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ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ  作者: ユウシャ・アイウエオン
第二章 新たなる自分への転生(人間やめよう)
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17話 本当の君に出会う時

「よし…… じゃあまず当面の金の調達だな」


とりあえず、当面の計画に必要な金を用意せねば。


オーガ倒すときのくず鉄で、ほとんどお金つかっちゃったから、手持ちが大分心もとない。


このままじゃそろそろ、宿代すら払えなくなるぞ。


だけどまぁ、お金に関しては大丈夫。


なぜなら…… くふふ……


「僕には〔ガヴィードメタルオーガー鎧皮〕が大量にあるからだ!」


くふふ……


このオーガの鎧の如き硬い外皮が……


実は素材としてめちゃくちゃ金になる事は既に調べ済みだ。


なにせ王国周辺で一番強い生物の素材だ……


だから市場にはそんなに出回ってないし、それにあの硬くてしなやかな鎧皮は武器にしても良し、鎧にしてもよし、何かのつなぎに使うパーツにしても良しの、とても優れた素材なんだ…… 


って『悦覧者アーカイブス』に書いてありました。


まぁ、そんな訳で僕は今から大量の鎧皮をお姉さんの所へ売りに行こうと思います。


よし…… じゃあ早速。


「マルス、おいで」


「ぎゅむ!」


僕がそう呼ぶと、暑苦しそうなオッサンの声をだすワインレッド色のスライムが僕の足元にくる。


このスライムは僕が実験で作った新しいスライム…… マッスルスライムだ。


このマルスは僕が、ガヴィードメタルオーガの黒い血液を元に作る「超筋力強化薬液(強力な副作用あり)」を量産し、そしてその液体の中で育てたイノスの分裂体だ。


イノセントスライムを清らかな水の中で育てれば「ウォータースライム」になるのだから、液体の種類を変えたら色々変化するのでは、と考えてやってみたのだが……


どうやら実験は成功した様だ。


予想通りの筋力特化型のスライムが完成したのだから。


そして、今や半分スライムの僕はスライムコントロールにかけては一流。


どんな精密なコントロールだって出来る。


つまり僕には、このマルスの有り余る筋力を完全に使いこなすことができるのだ。


正に鬼に金棒、僕にスライムだ。


だが……  


だがしかし。


一つだけ問題があるのだ。


それは……


「マルス……… 相変わらず君は臭いな」


「ぎゅむ!!」


このマッスルスライムは…… めちゃくちゃ汗臭いのだ。


なんと言うか、もう…… ああもうっ、男くせぇ!! うぜぇ!!


「ええい! よるなマルス!! 早く君は外に埋めてあるオーガの鎧皮をとって来い!!」


「ぎゅむむ!!」


ああ…… もう、部屋が超男臭い。


もう、ミドスの場合はもう笑っちゃうくらい臭いから逆に気にならないけど。


マルスの臭さは…… なんと言うかリアルな臭さなんだよなぁ。


男くさいのとか、ほんと勘弁してほしい。


「ふぅ……」


まぁ、とりあえず…… お姉さんのところへ行くか。


――――


「こんにちは」


僕はお姉さんの工房の扉を上げ、そう声をかける…… 


すると、部屋の奥の方からいつもの様にお姉さんがのそっと出てくる。


顔のほとんどを床にまで伸びる長い銀髪で隠し、その上で眼帯をしているお姉さん。


片目だけがチラッと見えているのが妖しくていい。


「やあ、少年か…… 今日はどうした?」


お姉さんは、ニコリと小さく笑う。


うむ、僕を見て微笑んでくれると言う事は、好感度は低くないよな?


どうやったらフラグが立つのだろうか?


「今日はですね、これをお姉さんの店で買い取ってもらおうかと思いまして」


僕はそう言って、パンパンにふくらんだ超巨大な皮袋を取り出す。


そしてその中身を開いてお姉さんに見せた。


お姉さんは「どれどれ」と言いながら袋の中の真っ黒な鎧皮触れる。


すると……


「え………… こ…… え!? これは!?」


お姉さんはピキリと硬直した後、絶句しながらぷるぷると震える。


む…… 


髪に隠れた目が見開かれている。


おぉ…… 普段隠れてるものが見えるのって、なんだか興奮するよね?


え? しない?


「こっ! きょ! これはッ!! これはがびーどめたるおーがの鎧皮じゃにゃいか!!」


お姉さんが噛みまくりながら、目を見開いて僕に顔を近づける。


ちょ…… ちかいちかい、顔近いよお姉さん?


え? なに? これキスとかしていいのかな?


てか、目がめっちゃキラキラしてるな。


めちゃくちゃ興奮してるよこの人。


どうした?


「え! ど、どうしたの? これどうしたの!? 教えて! シルビアにもどうやったのか教えてよ!!」


あれあれ?


お姉さん?


口調がいつもと違いますよ?


てか一人称が自分の名前ですか、そうですか。


大変結構だと思います!


「これは、僕が倒して剥いできました」


「君が!! 凄い!!」


僕の目の前で、お姉さんがピョンピョンと跳ねる。


凄くたのしそうだ。


………………ん?


てか、身長縮んでない?


ん?


ん~~?


あ、幻術か。


身長偽ってたのか。


ふむ…… なんか理由でもあるのかな?


