18話 新たなる仲間との邂逅
王国から少し離れた平原。
「さて…… 始めようか」
僕はそこで一人そう呟く。
僕の足元には丸一日かけて書いた魔法陣。
この魔法陣で僕はこれから悪魔召喚を行う。
僕自身にこういった悪魔召喚系のスキルは無いが、今この場は比較的悪魔召喚のしやすい場所に仕上がっている。
なぜならここには、つい先日大量虐殺した、ガヴィードメタルオーガの怨念渦巻く黒い血液を大量にぶちまけた場所だからだ。
ちょっと難しい悪魔誕生の契約だけど、魔法陣は一番上等なもの書いたし、それに誕生の狙いが下級悪魔の最下だからまぁスキルなしでもいけるだろう。
「いくぞ……」
そして僕は魔法陣に魔力を流し込む。
僕自身の魔力は少ないけど、この手の召喚契約は元々悪魔側が人の魂を搾取するためのものだ。
召喚側に魔力は余り必要ない。
「お…… ぉぉ…… すげ…」
僕が魔力を流し込んですぐ。
魔法陣が不気味に発光しだした。
紫と黒が混じったような…… 「不吉」を濃縮したような色の光が、うねうねとしながら魔法陣から溢れでてくる。
正直キモい。
「貴様か? 我を呼び出したのは……」
そしてそのうねうねした光が、魔法陣の上で絡まりあって、固まって……
やがて悪魔の姿へと変わる。
なんというか……
「そ、そうです……」
ヤギの頭で、真っ黒なムキムキで、でかい蝙蝠の羽で…… なんかザ、悪魔って感じの悪魔だった。
ふむ、これが「上級悪魔」の「中層」か……
確か文献によれば、推定2000レベル。
今の僕の【力】のステータスなら戦えない事はないけど……
1000レベル越えはスキル数が尋常じゃないって言うし、何より悪魔は呪いや精神攻撃を得意としている。
僕が真正面から戦って、少しでも勝算がある相手じゃない。
「よ、呼び出しに応じて頂き、ありがとうございます」
なので、完全に下手に出ておこう。
取るにたらない弱者だと思わせておこう。
変に意識されたら困る。
「ふむ…… して小僧」
悪魔が腕を組み、僕を見下ろして声をかける。
「貴様はどのような悪魔が欲しいのだ?」
悪魔は禍々しいオーラをたゆらせ…… 底冷えのするような声でそう言う。
それに僕は……
「い、淫魔を…… 下級の最下で良いのでサキュバスを僕に下さい」
そう答えたのだった。
――――
「ふむ…… では貴様に下級サキュバスの最下クラスを作る…… それで良いな?」
「は、はい…… それでお願いします」
上級の悪魔は下級の悪魔を作りだすスキルを持つ。
上級悪魔を召喚して、「対価」と引き換えに下級悪魔を生み出してもらう。
そしてその、生まれたての悪魔と契約をする
これこそが悪魔誕生の契約召喚だ。
「では対価として貴様の寿命を頂く」
「は、はい……」
既にいる悪魔と契約する普通の契約召喚と違い、誕生の契約召喚はまっさらな悪魔と契約できるため、その分制約を好きにいじる事ができる。
つまり、悪魔を好き放題できるという事である。
だが…… その分、対価として寿命を要求されてしまうのが、この契約の難点だ。
「そうだな…… では貴様の寿命はあと1年だ」
「え!?」
悪魔が静かに僕にそう告げる。
僕はそれに、驚愕する。
「当然であろう? 貴様のような50レベルそこらの人間に悪魔を与えるのだ、それくらいが妥当であろう?」
ニタリと悪魔の様な笑みを浮かべる悪魔。
「え!! ええ!! そ、そんな!! あと一年なんて…… そんなのはあんまりだ!! 暴利だ!!」
僕はそんな悪魔に、怯えたようにしながらすがりつく。
「では早速貴様に、望みの悪魔をくれてやろう…… いでよ」
「うぁぁっ!! やめてくれぇ!! な、無しだ!! さっきまでの契約は成しだ!! やっぱやめる!! 一年なんてあんまりだ!!」
僕は叫びながら、悪魔にそう訴えるが、悪魔は気にせず下級悪魔を練成してゆく。
そして、あっと言う間に出来上がる小柄な少女の悪魔。
浅黒い肌の、サキュバスというにはいささかグラマラスさの欠ける少女が現れた。
「残念だったな小僧、もう悪魔は出来てしまった、契約の解除は不可能だ」
「そ、そんなああああああ!!」
悪魔は少女を作り出すと、僕を見下しそう吐き捨てる。
地面に崩れ落ちる僕。
そして、生まれ落ちた少女は、ゆっくりと目を開いてそんな僕を見下ろした。
「では、来年の今日、貴様の魂を奪いにくる…… せいぜい残りの余生を楽しむのだな」
「うわあああああああああああ!!」
そう言って悪魔はまた魔法陣の中へと消えてゆく。
僕はそんな悪魔を見送りながら慟哭をした。
くふふ……
「おい、お前」
僕のそばで立っていた小悪魔が僕に近寄り、僕の頭を小さい足で踏む。
