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死神郵便録 序
誰にも、伝えたくとも伝えられなかった言葉がある。死の間際まで、その言葉を胸にしまったまま逝く人は、きっと多いだろう。もしかすると、その影でほくそ笑んでいる悪者もいれば、亡くなった相手に、もはや伝えられない言葉を呑んで、涙を流す人もいるだろう。
とある死神は、涙を流す。心残りしたまま、悲しみに暮れる魂に触れて。少しでも、魂に安らかな昇天を祈り、死神は言葉を伝えに行く。
これは、とある死神の行動録。伝えたくとも伝えられなかった言葉を伝える別世界の郵便屋の物語。
死神は、彷徨い悪霊と化そうとする魂を冥府へ運ぶ者。死を操る者。神に仕えし農夫。
死神イルルは、今日も空から見渡す。耳を澄ませ、悲しみの声を聞く。
死んだ生き物に興味はない。ただ、今にも死に、魂が抜けんとする生き物にだけ興味がある。
彼は今日も届けるのだ、最期の言葉を。
魂の悲しみを、少しでも和らげるため――