2話 何事も行動を起こさねば始まらない。
「さて……」
僕等がこの世界に来てから、一ヶ月があっと言う間にすぎた。
僕たちはこの世界に召喚された直後、王国に保護をされ養ってもらっている。
正確には保護をしてもらっているのは勇者の鳳崎とその取り巻きの三人だけで、僕は鳳崎に追い出された感じな訳なのだが。
「わかるか? 選ばれたのは俺らだけなんだよ…… お前はどこに言ってもカスなんだよ」そう言って僕だけ蹴り飛ばして追い出した、鳳崎の素敵な笑顔はきっと生涯忘れないだろう。
まぁ、僕があえて王国にも『悦覧者』の存在を隠したからなんだけどね……
しかし、自分で追い出しておいてわざわざ僕をいじめに来るとか、本当に彼は素敵な性格をしている。
とにかく、僕は城から追い出された訳なのだが、その際に王国お抱えの魔術師にして勇者召喚を成功させた人、ミルカルト・リエラさんが僕に一枚の金剛貨を持たせてくれたのだ。
金剛貨はこの世界において大雑把にだけど100万くらいの価値がある。
ミルカルトさんは「私のお金なので気兼ねせず使ってください、私のせいで…… 本当にすみません」と言ってくれた。
100万くらい、きっとミルカルトさん程の稼ぎの人なら、はした金と言うわけには行かないだろうが、さほど大したお金ではないのだろう。
だから遠慮なく頂いておく。
お金で解決しようと言う、いかにも権力者然としたその態度は好きじゃないけど…… でも善意は善意だ。
彼女はとても優しい。
いつか絶対に恩を返そう。
ありがたく頂きます。
ともかく……
僕はそれから一ヶ月間。
王国の中で一番安い宿に素泊まりで連泊している。
この宿は素泊まりで一泊、灰銀貨一枚…… およそ1000円だ。
飯は近くの露天で果物や干し肉を買ってそのまま食べた。
風呂は街外れの川まで行って体を洗った。
三日に一回くらいのペースで。
そんな生活で僕が何をしていたか。
鳳崎が魔法学校に行って、戦闘術を学び、あっと言う間に90レベルまで成長した間に僕は何をしていたのか。
そう……
僕はずっと部屋に引きこもっていた。
そして……
『悦覧者』で沢山の情報収集をしていたのだ。
『悦覧者』の使い方は非常に簡単。
脳内でキーワードを浮かべれば、そのキーワードがヒットする、世界に現存する書物の文面のタイトルが脳内に羅列されるのだ。
そしてそのタイトルを選択すればその文面の内容が僕の脳内に表示される……
まぁつまりネット検索と同じだ。
ただ……
ネット検索だとアクセス数が高い有益な情報の順で表示されるけど、『悦覧者』は検索した単語を、単純に多く使っている文面から順に表示していくから、情報の選別がとても大変なのだ。
検索をした単語を多く使っているからと言って、それが有益な情報であるとは限らない。
一つ一つ閲覧して選別していくのはとても大変な作業なのだ。
そして有益な情報があれば、すぐにメモ書きをする。
『悦覧者』がどんな能力か把握するために色々と試してみたのだが、この能力はたとえただの何気ないメモ書きだろうが、国家重要機密の禁術書だろうが漏れなく検索対象に入れる。
つまりそれが書面であれば、全てがこの力の検索対象なのだ。
そして、その書類が破棄された場合…… つまりはこの世にその文面が存在しなくなった瞬間に、検索対象から除外され記録も残らない。
だから、検索して手に入れた有益な情報はすぐにでもメモをして自分のものにするしかないのだ。
ああ…… コピペ能力が欲しい。
あ、ちなみにこの能力はありがたい事に魔力の消費はない。
ただ体力と精神力がそこそこ持っていかれる。
ともかく、僕はこうしてこの一ヶ月。
ありとあらゆる有益な情報を得た。
そして、ある程度の道筋を立てた。
強くなり、鳳崎を俺TUEEEEEする為の道筋を立てたのだ。
とりあえず今後も情報収集を続けるのは、悪魔学、魔獣学、降魔術、契約術識…… そして呪術だ。
特に呪術は率先してやっていかなければならない。
今後多分に必要になるのだから。
よし……
ともかくとして、当面必要な知識はすでに出揃っている。
そしてまずはレベル上げが必要だ。
いくら何でも1レベルのままでは何も出来ない。
鳳崎君に復讐してやることが出来ない。
まずは30レベル。
この世界の一般成人男性と同レベルになるまで、一気に行くぞ。
必要なものは、さっき街の薬屋で買ってきた、食べると体温を高める効果があるメラリ草(セット価格6灰銀貨)と、錬金工房で買ってきた精霊水(2リットル2灰銀貨)だ。
そして…… 霧吹き。
目指す場所は僕が良く体を洗いに行くいつもの河原だ。
御宮星屑 Lv1
【種族】 人間
【装備】 霧吹き
〔HP〕 40/50
〔MP〕 10/10
〔力〕 0
〔魔〕 0
〔速〕 0
〔命〕 0
〔対魔〕0
〔対物〕0
〔対精〕0
〔対呪〕0
【称号】
なし
【スキル】
『悦覧者』