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ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ  作者: ユウシャ・アイウエオン
第二章 新たなる自分への転生(人間やめよう)
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19話 過去の自分とのさよなら

ロベルト・デイモス著 「悪魔契約事項」 より抜粋


~悪魔と高位の契約を結ぶ事は、その悪魔と魂で繋がる事と同義であり、つまりは契約者の魂に魔を宿すと言うことである………


――――


「なぁ、星屑」


「なんだい? マリア?」


夜の平原。


僕は今、マリアと一緒にガヴィード平原に向かっている。


僕が道を歩き、マリアはそんな僕の背中におぶさっている。


「私はもう疲れたよぉ…」


マリアは不機嫌な顔をして、僕の首元をぎゅうっと絞める。


うむ、胸が背中に押し付けられてて気持ちいい。


「ほぉ、歩いているのはずっと僕なのに疲れたというのかい、君は?」


僕はおんぶをして抱えているマリアの太ももに、爪を思い切り立ててそう言う。


「ひぅ!! ぁ……っ… つ、疲れたものはつかれたんだよぉ」


マリアは、その痛みに少しだけ涙を浮かべながらも、顔を赤くしている。


「じゃあ、歩くか? ここで投げ捨ててもいいんだけど?」


僕はそんなマリアの顔を横目で見ながら、冷たくそう言い放つ。


「うぅ……!! ちょっと休憩しようっていってるんだよぉ!! この馬鹿ぁ!!」


マリアは、僕に冷たい視線で見られながら更に顔を赤くしてそう喚く。


「ほぉ…… ご主人様に馬鹿とはいい度胸だな」


僕はそう言って、首に回されていたマリアの腕に噛み付く。


それも、割と強く、歯型が残る程度に。


「ひゃぃう……っ!! か、噛むな馬鹿ぁ!!」


体をビクリと震わせて、顔を真赤にするマリア。


悪態をつきながらも、その表所はどこか嬉しそうだ。


うん……………… まぁ、なんてことは無い。


つまりマリアは、僕に苛めて欲しくて反抗的な態度をとっているのだ。


そんなエロゲキャラを見たことがあるので多分間違いないと思う。


まぁ、間違いだったとしてもどの道マリアは僕の所有物だ。


僕の好きに楽しむさ。


「休憩はしない…… このまま行くよ」


「むぅ………」


僕がそうぴしゃりと言うと、マリアはむくれながらも黙る。


契約のあの時以来。


マリアは何だかんだ僕に従順だ。


まぁ多分、あの後、抜かずの24時間が相当効いたのだろう。


完全に上下関係を刷り込んだ。


しかし…… 24時間とか凄いな、僕の性欲と『バイタルコントロール』の力は。


いやぁ…… 僕も童貞だったからなぁ。


青かったよ、僕も。


まぁつい先日の事なんだけどね。


「うぅ…… 足腰立たないの、星屑のせいなのに……」


僕の背後でマリアが文句をたれる。


うん、無視だ。


そして僕はそのままガヴィード平原へと向かったのであった。


――――


「お…… いるいる」


「ひぃ……! な、何アレ!?」


僕等が、ガヴィード平原に着くとそこには数体の黒く蠢く影が。


「な…… ほ、星屑!! なんなんだよあれぇ!! お化け!?」


ちょっと震えながら僕にしがみつくマリア。


おいおい悪魔…… お化け怖がってどうする。


「あれはゾンビだよ」


僕はそんなマリアに、小さくそう答えた。


そう…… あれはゾンビ。


僕が殺して鎧皮を剥いで放置した、ガヴィードメタルオーガの成れの果て。


オーガゾンビだ。


僕が殺したオーガは確か100は越えてたはずだけど…… どうやらその中でゾンビに成れたのは6体くらいらしい。


まぁ、一匹いれば十分なんだけどね。


「マリア…… あの中でどれが一番弱い奴か分かるか?」


「え…… た、多分だけどあの一番ちっちゃい奴じゃないかなぁ」


ふむ、やっぱそうだよな。


あいつ、両足無いから動きも遅いし。


よし…… じゃあまず、あいつ以外を殺そう。


「マリア…… ちょっと降りてろ」


「え……? う、うん」


僕はマリアを下ろし、そして街で買ってきた鉄くずに聖水を振り掛ける。


そして……


「よっ……!」


僕はそれを軽くゾンビへと投げる。


その直後に、「ボッ」っと言う風きり音と、「パァン」と言う破裂音が響いた。


そして…… 両足の無いオーガゾンビ以外の、5体のオーガゾンビが一瞬にして四散したのだった。


うん…… 脆いな。


ゾンビ化してるとはいえ、最早、硬い皮をはがれたただのオーガ。


生前と同じでレベルは高くても、その防御力は半分以下だ。


先制攻撃さえ出来れば怖い相手じゃない。


「え………」


ポカンとして、その四散したゾンビを見つめるマリア。


「へ……?」


そして、ゆっくりと僕を見上げるマリア。


「星屑……… ほんとに強かったんだ」


顔を少し赤くしてそう呟くマリア。


え?


ほんとにってどういう事だい?