「えっと…… お姉さん?」


「はい!!」


僕がお姉さんに声をかけると、お姉さんは元気に返事を返しながら「うわぁぁぁ…… 初めてみたぁ、すごい綺麗、すごいすべすべだよぉ」と鎧皮に頬ずりしていた。


凄くうれしそうに頬ずりしてるお姉さん。


ぐ………… 


僕は今、すごく鎧皮になりたい。


「それで…… 買取の方はどうですか?」


「え……! ぁ…………ぅぅ……」


そんな浮かれているお姉さんに声をかけると、お姉さんは一度びくっとなり、そのあとシュンとしてうつむいてしまう。


「え、えっと………… 少年には悪いけど、わたしの店には任せない方が良いとおもう」


「……え?」


お姉さんは、オーガ鎧皮をぎゅっと抱きしめながら、申し訳なさそうに僕に言う。


「私の店は…… その、見ての通りの小さな店だから……」


お姉さんが僕を片目でチラリと見つめる。


「市場で良い様に買い叩かれてしまう…… これほどの素材なら…… もっと大きな店で頼んだ方がよい…… その方が高く買い取ってもらえる」


そしておずおずとしながら僕にそう告げるのだった。


不甲斐なさそうに、そしてちょっと泣きそうにして目を逸らすお姉さん……


うん、これは萌えポイント高いな。


「わかりました」


僕はそんなお姉さんを見ながらそう続ける。


「うん……」


残念そうにして目を伏せるお姉さん。


「じゃあ、お姉さんのところに頼みます」


「えっ!?」


お姉さんに僕がそう言うと、お姉さんは驚いたようにして僕を見上げる。


片目をぱぁっと開いて「なんで!?」と言う表情で僕の事を見る。


「な…… なんで? だ、だって、シルビアのお店は力がないから…… 多分大手のお店より3割は安く変われちゃうよ!?」


また、口調が元に戻るお姉さん。


ふふ…… 


22才で実はロリ体型で興奮するとロリ口調か…… 


うん、設定盛りすぎだな。


だがそれがいい!!


「いえお姉さんで良いんです…… お姉さんは全てを正直に話してくれました…… この国に来て間もない僕が、今一番欲しいのは信用できる人です」


僕はお姉さんを見つめる。


「お姉さんは正直で、いつも仕事が丁寧だ…… だから信用できます」


僕はおねえさんにニコリと笑う。


「お姉さんに任せたいんです…… いいですか?」


そして、そう言った。


お姉さんは……


「は…………… はいっ!!」


背筋を伸ばして嬉しそうに僕を見上げる。


そして僕を見上げながら、感極まったように口をわやわやとさせている。


ちょっと涙も浮かべているし…… よっぽど嬉しいいようだ。


くふふ…… これフラブたったんじゃない?


ぐふふ……


てかまぁ、ぶっちゃけると僕もガヴィードメタルオーガの市場価格は知ってるんだけどね。


そんで市場価格の5割りで売れれば、当面のレベル上げ作業に必要な資金を調達できる事も計算済みだし。


だから7割で売れればまぁ、上等。


それに大手はちゃんと身元がはっきりしてないと買い取ってくれないから、どの道僕に選択肢はないんだけどねw


まぁ、そんな訳なんだけど、そこらへんの事情はサクッと横においておいて、ここはお姉さんに恩を売っておこう。


そしてその恩に漬け込んで…… くふふ。


ああ、シルビアちゃん可愛いよ…… はぁはぁ。


「あと、もう一つ仕事をお願いしたいんですが…… いいですか?」


「はい!!」


元気に返事をするシルビアちゃん。


うん、作ってるキャラが完全崩壊してるな。


「必要な素材をリストにまとめておいたので、鎧皮を売ったお金でこれらを買い揃えておいてもらえますか?」


「わかった! シルビアがんばるよ!」


にこにことして僕を見上げるシルビアたん。


ああ…… ぺろぺろしたい。


「あと、お姉さん…… 幻術解けてますよ?」


「うぇ……?  ッあ!?」


僕がそう言うと、慌てて自分の体を見回すシルビアたん。


「え…… ええとだな…… 背の低い女店主では舐められてしまうと思ってだな」


今更、真面目顔しても遅いですよお姉さん。


もうあなたのクールキャラは完全粉砕しています。


「分かってます…… 色々たいへんなんですよね? 女の子一人でお店やっていくって言うのは」


僕はそう言ってシルビアたんの頭をナデナデしてあげる。


シルビアたんは僕のみぞおちの辺りまでしか身長が無いから、とても撫でやすい。


シルビアたんは僕が撫でてあげると、僕を見上げてぱぁっと顔を輝かせる。


「う…… うん! そうなの!! 大変なの!!」


もう、キャラ設定がったがたですね、お姉さん?



――――



と、まぁそんな感じで僕はシルビアたんと戯れて店を後にした。


幸い必要な素材の中で、真っ先に必要だった「黒曜精霊石のインク」と「契約式加工魔道原本(最高級)」はお店にあったのですぐ手に入った。


シルビアたん曰く「こんな高級品売れたの初めて!」との事らしい。


また、きゃいきゃいとはしゃいで喜んでいた。


うん…… もっと色々買ってあげよう。


あの女マジちょろいぜ。


だけどそれがいい。


とにかく……


これで次のステップに行くための準備は揃った。


後はシルビアたんが、他の素材をそろえるまでに…… この「契約式加工魔道原本(最高級)」に「黒曜精霊石のインク」で書き込む。


そして、予定通りに……


「さぁ…… 悪魔と契約をしよう」


くふふ…… 


さあ、始まるぞ。

御宮星屑 Lv522


【種族】 人間(半スライム)


【装備】 なし


〔HP〕  1050/50(+1000HP分のスライム内蔵)

〔MP〕  10/10


〔力〕 2610

〔魔〕 0

〔速〕 0

〔命〕 2610

〔対魔〕0

〔対物〕0

〔対精〕100

〔対呪〕0


【使い魔】


イノセントスライム ミッドナイトスライム 内臓スライム(×1000) マッスルスライム


【称号】


死線を越えし者(対精+100) 


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』  『ストーカー(Ⅹ)』


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』 『バイタルコントロール』


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