「な、何をするんだ! ご、ご主人様を足蹴にするなんて!」
僕は小悪魔の足を跳ね除け、そう怒鳴る。
小悪魔はそんな僕をゴミを見るような目で見下す。
「はぁ? ご主人? 何を言ってるんだお前は、お前がご主人な訳ないだろう」
「な!! 何を言ってるんだ君は!! だって君は契約で……」
僕は焦った様にしながら、立ち上がる。
「契約ねぇ……」
「な! なんだよっ!!」
そんな僕にニヤリと微笑む小悪魔。
「お前馬鹿だろ? 契約内容を碌にきめて無くて、何が契約だよ……」
「え……」
けたけたと僕を嘲笑う小悪魔。
僕はそんな彼女を見ながら唖然とする。
「わかるか? 貴様は私と主従の関係すら契約していないんだよ」
「そ、そんな……」
少女は僕を見下し、僕は少女を見上げ愕然とする。
「いいカモだな、お前は…… 50レベルそこらの人間が悪魔召喚になんて手を出すからこんな事になるんだよ」
「う…… うぅ」
ひざまずく僕を踏みつけ、そしてそれに怯える僕。
「さぁ、選べ…… 私の下僕となって一年を過ごすが、それとも今この場で死に絶えるか」
小悪魔は冷徹に微笑み、僕にそう言い捨てる。
僕は……
「ううああああ!! いやだあああああ!!」
やけになって小悪魔に襲いかかる……
そして小悪魔を押し倒し、上に覆いかぶさる。
「いやだああああ!! 殺されるくらいなら、今この場でお前を犯してやるぅぅぅぅ!!」
僕は小悪魔の上で、そう叫んだ。
すると小悪魔は……
「ちっ…… 使えぬ豚め…… 今すぐ殺してやる」
ギラリと目を光らせ…… そして……
「え………? あれ?」
そして、キョトンとした顔をする。
僕はそんなキョトンとした小悪魔の唇を、強引に奪った。
「んぅ!? ちょ!! ぅえ!? えっ!! ぇえ!? な…… なんで!?」
驚き慌てふためく小悪魔。
僕はそんな小悪魔の唇を執拗に奪う。
「んんっ!! ちょ…… ほんとやめてぇ……!! え…… なんで? これ、なんでなの!?」
動揺し、怯え、困惑しながら上に乗る僕を見あげる小悪魔。
「くふふ……」
僕はそんな彼女を、押さえつけて見下す。
ああ…… 最高に気持ちいい。
自分が優位だと思ってる奴を騙して、貶めて、見下すのは最高に楽しいなぁ。
「くふふ…… 僕が契約をしてない? 何を馬鹿な事を」
「え?」
僕が小悪魔を見下しながらそう言い、そんな僕を小悪魔が怯えて見上げる。
そんな小悪魔の顔の真横に、僕は「ドンっ」と辞書サイズの分厚い本をたたきつけた。
「ひぃ……ッ!? ぇ…… こ、これは?」
怯えながら僕を伺う小悪魔。
ああ…… 怯える少女って最高に滾るよね。
「これは全部、君との契約内容を事細かに書き記した…… 契約書だよ」
「…………………………え?」
僕はニコリと小悪魔に微笑む。
小悪魔は唖然として僕を見上げる。
「君との力関係から、禁則事項、体の形まで…… 全てを細かく記した完全な契約書さ」
そう…… 「黒曜精霊石のインク」で「契約式加工魔道原本(最高級)」に三日間徹夜して書きこんだ、完全な悪魔との契約書。
魂レベルでのリンクを強制する「魂悪魔導契約書」の複製書だ。
くくく……
そんな悪魔にしか知られていない本ですら閲覧できるのが僕の『悦覧者』だよ。
「そ、そんな…… で、でも…… 契約の時にそんな事言ってなかったじゃないか!!」
小悪魔が動揺しながらそう言葉を続ける。
「知らないのかい? 余命一年とか…… そう言う高価な対価が必要になる契約では、契約書があって当たり前なんだよ? いちいち確認する必要はないんだ」
人間が知らないだけで、ちゃんと悪魔側の契約術式にはそう言う細かい取り決めがある。
まぁ、それも「魂悪魔導契約書」に書いてあるんだけどね。
「契約書があることを確認しなかった…… 君のお父さんの落ち度だよ」
まぁ、こんな高度な契約書を用意するような奴だったら、あの悪魔も僕に監視をつけただろうしね。
なにせ…… そう言う奴は踏み倒す危険性があるから。
「だから…… 君は逃げられないよ? 完全に僕の下僕だ、いや性奴隷だよ」
「そ、そんな…… こんな50レベルくらいの奴が……」
小悪魔は僕を見上げ「なぜだ……」と小さく呟く。
「50レベル? 何をいってるんだい? 僕は500レベル越えだよ? ……ほら」
「え……… えぇ!?」
僕がレベル情報を公開してあげると、小悪魔は心底驚いた顔をして僕を見上げる。
くふふ…… 下級悪魔の最下と言えば、レベルの相場はおよそ100前後。
下だと思っていた奴が、自分より遥かに上だったんだから、そりゃあ驚くよね?