「まぁいいか…… とにかく、ここからが本番だ」


僕はそう言って、残る一体のオーガゾンビへと近づく。


「あっ…… 待ってよ星屑!」


そんな僕の後を追うマリア。


「くふふ…… さぁ始めようか」


僕はオーガゾンビの攻撃範囲へと入る。


オーガゾンビが僕を捕捉し…… そして僕にズリズリと近寄る。


僕はそんなゾンビに更に近づく。


「ちょ!! 星屑!? それ以上近寄ったら噛まれちゃうよ!?」


少し離れたところでそう叫ぶマリア。


噛まれちゃう? 何を言ってるんだ。


僕は……


「噛まれるためにここにきたんだよ」


迫り来るオーガゾンビにがぶりと腕を噛ませた。


「ぅぐ!? ………っち、やっぱ痛ぇ!!」


僕は、右手を噛まれた直後に、左手で思い切りゾンビオーガの頭を吹き飛ばす。


そして聖水を投げつけて止めを刺した。


「ちょ!! 星屑!! え!! なんで噛まれたの!? ええ!? このままじゃ星屑がゾンビになっちゃうよ!? なんで!? 馬鹿なの!?」


僕が噛まれてすぐ、マリアが僕の元へと駆けつけて喚く。


「うぐぅ……」


しかし僕は、ゾンビの呪いで体中が熱くなるのを感じ、地面にうずくまる。


ゾンビに噛まれるとゾンビになる。


それは冒険者にとって周知の事であり、同時にとても気をつけなくてはならない事だ。


何故なら、この世界のゾンビに噛まれると数分のうちにゾンビ化してしまい、しかも一度ゾンビ化してしまったらもう二度と人間には戻れないからだ。


対処方はただ一つ。


噛まれた直後に聖水を飲み込むことだけ。


「ほ、星屑!! 聖水飲みなよ!! ほらぁ!!」


「ぐ…… いい……」


しかし僕は、その唯一の対処法を拒絶した。


「なんで!?」


それに驚くマリア。


「ぐぅ……」


そして僕の体のゾンビ化が始まる。


体が熱く狂気に犯され、精神が崩壊する。


体は次第に冷たく硬くなり…… そして生気が失われてゆく。


そして緩慢な動きで起き上がり、知性の宿らない瞳で闇夜を徘徊するのだ。


ゾンビとして……… これから一生。


御宮星屑は……


今…… 死んだ。


「ほ、星屑? ………………うそ」

























まぁ、それは嘘なんだけど。


「ん、よし!」


「……………………へ?」


僕はスッと立ち上がる。


うむ…… 体は冷たいけど、硬くはない。


意識もはっきりだ。


うん、上手くいったみたいだな。


「え…………… どういう事? ゾンビにならなかったの?」


マリアがポカンとして僕を見上げる。


「ん? ゾンビだよ?」


僕は普通にそう返す。


「え? ………え? で、でもゾンビって腐ってて、うーとかあーとか言って動きが鈍いアレじゃないの?」


困惑したようにして話し出すマリア。


「あー まぁ、そうなんだけどね…… とにかく僕はそこらへん大丈夫なんだよ、凄いから」


僕はそんなマリアに適当に返す。


てか、説明するのがめんどくさい。


「そ、そっか…… だ、大丈夫なんだ…… ほ、星屑は凄いんだな」


そんな雑な説明で納得するような、若干頭が弱い子に説明するのは正直めんどくさい。


ましてや……


魂レベルの契約を悪魔とすることで、魂に魔を宿らせる。


それにより、「魔」そのものの対性…… と言うか適合性を得て、ゾンビ化による精神の魔物化にも適合し、逆に支配したなんて事は……


まぁ、説明しても無駄だろう。


「あ…… でもこの後体腐ってくるんじゃないの? さ…… さすがに腐った体に犯されるのはイヤなんだけど」


マリアがそんなことを言いながら、心配そうに僕を見る。。


む…… なんだそのマニアックなシチュエーション。


ちょっと、見てみたい気もするけど……


「いや、大丈夫腐らない、僕凄いから」


そう、僕は腐らない。


