして…
「正面から堂々とに決まってるじゃないか」
そう言ったのだった。
――――
「これで監獄の中に入れるようになるの?」
「うん、これはかなり強力な魔術だからね」
魔術発動の準備をする僕を、しゃがんで見つめるマリア。
ちなみにしゃがんでるのでスカートの奥のパンツが見えてる。
マリアは僕に見られてるのには気が付いてないみたいだ。
うん……
実にいい眺めだ。
今日は黒なんだな。
そうだ、今度赤を買ってあげよう。
あ…… でもやっぱ白かな?
それとも、ガーターベルトと言う選択肢に行くべきか?
てか、ブルマ売ってないのかな?
ブルマほしいなぁ、ブルマ。
でもまぁ……
それは一旦置いておこう。
今は魔術の試行行使に集中せねばな。
……これは古代からある呪いに近い魔術。
古い壁画を僕の『悦覧者』でピックアップし、解析したものだ。
僕の『悦覧者』は最近、「それが書物として意味を成すモノ」であればどんなモノでも解析し、僕に理解できるように表示してくれる様になった。
もの凄く使える機能へと成長した。
多分『悦覧者』は一番使ってるスキルだから、練度が上がって少し進化したんだと思う。
とにかくまぁ、そんな感じで僕はこの、古代の魔術を発見した訳なのだ。
この魔術は眠りの効果を発現する魔法だ。
その効力は実に強大で、なんと半径一キロ圏内の全ての人間を深い眠りへと誘う。
無差別に、強制的に、そしてきわめて深い眠りへと落とす魔術なのだ。
そして……
この魔術の凄いところは、これだけ強力な効果であるのに、さほど難しい術式や高度な技術を必要としないところにある。
つまり、材料さえ揃っていればきわめて簡単に行える魔術と言う訳なのだ。
では……
なぜ、こんな凄い魔術が今の時代で使われていないのだろうか?
それは…… その理由は二つある。
一つは、単にこの魔術自体が古すぎて、知っている人がいないこと。
そして…… もう一つは、その素材が特殊すぎる点にある。
この魔術に必要なもの。
それは、沢山の『夢幻虫』と少量の『黒霊水』。
そして……
「がはぁっ………ぅ… 『術者の心臓』……っと」
僕は自分の胸元から、自らの心臓をずるりと引きずり出す。
さすがにちょっと痛い。
痛いには痛いが…… 我慢できないほどじゃない。
胸元の傷も、空けたそばから塞がっていってるし…… うん、問題なさそうだな。
ともかく…… この術はそう言う術なのだ。
つまり、元来この魔術は術者の命と引き換えに発動する術であると言うことである。
まぁ、僕の場合、今は「魔核」があるから心臓を使用していないので何も問題は無いのだが。
てかむしろいらない。
「…………………………っ!!」
ん?
なんか、マリアが僕の事を見ながら硬直をしている。
あぁ……
まぁ、確かに目の前でいきなり心臓引きずり出すやつがいたら、そんな顔になるかもな。
「かふっ…… マリア、大丈夫だよ」
僕は吐血をしながら、マリアを心配させないように微笑む。
「ひぃ……………」
しかし、マリアは更に顔をこわばらせた。
うん……
良く考えたら、口から血をながして、自分の心臓を握りながらにっこりと微笑む男って……
かなりホラーだよね。
「マリア、落ち着いてね? とにかく何の問題もないから」
まぁ、とりあえず先に儀式を完成させちゃおう。
この取り出した心臓を、『黒霊水』に浸して、魔法陣の上において、そこに大量の夢幻虫を放つだけだ。
うむ…… 早速、魔法陣が輝きだしたな。
夢幻虫の輝きが強まって、七色の光を放っている。
そしてそれと同時に、不思議な魔法の波動が周囲にに広がっていっている……
この波動こそが…… 眠りの魔法だ。
よし、魔術は成功したみたいだな。
本来ならこの時点で執行者は死んでるから、本当は二人人間がいないと出来ない魔術だけど、僕はこの通り一人でも出来るから楽だ。
「さて…… それじゃあ堂々と潜入しますか」
これでここから半径一キロ圏内の人間は上空から地下に至るまで全て深い眠りについたはずだ。