ああ…… 実に良い顔だ。
「な…… なんで?」
自分よりレベルが遥かに上だと分かった瞬間に、青ざめる小悪魔。
「くふふ…… 簡単な偽装だよ」
僕のスキル『バイタルコントロール』を使いこなせば、そんな事はたやすい。
自分の体の表層を低レベル組織で構成する事くらいはね……
「ど…… どうしてお前みたいな奴が…… 余命一年の理不尽な契約なんて……」
小悪魔は訳が分からないと言ったふうでそんな事を僕に尋ねる。
「それはね…… 今後の計画に、悪魔との魂レベルでリンク出来るような、濃厚な契約がが必要なんだよ」
僕がそう言いながら、小悪魔の頬をなぜると小悪魔は怯えたようにびくっと体を震わせる。
ああ、いい顔だ…… 怯えた小動物みたいなその顔、最高に愛らしいよ。
「それに…… どの道、契約は踏み倒す予定だからね、構わない」
僕はそう言って、小悪魔にニコリと微笑む。
「ひぃ……!?」
そして、そんな僕の笑顔に顔を引きつらせる小悪魔。
ちょっとその反応は失礼じゃないかい?
「さて…… そろそろ本格的に契約を起動しようか」
僕はそう言って小悪魔の額に口付けをした。
小悪魔がそれに小さく「ひっ」と悲鳴を上げた瞬間…… 小悪魔の体が輝きだす。
「え……… ぁ……!? ん!! うぁっ!!!」
悲鳴を上げる小悪魔。
その体は紫色の綺麗な光に包まれる。
「………………………え? これ、に、人間!?」
そしてその体の光が収まると…… 小悪魔の体は、容姿をそのままに人間と同じ体つきになっていた。
「そうだよ…… 大体12歳くらいの少女ってとこかな?」
ピンク色の髪に、白い肌、あどけなさの残る顔つきに、青い果実のような瑞々しい肉体。
ああ、全てがパーフェクトだ!
「見た目も体も全てが契約書どおり…… 僕好みにカスタマイズされてるからね」
この契約書でこの力関係の場合、心以外は全て僕の思うがままなのだ…… くふふ。
「さぁ…… はじめようか」
僕はそう言って小悪魔の首筋をなでる。
「ひぅ!?」
そんな僕のスキンシップにびくんと体をはねさせる小悪魔。
くふ… 「僕が触れると性感倍増」の契約はどうやらちゃんと働いているようだ。
超楽しい。
「な、何をするき…… だよ」
怯えたままに僕を見上げる小悪魔。
「そんなの決まってるだろ?」
僕はそんな小悪魔を上から見つめる。
「くぅ…… 初めてが外かよぉ…」
僕がそう言うと、観念したようにして目を逸らす小悪魔。
「あ…… ちなみにサキュバス特有の性感は無くして、普通の少女と同じにしてあるから」
「え……?」
僕はそんな小悪魔にニコリとする。
「だから、痛いと思うけどがんばって!」
「ぐぅ……… この鬼畜野郎ぉ……!!」
既に泣きそうな小悪魔ちゃん。
やべぇ、マジ最高。
淫乱ピンク最高!!
「そうだ…… 君に名前をつけてあげよう」
僕は小悪魔の耳の裏をなでながらそう言う。
「んく…ぁ… な…………名前?」
小悪魔はちょっと顔を赤くし、身じろぎをしながら答える。
そうだなぁ…… じゃあ……
「君の名前は今日からマリアだ」
「マリ…… ア?」
家で昔飼ってた猫の名前を適当につける僕。
「マリア…… かぁ……」
そしてちょっと満更でもなさそうなマリア。
「じゃあマリア?」
「え? な、なんだ?」
僕はマリアに微笑み、マリアはちょっと照れる。
「ご主人様の頭をふんづけたお仕置きだ………… せいぜい良い声で鳴いてくれよ?」
「へ…………? え? ひゃ!? ぅえええ!? い、いきなりそんなとこ舐める!? やぁっ! ん!ぅああああああぅ!?」
僕はこの後めちゃくちゃ○○○した。
※ シルビアがヒロインだと思った? 残念こっちだよ!!
御宮星屑 Lv522
【種族】 人間(半スライム)
【装備】 なし
〔HP〕 1050/50(+1000HP分のスライム内蔵)
〔MP〕 10/10
〔力〕 2610
〔魔〕 0
〔速〕 0
〔命〕 2610
〔対魔〕0
〔対物〕0
〔対精〕100
〔対呪〕0
【契約魔】
マリア(サキュバス)
【使い魔】
イノセントスライム ミッドナイトスライム 内臓スライム(×1000) マッスルスライム
【称号】
死線を越えし者(対精+100)
【スキル】
『悦覧者』 『万里眼(直視)』 『ストーカー(Ⅹ)』
『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』 『バイタルコントロール』