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ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ  作者: ユウシャ・アイウエオン
第二章 新たなる自分への転生(人間やめよう)
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23話 立ち向かうだけが勇気ではない

「よし…… 着いたっと」


何度目かの超跳躍を経て、僕は大陸の果てへとたどり着く。


人間が住まい、中央に王国をいだく「カレゼスト大陸」の最西端……


人間が住める環境の限界点。


ここより先…… 


この断崖絶壁の下、クレードヴァール海峡を隔てて、向こう側の崖から始まる大陸……… 「ゼルデント大陸」。


それこそが魔界と呼ばれる、魔人たちの住まう世界である。


ここはこの「カレゼスト大陸」の端と、向こうの「ゼルデント大陸」の端が隣接する場所。


大陸と大陸の終わりと始まりが向かい合う場所。


それがこそがここ、通称「クレードヴァール渓谷」である。



「いやぁ…… 壮大だなぁ」


僕は当たりに広がる壮大な景色を一望してそう呟く。


例えるとしたら、下が海のグランドキャニオンとでも言えばいいのだろうか?


まぁ、とにかく凄い。



「で…… あれが今回のターゲットか」


僕は『万里眼ばんりがん(直視)』を用いて、向こうの崖を見やる。


するとそこには、無数に飛翔する中型のドラゴンの姿があった。


「おお…… 強そうだなぁ」


そのドラゴンを一言で表すとすれば、「黒」。


黒い体、黒い角、黒い牙、黒い羽の竜。


あれこそが、「群がる絶望」…… 黒竜ハイドドラゴンだ。


「意外とでかいんだな……」


その平均レベルは、およそ1200……


単体でも十分に脅威といえるハイドドラゴン。


ただでさえ厄介なハイドドラゴンだが、コイツには更に厄介な特性が二つもある。



一つは攻撃の最に群れを成して攻撃を仕掛けてくる点。


このドラゴンは攻撃の際に決して一体では仕掛けてこず、敵に対して群がるように集団で攻撃をしてくるのだ。


どんな敵に対しても、常に集団でリンチのごとく攻撃するその様は正に「群がる絶望」の名を冠すのに相応しいといえよう。



そしてもう一つの厄介な点がこのハイドドラゴンの固有スキル……… 『迷宵闇の衣まよいやみのころも』だ。


このスキルは、所謂、認識阻害スキルと言う奴である。


ハイドドラゴンがこのスキルを発動させると、ハイドドラゴンの体に黒いモヤの様な物が発生する。


そしてこのモヤが発生すると、ハイドドラゴンの実態が掴みにくくなってしまうのだ。


何でもこのモヤこと『迷宵闇の衣まよいやみのころも』は、強力な知覚阻害の魔法らしく、視覚はもちろん魔法での捕捉ですらあやふやにしてしまうスキルなのだとか。


とにかくこちら側の攻撃が極めてあたりにくくなってしまう、非常に厄介な代物であるのだ。



つまりまとめると、ハイドドラゴンとは捕捉しにいくリンチ集団と言う、きわめて厄介な相手だと言う事だ。


ぶっちゃけ、これは本当に厄介である。


集団を相手にするには、こちらも集団で臨むか、遠距離から数を減らしていくしか方法はない。


しかし、ぼっちの僕にそんな集団が用意できるわけもないし、かといって遠距離から攻撃しようにも『迷宵闇の衣まよいやみのころも』の認識阻害が働いて上手く狙えない。


つまり僕一人で戦うには非常に厄介…… というか無理な相手と言う事だ。







「くふふ……」


だけどまぁ…… 戦うんだけどね。


「よっ!」


僕は再び大ジャンプをして「クレードヴァール渓谷」から5キロほど距離をとる。


「よし…… リサーチ通り、いい視界だ」


僕は小高い丘の上から、遠くに見える断崖絶壁を見やる。


うん…… ここからでも「クレードヴァール渓谷」ははっきりと捕らえられる。


そしてハイドドラゴンの姿も良く見える。


「さて…… さっそく殺りますか」


僕は移動の途中の山で拾ってきた、大量の鉄鋼石を握り絞める。


そして、大きく振りかぶり……


「いけ……」


それを思い切り投げた。


僕が投擲した鉄鉱石は、「パァン」と言う空気を破裂させたような音と共に射出され、遠くに見えるハイドドラゴンの一匹をいともたやすく貫いた。


そう、相手が敵を認識する前…… つまりは『迷宵闇の衣まよいやみのころも』を発動する前に一匹だけ捕捉するのなら、僕の【力】のステータスを持ってすれば容易いのだ。