もしかしたら、突然寝てしまった人たちに不思議がるやつもいるかもしれないけど……
まぁ、今は深夜だし、さほど深刻に考える人間はいないだろう。
もし、これで騒ぎになったらそのときはその時で対応するとしよう。
まぁ人間の中で一流と呼ばれるのがせいぜい300レベルだから、最早何匹来ようが僕の相手になんてならないけどね。
「さぁ、マリア、行くよ?」
「う…… うん」
僕はマリアの手を取って立ち上がらせる。
「ほ、ほしくず?」
「なに?」
僕の顔をまじまじとみるマリア。
「本当に大丈夫なの?」
「うん、だって僕、今心臓使ってないから」
僕はマリアにニコリと微笑んでそういう。
「………………………もう、星屑になにがあっても私驚かない」
マリアは僕の顔をしばらく見た後、視線を前にして真剣な顔でそう言い、一人頷くのであった。
「じゃあ正面から入るから、マリアにもコートを着せてあげるよ」
「コート? ………ぇ!? な、なにこれ!?」
僕は握っているマリアの手に『常闇の衣』を流し込む。
すると僕の手からマリアの体を覆うように、ゾワゾワと闇が広がっていく。
「うわぁ!? ちょ、なに!? こわぃ!!」
ちょっと半泣きでじたばたとするマリア。
逃げようとするマリアの手を、僕はぎゅっと握って離さない。
ああ…… なんか楽しいなぁ。
「くくく…… マリア、君を僕の闇に取り込んであげるよ」
僕はそう言って、マリアにニヤリと微笑む。
マリアはそんな僕の顔をみて、はっとし、そして絶望の表情を浮かべる。
「ひゃぁぁ……… いつかこうなると思ってたぁ………」
……マリアはがたがたと震えながらへたり込み、全てを諦めたようにしくしくと泣きだすのであった。
ああ…… マリアの泣き顔、マジ萌えるんですけど。
たまんないんですけど。
「……って、言うのは冗談だけどね」
でもまぁ……
今はこれくらいにしておこう。
これ以上やると歯止めが利かなくなる。
マリアを犯しながら喰らいたくなってしまう。
ああ……
マリアの内臓はきっと暖かくておいしんだろうなぁ……
…………じゅるり。
でも…… だめだ。
だめ、だめだ…… マリア大切だから。
喰べちゃダメだ。
「ほら、マリア? いつまでも泣いてないで目を開けてごらん?」
「ふぇ……?」
マリアは目をぐしぐしとしながら開く。
「え? これ…… ローブ?」
マリアは自分の体を見回してそう呟く。
マリアの体には真っ黒なローブに変化した、僕の『常闇の衣』が纏われていた。
「これでマリアも僕と同じ様に、周りに認識されにくくなったんだよ」
僕は、僕の体にも纏わせた『常闇の衣』を見せ、マリアを立ち上がらせる。
これで、「セントラルケージ」の入り口に設置してある、魔動監視装置にも記録されないはずだ。
「さぁ、いくよ」
僕はそう言ってマリアの手を引っ張る。
マリアはそんな僕に手を引かれて、ちょっと放心したままついてくる。
そして、数歩あるいた後、小さな声で……
「こ…… ころされるのかとおもった」
……と小さくつぶやいた。
そんなマリアを見下ろして、僕はにこりと微笑む。
そして……
「安心していいよ、マリア」
「え……?」
僕はマリアの瞳を熱く見つめて……
「僕がマリアを殺すときは…… 多分マリアが可愛すぎて殺す時だから」
見つめてそう言ったのだった。
「……………………………………」
僕に手を引かれながら、僕の事をぽかんと無言で見つめるマリア。
「はぁ………… 何が安心なのさ」
そして、深い深いため息を吐く。
「もぉ…」
マリアは僕の事を呆れたようにして見上げる。
「好きにしてよ」
そして、僕の手をキュッと強く握り返すのであった。
――――
「よし、じゃあマリアは地下5階にある倉庫から、精霊石を全部外に運びだしてね?」
監獄所の内部にもぐりこんだ僕とマリア。
僕はマリアにマルスを貸し出し、そう命令する。
「わかった」
マリアはそんな僕を見上げてこくりと頷く。
「じゃあ、よろしく」
さて、僕はまず最下の独房へ…………… ん?
