1話 夢は願わなければ始まらない。
ある意味俺の趣味丸出しの小説。
結構長編になる予定。
「ぐぎゃぁっ!?」
思い切り背中をふまれる。
だけど背中だからそんなに痛くはない。
必要以上に苦しそうな声を出す事がポイントだ。
「きたねぇ声で鳴いてんじゃねえよゴミクズ!!」
ぎゃはは、と下卑た笑を漏らしながら鳳崎遼生が僕を踏みつけ見下し、なぶる。
「本当によぉ…… 異世界にまできてお前の相手をしなきゃなんねぇなんて本当に不幸だよなぁ、俺はぁ」
「ぶぎゃぁ!!」
鳳崎が僕の頭を踏みつける。
踏みつけられる事を想定していたので、額は地面にぴったりとくっつけている。
隙間がなければ大した衝撃は生まれない。
額が切れたみたいだけど、脳震盪を起こすよりはましだ。
その時になるべく滑稽な声で苦しむふりをすればなおいい、相手がすぐに満足をしてくれるからだ。
「あはははは! 豚みたいな声ぇ!! きもぉ!!」
鳳崎の取り巻きで、鳳崎が好きなクソビッチ、南城加奈が這い蹲る僕を指差して笑う。
どうやら僕の叫び声はおきに召したようだ。
僕は君の不快な笑い声はお気に召さないけどね。
「ホント、お前はキモいよなぁ…… 見てて吐き気がするよゴミクズ」
「がはぁ!! ご…… ごめんなさぁい! ゆるしてくだぁぁいい!!」
鳳崎が僕の肩のあたりをガシガシ蹴り飛ばす。
くふふ、肩は蹴られてもあんまり痛くないだよ。
でも痛がるふりはやめない。
僕は泣きそうな声を絞り出して、地面にうずくまって、精一杯なさけない格好をする。
どうだい?
堂に入った情けなさだろう。
「鳳崎君、それ以上やったらゴミクズの奴死んじゃうんじゃないの? まぁそんな奴死んでもだれも困らないけどね」
鳳崎の取り巻きで金魚の糞、木島京が僕をみて嘲笑う。
そうだね、僕も君が死んでも困らないよ?
「……………………」
しかし…… 御堂九さんはいつも見てるだけだなぁ。
なんかリアクションとかないのかな?
僕がこんなにいじめられてるのにね。
「こんなにキモいんだ! いっそ死んじまえよぉぉぉッ!!」
「ぐぎゃあああああああああああああああ!!!」
ぐお………
思いっきりわき腹蹴りやがった……
ここだけは腹に力入れてても痛いなぁ。
肋骨が折れてないといいけど。
とにかく僕は、まるで死んでしまうかのような絶叫を上げる。
ヨダレを使って口から泡を出し、白目を向いて、びくんびくんと痙攣をする。
もちろん尿を漏らす事も忘れてはいけない。
「うお、こいつまた漏らしやがった、マジきたねぇ…… ほんとゴミクズだな」
失禁をすれば、高確率で鳳崎はドン引きする。
そして……
「クソが!!」
そういっていつも僕の尻を蹴り飛ばして去っていくのだ。
くふふ…… これで君が僕を殴ったのは通算で1万4千5百6十と3回だね。
二年間でよくもまぁこんなに殴ったものだよ。
その性根の悪さには関心するよ。
僕は全部覚えているからね?
「……………………」
ん?
ココノツさんがまだ僕のこと見ている。
なんなんだろうか?
「おい! 御堂!! 何やってんだよ!! 行くぞ!!」
「………………………わかった」
ふむ、なんだったのか。
まぁ、ともかく……………… どうやら皆いったみたいだな。
「ふぅ……………」
僕はおもむろに立ち上がって、体のゴミを払う。
そして体のチェック。
うむ…… 額が切れた以外はどこも怪我してないみたいだな。
よかった。
「はぁ、しかし鳳崎も暇だね」
勇者の仕事が忙しいはずなのに、わざわざストレス解消に僕のとこにまで来るんだから…… 本当に暇な奴だ。
一応勇者なのにね……
早く一人前の勇者に成長して、魔王を倒して元の世界に戻らないといけないのになぁ。
そう聞かされているはずなんだから頑張らないと…… 馬鹿だなぁ。
あの日……
いつもの様に僕をあいつがいじめていた時。
僕たちは異世界に飛ばされた。
鳳崎に巻き込まれる形で僕たちは異世界に飛んだ。
鳳崎はこの世界で魔王を倒す勇者となるべく召喚され、そして今は戦う訓練をするために、今は魔法学校へと通っているのだ。
全ては魔王を倒して元の世界に返るために。
自分と、その仲間と共に元の平和な世界に帰るために…… 鳳崎は今も頑張っている。
本当は帰る方法なんて無いとは知らずにね……
くふふ、馬鹿だなぁ。
この世界は鳳崎に力を与えた。
所謂、勇者召喚のお約束。
チートって奴だ。
そしてその取り巻き立ちも、それなりにレアな能力を持っているらしい。
……………………そして僕も。
僕は、前の世界では全てを諦めていた。
僕の親はどうしようもなく、鳳崎の親は権力者で……
教師陣は皆クズで、社会は僕の味方をしなかった。
ついでに僕は喧嘩が弱くて、鳳崎は喧嘩が病的に強かった。
しかも鳳崎は顔が良くて、僕は地味で根暗な顔をしていた。
だからいじめられていた。
理由なんてそんなもんだ。
鳳崎が強くて、僕が弱かった。
だからいじめが始まった。
分かってる…… 分かってるよ。
強者が弱者をいじめるのは当然の権利だ。
自然の摂理だ。
だけどね…… そんなのには反吐がでるよ。
反吐がでるよ。
反吐がでる。
だけど……
この世界。
この世界では違う。
俺にも戦う力がある、
戦える状況がある。
すくなくとも、あがき様はある世界だ。
復讐の糸口がつかめる世界だ。
僕のこの固有能力があれば……
僕の能力。
〔世界に現存する全ての書物を脳内で閲覧することが出来る〕
僕は天を仰ぎ見る。
そして神に感謝を捧げる。
最高だ……
最高の能力だ…… これ以上はない。
『悦覧者』
くふふ…… 僕は君にしてあげる。
絶対に復讐をしてあげるよ。
鳳崎君。
僕は君と出会ってから今まで…… ずっと僕は君の事を想っている。
憎と言ってもいいかもしれないね。
やがて殺意へと変わっていったよ。
僕はずっと君を追い続けるよ。
せっかくチャンスが巡ってきたんだ。
僕は諦めない。
頑張るよ。
見ててくれよ?
僕が君の心臓をえぐり出すその時まで……
夢をかなえるその時まで……
「僕は……」
僕は。
「世界の攻略本を…… 手に入れた」
ああ…… 世界はなんて美しいんだろう。
僕の名前は御宮星屑、略してゴミクズと呼ばれる男だ。
御宮星屑 Lv1
【種族】 人間
【装備】 なし
〔HP〕 40/50
〔MP〕 10/10
〔力〕 0
〔魔〕 0
〔速〕 0
〔命〕 0
〔対魔〕0
〔対物〕0
〔対精〕0
〔対呪〕0
【称号】
なし
【スキル】
『悦覧者』