001.例えるなら日本の夜明けぜよ・・・社会勉強
ポケットに乱雑に突っ込んでいたメモを取り出す。
寒空の下
故か、手がかじかみ巧くメモを開けない。
そんなとき、
「ちょっとそこの」
唐突に声をかけられた。まったく、なんだと言うんだ。
そこに立っていたのは、何やら顔に刺青のような(刺青なんだろうなぁ)を入れている叔父様が立っていた。
もしお礼参りだと言うのなら心当たりしかない。しかしそれは俺が悪人とかじゃなく街を掃除した結果であって、と自分のなかで釈明をしていると、
「おう兄ちゃん、無視かぁ?えぇ度胸しとるのぉ?え?」
とドスを効かせて言ってきたわけでして。
今にも暴力で物を訴えそうな雰囲気だ。なんともまあ、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしない。
「いい加減なんか言えやァこのだらずがァァァッ!!!」
オッサンが激昂して足元にあった電飾が施されている看板を蹴り上げる。
咄嗟に身を屈めてかわすと、その看板は何十メートルも先のトラックの荷台を貫いた。
「ワシの足ゃあ特別でのォ。筋肉を人工の金属製に差し替えて他とは比べモンにならん力を発揮するんや。今さらビビっても遅いでェ?」
確か改正された法律では改造された身体での恐喝等犯罪行為は通常よりも厳重な処罰対象だ。しかし少しの事で此処までする男だ。おそらくそれなりの手練れか、身体を改造したばかりか。
もっとも、どちらであろと喧嘩を売られた以上、俺が叩き壊すだけだが。
「大人のルールを教えてやるよクソ餓鬼がぁ」
「そんな社会勉強は真っ平だな」
奴の足が大地を蹴った。