「ちょっと………… 星屑」
立ち去ろうとする僕の服の裾を、マリアが掴んで引き止める。
「どうしたの?」
僕は振り向いて、再びマリアを見下ろす。
「今回の………………… ごほうびは?」
マリアは…… 頬を少し赤くして、そっぽを向きながらそんな事を言う。
ああ…… こいつはもう。
ほんとにもう。
「ほしいの?」
僕はニヤニヤとしながらそう言う。
「……………………………ほしい」
マリアはちょっとむくれながら素直にそう言う。
くふふ……
いいね、素直な娘は好きだよ。
「じゃあ今夜はマリアを撫で撫でしながら一緒に寝てあげるよ」
僕はマリアの頭をなでながらそう言う。
「…………がんばる」
マリアは撫でられながら僕を見上げ……
そしてちょっとだけにへっと笑ったのだった。
「じゃあ…… 行ってくるね星屑」
マリアはそう言ってマルスと共にかけてゆく。
ああ……
やっぱマリアかわいいわぁ。
さて……
じゃあ僕のほうも始めるとしようか。
僕が今回この「セントラルケージ」に来た目的は二つ。
一つは最下層の16番倉庫にある例のものを回収すること。
そして、もう一つは……
僕の持つスキルにしてグールの固有スキル、『狂化祭』を完成させる為に………
「囚人達を喰わないとなぁ………」
――――
「ぎゃあああああああああ!!」
うん、生の人間は初めてだなぁ。
「あ、足があぁ!! いぎゃ!? いたああああああああ!!!」
やっぱ、何でも新鮮が一番だね。
この、アキレス腱のこりこりしたところが美味しいのなんのって。
「あぐぅ……ぇ!? ぎゃ…… ぁぁああああああ!! 痛い痛い痛いいたいぃぃ!!!!」
太ももは柔らかいなぁ……
舌でとろけるよ。
「あがぁ!! ごぼぉ…… かっ……! はぁ……ッ 何でこんな…… なんで私喰われてるのぉ!!」
さて、次はお腹だ。
あぁ…… やわらかぁい。
モツがくにゅくにゅしてて美味しいなぁ。
「あ…… ぎゃ……ぁ が……… あッ…………あ ぁ……」
心臓あったかいなぁ。
ぴくぴくしてて…… ああ、舌の上でおどるよ。
「…………………………………ぁ」
おぉ…… 人間のミソって、意外と美味しいなぁ。
とろっとしてて、凄くジューシーだよ。
「ばきぃ…… ごりぃ…… くちゃ、くちゃ、んくっ……ぷはぁ………… ご馳走さまでした」
ああ、新鮮な女の人は美味しいなあ。
本当に最高だよ。
あ…… そういえば、生きてる人殺したのは今のが初めてだな。
まぁ………………………… こんなもんか。
「さて…… 次の独房へ行こうかな」
次の独房はと……
ええと…… 『悦覧者』で犯罪記録を検索。
ふむ、こいつは……
ええと、強姦魔で、15人の少女を魔法で誘拐し、自宅でレイプをした男…… と。
誘拐した娘は全て強姦後に殺害する凶悪犯。
しかし親である、貴族のベルモンド伯爵の計らいで死刑にはならない………… なるほどね。
くふふ……
これは次も美味しく食べれそうだな。
さすが監獄所の最下層。
クズしかいないなぁ。
「さて、これでコイツの犯罪歴は全部か……」
僕は…… 移動した先の独房で、一人寝ている男を見下ろしニコリと微笑む。
ああ、料理は素材の説明を受けるとより美味しく感じられるというけど……
それは本当だね。
このクズは、とても美味しく食べれそうだよ。
さぁ……
「いただきます」
――――
――――
「げふ…… あぁ、腹重いなぁ」
僕は地面を拳で掘りながら、そんな事を呟く。
うん…… 全部で116人いたからなぁ。
さすがに短時間で詰め込みすぎたか。
ちょっとだけ苦しい。
「でも、もうすぐ終わりそうだし…… これ終わったらさっさと帰ろう」
今日はもう宿屋でマリアとイチャイチャしながら寝るんだ。
たまにはめちゃくちゃ甘甘にしてやるのもいいかもな。
マリアは馬鹿だから、甘やかしたら甘やかした分だけ甘ったれて、ふにゃふにゃするんだろうなぁ。
くふふ……
超楽しみだな……… ぉ?
「おぉ……… 本当に部屋があった」
僕が拳を突き立てた先が…… ぼろりと崩れる。
そして崩れた壁のその先には、小さな石造りの小部屋があった。
その部屋は当然真っ暗だったが、『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)』を持つ僕には全てがクリアに認識できる。
…………その部屋の真中には、黒い木箱が置かれていた。
そして、その中には………
「見つけた……………」
僕は、真っ黒な…… だけど中心だけが深紅に輝く、不思議な石を手に取る。
そしてそれを握り絞め、ニヤリと笑う。
「アルドレデシアの魔石…………… これで……」
これで、必要なモノが……
「全て揃った」
※ 感想皆様ありがとうございます。
全て読ませていただいております。
ただ全部読んでいると、リアルに書く時間が削られるので、そのうちまとめて返しますので悪しからず。
本当にありがとうございます。
嬉しいです。
御宮星屑 Lv1069
【種族】 喰屍鬼 スライム
【装備】 なし
〔HP〕 3050/1050(+2000HP分のスライムで構成)
〔MP〕 510/510
〔力〕 5845(『魂魄支配』により1.5倍まで引き出し可能)
〔魔〕 0
〔速〕 500
〔命〕 5345
〔対魔〕0
〔対物〕500
〔対精〕600
〔対呪〕300
【契約魔】
マリア(サキュバス)
【使い魔】
イノセントスライム ミッドナイトスライム 内臓スライム(×2000) マッスルスライム 色とりどりスライムセット100個入り
【称号】
死線を越えし者(対精+100) 呪いを喰らいし者(対呪+300)
悪鬼のごとく腐りきった者(グール化 HP+1000 MP+500 力+500 速+500 対物+500 対精+500 )
龍殺し(裏)
【スキル】
『悦覧者』 『万里眼(直視)』 『ストーカー(Ⅹ)』
『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』 『バイタルコントロール』
『魂魄支配』 『味確定』 『狂化祭』
『絶対不可視殺し』 『完全体』 『常闇の衣』