14話 夢を思って歩き出す事は(前)
「さぁ、殺そう……!」
僕は今、魔法学校から5キロ離れた高台にいる。
そして今、僕の視線先には魔法学校で座学を受ける、麗しの勇者様の姿がある。
くふふ……
ああ、いけないなぁ鳳崎君。
授業はちゃんと受けないとだめだよ?
くふふ……
そして、今僕の右手にはガヴィードメタルオーガの牙が握られている。
硬さも鋭さも申し分ない、十分な殺傷能力を誇る凶器だ。
さあ、この牙で鳳崎を殺そう。
今こそ殺そう。
鳳崎が今持っている勇者スキルで、注意すべき防御系のスキルは二つ。
『広域検索』と『五重結界』だ。
『広域検索』は勇者が知りたいと望む、全ての物及び事象を検索できる能力で、特に意識してない時は殺意に反応するようになっているらしい。
『五重結界』はその名の通り、勇者を常時守護する5重の無属性結界だ。
一見無敵に見える勇者の守護スキル。
でも……
『広域検索』の検索区域は、現時点では勇者を中心とした半径3キロ圏内で、僕が今いるの鳳崎から5キロ先だから圏外だ。
『五重結界』は、一応物理対抗力を持つものの、その本領はあくまで対魔法における汎用的な防御力だ…… つまり単純な投擲と言う、純粋な物理攻撃にはそこまで強くはないのだ。
で……
鳳崎のレベルは180だ。
レベル180の鳳崎は、どうやら昇格値は【魔】多めではあるものの、基本は均等に振り分けているらしい。
つまり【力】180、【物防】180くらいという事だ。
くふふ……
いくら体の丈夫さが180で、いくら防御フィールドが180でも…… それが2610の暴力の前に意味があるとでも?
そこに薄っぺらい結界が五つ重なろうと…… 妨げになるとでも?
そして命中2610である、今の僕の有効殺傷範囲は有に50キロは超える。
たかが5キロ…… 威力が落ちるとでも?
くく……
くふふ……
くへへへへへへ……
ああ……
「詰んだな…… 鳳崎ぃ……」
僕はオーガの牙を握り絞める。
そして、それを大きく振りかぶる。
さぁ、終わりだよ鳳崎。
これで終わりだ……
君と、僕の……
全てが終わりだ。
殺す。
僕は君を殺すよ。
いま殺す。
さぁ殺す。
さぁ……
さぁ。
さぁ。
さぁ。
いけ……
あれ?
え?
「…………………………………………………………………………………………あれ?」
そのとき僕は…………
鳳崎を…………………………………… 殺せなかったのだった。
※後編を12時に更新。
御宮星屑 Lv522
【種族】 人間(半スライム)
【装備】 なし
〔HP〕 1050/50(+1000HP分のスライム内蔵)
〔MP〕 10/10
〔力〕 2610
〔魔〕 0
〔速〕 0
〔命〕 2610
〔対魔〕0
〔対物〕0
〔対精〕100
〔対呪〕0
【使い魔】
イノセントスライム ミッドナイトスライム 内臓スライム(×1000)
【称号】
死線を越えし者(対精+100)
【スキル】
『悦覧者』 『万里眼(直視)』 『ストーカー(Ⅹ)』
『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』 『バイタルコントロール』




