ウソつきの僕ら
「ありがとう!」
「大丈夫、気にしないで!」
「ごめんね」
「大好き!」
ねぇ、それってほんと?
ほんとのほんと、嘘じゃない?
いいや、それは、 。
僕は知ってる。君もほんとは知ってるはずだ。それがどんなに薄っぺらくて、不確かで、いい加減なものであるか。
「おはよー、テストの勉強した?」
「はよ、いや全然。やばいわー」
「だよなー!」
はい嘘つき。なんでこんな分かりやすく嘘つくわけ?やったならやったって言えばいいじゃん?
まわりに合わせて嘘つくなら、お前なんていないも同じだよ。死んじまえ。
俺だけど。
何だよ。だって、自分の意見とか、本当のことなんて話すの怖いだろ?バカにされたりウザがられたりするくらいなら、まだあわせてた方がましだね。少なくとも、一人だけ目立たなくてすむから。
時々、胸のここら辺がぎゅうって苦しくなって、何もない空間に投げ出されたみたいに感じるけど、そんなの気のせいだから。
俺はこれでいい。
「…あ、あいつまた一人だぜ。」
体育の時間、友人が体操の二人一組のときに話しかけてきた。あいつ、とくればもう確認するまでもなく決まっている。クラスの男子で一人だけ浮いてるやつ。女子とも仲良くしてる様子がないし、友達いないんじゃないか。
沖隆一。りゅういちじゃない、たかかずだ。こいつは顔が…整っているといえばそうなんだけど、薄い。いうなれば、超薄口醤油顔だ。塩分何パーセントカットしてるのやら。俺らの大半が興味持つようなゲームや、バンドとかには全く興味がないようで。いつもよくわからない絵を描いている、変なやつ。
皆、こいつに関しては無視したり、からかったり、噂たてたりバカにしたりする。
だけど、俺は、そんな風にまわりに流されずに自分を貫き通す彼が、ちょっと羨ましく思える。ちょっとだけ。
俺には無理だ。
「…ほんとだなー、いつも一人だよな。」
「ぼっちかわいそうだな。体操一人とか辛すぎだろ」
よく言うぜ。そう思うってんならそのにやけ面引っ込めろ。とか、俺が言えることばじゃないな。
「そうだ!お前組んでやれよ!」
「?!はぁ??!なに言い出すんだよ!」
「俺あっちと組むから!じゃあなー頑張れ!」
「っおい!ちょ…」
まじか。
笑ってんなよ。
嫌がった顔を作りながら、だけど俺は実を言うと、少し喜んだ。これで彼と話ができる。
「…あのさー。」
「なに?」
「俺もあまってるから…良かったら組まねぇ?」
「…話のネタにされるのはごめんなんだけど。そういうんじゃないなら、まあ構わないよ」
「ぉ、ぉう…。」
思ったよりめんどくせぇな、こいつ。
「えーとさ、沖って…いつも絵を描いてるよな。」
「そうだよ。それで?」
「…っと、何て言うか、そう言うのってすごいよな。俺はよくんかんないけどさ、賞に入ったりしてるよな?」
「まあね。」
共通の話題をさがしてはふる。こいつ終始無言だから気まずいんだよ。実際沖の絵は凄いらしく、学校に新聞の取材が来たりしたから有名だ。
「今またなんか描いてるのか?今度は…」
「ねぇ。」
「…?」
「話し合わせるために、興味のないこと聞かなくていいよ。疲れるだけだろ?そういうのってさ。」
「は…?」
やばい、怒らせた?
「いや…別に興味ないわけじゃないぜ?入賞するとかすげぇと思うし…」
「じゃあ、俺の絵を見てどう思った?」
正直落書きかと思った。
「俺は芸術とかよくわからないし…」
「それじゃあ意味ないよ。全くもって意味がない。入賞したからいいんじゃないんだ。大事なのは俺の絵に何を感じたかなんだ。」
すごい、今までで一番話してるんじゃないかこいつ。
「そう…なのか」
「まあ、わからないだろうね。わからなくていい。場繋ぎの戯言なんか気にする必要ない。」
ほぼ初対面の相手にいうなぁ。
「体操終わり、ほらもとの仲間とつるんできたら?じゃあ。」
「あ、あぁ。」
じゃあな。
そう言おうと思ったけど、必要ないからやめた。
「日直一緒なんだよなぁ」
「一人言か?」
「いや、まあ。」
放課後。ノートをまとめながら横目で彼を見る。やっぱ薄い。
「早く終わらせよう。」
「なあ、ちょっと聞いてもいい?」
「手短に。」
ほんとにこいつは、
「―なんで、そんな真っ直ぐに話せるんだ?」
「裏表のない本心で、誰かにあわせることもなく、思ったことを言える?恐くない?そのせいでハブかれてても?」
「相手を傷つけてもいいのか?話したことで嫌われても?一人になっても?合わせた方が楽なのに。丸く収まる、辛いことなんてない。なぁ、」
「なんでだ?」
「俺が思うに、今の君はなかなか率直に話してるんじゃない?」
「まあ、そうだな。」
「それは、どうして?」
「お前とは、友達じゃないから?かな?」
「結構ひどいんだな。」
「そうか?」
「そうだよ。―別に、俺は誰かに嫌な思いをさせようと思ってるわけでもないし、一人でいたいわけでもない。一人でいることは嫌いでもないから良いんだけど。…周囲に流されて、同調してれば楽だと思う。ほんとに。波風たたないし、喧嘩もおきない。同じ意見の人同士なら、さほど苦労も無いんだろ。」
「でも、ほんとに辛くないのか?寂しくないのか?受け入れられてる自分は別の人なのに?言葉を飲み込む度、いきぐるしくはならないのか?平気で笑えるのか?誰かと繋がりをもつのって、そんなに酷いことなのか?」
「思いやりや優しさで、合わせるのでもなく、一人が嫌だからって、そんな風に生きるのは、俺は、嫌だ。たまらない。」
「俺の絵を、賞に入った絵を、皆すごいと言うけど、賞に入ったからすごいんじゃダメなんだ。価値なんて無い。自分にとって良いと思えたものこそが、最高のものなんだ。俺は、自分にとってそういう絵を描き続けたいんだ。」
「…わかったような。わからないような。」
「それでいいよ。話すのは得意じゃない。この性格だから、まともに人と話せない。大抵の人は嫌がるから。」
なんだコミュ障なのかこいつは。
すごいと思って勝手に憧れて。勝手なのは俺の方かもな。
「なあ、今度、美術部行ってもいいか?絵を見せてほしいんだ。」
「それは、社交辞令?」
「いいや、違う。本心だよ。」
「ならいい。いつでも見に来ればいい。」
「ありがとな。」
気づけば日が沈み始めていた。そろそろ帰ると告げた俺に、沖は部活に行くからノートよろしくと押し付けてきた。横暴だけど、悪くない。
「そうだ、ひとつ言い忘れてた。」
教室を出る前に、彼を見て、口を開く。
「…なんだ?」
「あの絵、子供の落書きかと思ったよ。」
そういうと、彼はニヤリと笑って手を振った。
久々に衝動てきに