ゾンビの腐敗ってのは、魂が変異化した事による、魂と肉体のリンク切断によるものなんだけど。


僕はこの通り、肉体が半分スライムで、しかもそのスライムは僕の使い魔な訳で。


まぁ、つまり僕の場合は魂と肉体のリンクが切れても肉体を生かしておけるって事だ。


その代わり、肉体が腐ったそばからスライムで再生するから…… 僕が全スライムになる日も多分近い。


「そっか…… なら良かった」


それを素直に信じて安堵するマリア。


うん、やっぱ一番弱いサキュバスだからおつむが弱いんだなぁ。


人とか騙せなさそう。


まぁ、基本的に下級最下のサキュバスなんて一端の魔法使いからしたら、ヤリ捨てして何ぼみたいらしいしなぁ。


だけど、僕は馬鹿な子大好きだからね…… ヤリ捨てなんてしないよ?


ずっと可愛がってあげるからね。


一生…… くふふ。


「ひっ…………」


びくっと震えるマリア。


「どうしたの?」


「いや…… なんか今、嬉しいような、人生のおしまいの様な…… 良く分からない悪寒が走った」


悪寒て…… 失礼なやつめ。


まぁ、嬉しいならいいけど。



「さて…… じゃあ次は墓場に行こうか」


僕は、体を一通り動かして調子を確認するとマリアを見てそう言う。


「え…… 墓場?」


「そう、墓場」


僕はマリアをひょいと荷物のように担ぎ上げる。


「きゃ…!? ちょ…… 人を荷物みたいに…… って!! お尻撫で回すなぁ!!」


僕に肩で担がれながら、じたばたと暴れるマリア。


うるさいなぁ。


「マリア…… 飛ばすからしっかり捕まってろよ」


「え?」


僕はマリアにそういった直後に…… 「ドンッ!!」と地面を蹴り、そして高速で走り出す。


「ぅえええええええええええええっ!?」


マリアの悲鳴を置き去りにして、僕は凄まじい速さで野を駆け巡る。


夜のひんやりした風が、高速で頬をなぜる。


「くふふ…… これは想像以上だな」


この人間離れしたスピード…… 


これこそがゾンビの…… いや、知性あるゾンビの真の力。


生無き肉体を操る、強力な魂の力『魂魄支配オーバーソウル』。


自分の肉体を、好きなように動かし、完全に操る力だ。


この体には呼吸もいらない、血もいらない、汗もでない、疲れない。


しかもスライムだから痛まない!!


そして何よりこの力は…… 


僕の2610ある【力】のステータスを限界以上に引き出し使いこなせるのだ!!


ああ凄い…… これはマジで凄い。


肉体の操作が完全にイメージ通りだ。


「ああ…… ついに人間、完全にやめちゃったなぁ」


だけど…… 割と良い気分だ。


そして……


「まだこれで終わりじゃないよ……」


くふふ…… お楽しみはこれからだ。



御宮星屑 Lv532


【種族】 ゾンビスライム(スライムゾンビではない)


【装備】 なし


〔HP〕  1050/50(+1000HP分のスライム内蔵)

〔MP〕  110/10(+100ゾンビとしての魔力)


〔力〕 2660(『魂魄支配(オーバーソウル)』により1.5倍まで引き出し可能)

〔魔〕 0

〔速〕 0

〔命〕 2660

〔対魔〕0

〔対物〕0

〔対精〕100

〔対呪〕300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【使い魔】


イノセントスライム ミッドナイトスライム 内臓スライム(×1000) マッスルスライム


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』  『ストーカー(Ⅹ)』


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』 『バイタルコントロール』


魂魄支配(オーバーソウル)


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