しかし…… ここから先は難しい。


何故なら、既に全てのハイドドラゴンが『迷宵闇の衣まよいやみのころも』を発動し…… そしてその全てのハイドドラゴンが僕に向かって飛来し始めているからだ。


このままでは後数秒もしないうちに、ハイドドラゴン達がたどり着き、僕はいとも容易く食い殺されるだろう。


ハイドドラゴンは動きも速いし…… そして『迷宵闇の衣まよいやみのころも』があるから狙いづらい。


そして数も多い。


僕に勝つすべはないのだ。





まぁ…… 勝つつもりならねw


「おー、群がってるなぁ」


僕は、先ほどまでいた小高い丘から5キロほど離れた別のポイントでそう呟く。


つい数秒前まで僕がいた場所のあたりをうろうろと飛び回る竜達を、ニヤニヤと見ながらそう呟く。


そう……


つまり、僕は逃げたのだ。


投石をした直後、間髪をいれずに全力ダッシュしてその場を離脱……


そしてあらかじめ決めておいたこの、別のポイントに移動したのだ。


「くふふ……」


そう『迷宵闇の衣まよいやみのころも』には欠点がある……


それは捕捉力の低下だ。


まぁ、相手からの補足が難しくなるのだから、自分自身の捕捉力が下がるのもある種頷ける。


そこを補うための集団攻撃でもあるのだろうしな。



……と言ってもまぁ、それほど低下する訳ではないらしい。


普通に戦う分には何ら支障は無い程度の低下なのだとか。


ただ……


「数キロ離れた奴の捕捉は難しいよね? …………くふふ」


しかも、ハイドドラゴンは頭が良い訳じゃない。


その野生と獰猛さは脅威だが、それで論理的に敵の居場所を導き出す事など出来る訳ではない。


所詮は動物。


低脳なけだものだ。


「くふふ……」


そして僕が逃げたこのポイントには…… あらかじめ鉄鋼石が用意してある。


つまり……


「よし…… そろそろ警戒をといたか」


僕はハイドドラゴンが『迷宵闇の衣まよいやみのころも』を解除して、巣に帰ろうとするのを確認すると、再び鉄鉱石を握る。


そして……


「さぁ…… 一匹ずつじわじわと削っていこうねぇ…… くふふ」


僕は遠くからまた、ハイドドラゴンを狙撃するのであった。


「よし…… 早く逃げよ」


そして間髪いれずに全力ダッシュ。


更に、あらかじめ仕込んでおいた別のポイントへと逃げさる。


そして、この5キロ間隔で仕込んである10箇所の狙撃ポイントをローテーションして、じわじわじわじわハイドドラゴンをなぶり殺していくのだ。


「ああ…… 楽しいなぁ」


こう言う殺しかたってほんと楽しい。


このもて遊ぶ感がなんともいえない。


ああ、興奮してきた。


「くふふ…… レベル上げって楽しいなぁ」


こうして僕はレベル上げを丸一日繰り返したのだった。



自分で書いていてなんだけど、星屑先輩は本当にゲス野郎だなぁ…… って思う。





御宮星屑 Lv656


【種族】 喰屍鬼(グール) スライム


【装備】 なし


〔HP〕  3050/1050(+2000HP分のスライムで構成)

〔MP〕  510/510


〔力〕 3160(『魂魄支配(オーバーソウル)』により1.5倍まで引き出し可能)

〔魔〕 0

〔速〕 500

〔命〕 2660

〔対魔〕0

〔対物〕500

〔対精〕600

〔対呪〕300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【使い魔】


イノセントスライム ミッドナイトスライム 内臓スライム(×2000) マッスルスライム


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


悪鬼のごとく腐りきった者(グール化 HP+1000 MP+500 力+500 速+500 対物+500 対精+500 )


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『ストーカー(Ⅹ)』


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』 『バイタルコントロール』


魂魄支配(オーバーソウル)』 『味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)

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