中途半端な一章(後々修正するつもりです)
まどろみたくなるような暖かい陽光が差し込む午後の教室。
その中で見山英太はひたすら渋面を浮かべていた。体調を崩したというよりも、何か面倒臭そうな表情だ。
「邪魔するなっての」
黒板の前に立つ教師にはもちろん、前後左右のクラスメイトにさえ聞こえないような小声で何者かに話す。
「目の前をちょろちょろするな」
語気を荒げまいと努めている英太を嘲笑うかのように、何者か、は阻害をしてくる。英太は真面目な優等生でもないので午後の眠気に任せて目を瞑ってもよいのだが、それさえ阻んでくる。
「……あーもう、うざってぇな! とっとと消えろ!」
忍耐虚しく、我慢の限界が訪れた。
荒々しく席を立ち、一点を見つめて怒気を含ませ叫ぶ。どこかまったりとした空気の漂っていた教室に緊張を走らせる。驚愕の表情を隠せない者、目覚まし時計の代わりになったのか寝ぼけ眼をこする者、それら全員の視線が英太に集まる。
「見山君、それは誰に言っているのかね?」
双頬と手元をピクピクと怒りで震わせながら、中年の小太りした男性教師が尋ねる。授業を中断されたよりも、英太の暴言が自分に向けられているかもしれないといった怒りの方が勝っているようだ。
「あ、すいません……独り言です」
「ほ、ほぉ……君は独り言で『うざってぇ』だの『消えろ』だの言うのかね」
「すいません」
「ふん……まぁいい。授業を続けるから座りたまえ」
明らかに納得のいっていない様子でも、これ以上詰問するのは無駄と英断した教師はくるりと黒板に顔を向けた。ガツガツ、と力の籠った板書を見れば、彼の不機嫌の度合いは瞭然である。
「あーあ……やっちまった」
その後は何事もなく授業は終わった。呼び出しをくらうこともなかったので、ひとまず英太は胸を撫で下ろした。
「おいおい、英太もいよいよ不良デビューか?」
英太の前の席に対面できるようにして入江孝介が座ってきた。ちなみにその席は彼の席ではない。
「違うよ。また奴らの仕業さ」
「だろうと思った。で、どんな奴だった?」
「小学生くらいの男の子だった」
「そりゃあ大変だ」
「耳の穴に指を突っ込んできたり、股間を鷲掴みしてきたり……悲鳴をあげなかっただけマシかな」
「見える人は苦労するねぇ」
何が見えるのか、一番最適な表現は「幽霊」に他ならない。
英太は物心ついたころから幽霊が見えていた。幻覚を疑ったこともあったが、確実に奴らは幽霊だった。
例えば、お盆にはたくさんの幽霊たちが街を徘徊していたし、心霊スポットと呼ばれる場所には湧き水のように奴らは出てきた。なにより、息を引き取って幽霊化する瞬間も目にしてきたのだ。幽霊以外の何者でもないだろう。
それに、英太は見えるだけではなかった。
奴ら幽霊たちに触れることも、触れられることもできるというオマケ付きなのだ。おかげで、さっきのようにイタズラをされることが多々ある。
幽霊である彼らにとって、自分たちを認識できて触れ合うことのできる英太は人間らしさを実感できる唯一の存在。いろいろちょっかいを出したくなるのは当然だった。
「何で僕なんだろう……」
「英太ってクジ運悪いもんな」
嬉々として幽霊たちが寄ってくるのと反対に、英太は自分のこの特殊な能力が嫌いだ。
他人とは違う優越感に浸っていた時期もあったが、見えないものが見えるというのはやっぱり異端で、気味の悪い能力に違いない。アブノーマルを気取るにはあまりに孤独で、それに耐えられるメンタルをこれまでの人生で培ってきたわけでもなかった。
英太はこの特異な能力を周囲にバレないようにひた隠しにすることを自ら選んだ。
今、英太の能力を知っている人物は家族と小学校以来の友人である入江しかこの世には存在しない。
さっきの出来事をクラスメイトたちは「教師に刃向かう勇敢で愚かな行為」と曖昧な評価を下していた。皆、先月この東緑学園に入学してきたばかりなので英太がどのジャンルにカテゴライズされる生徒なのかはっきりしていないのだ。
染髪頭にだらしない服装でもしていれば、即刻「不良」というフォルダにブチ込んで、そのまま最下層に放置していれば気が楽だったのに、と地団太を踏んでいるのがよくわかる。残念ながら、英太は髪を染めることもなし、制服はパリパリにアイロンがけをされて新入生の初々しさが依然として残っている。その英太を「不良」にカテゴライズすることは難しかった。どちらかと言うと「変人」の方に秤が傾き始めている。あと一回でも同じようなことが起これば、問答無用で危険人物認定されること請け合いだ。
「あまり変に思われるようなことはするなよ。俺がフォローしようにも限界ってものがあるからな」
「僕がするんじゃない、奴らがしてくるんだ」
「それでも、いきなり喚き散らしたらアウトだよ」
「孝介は、いきなり首筋に息を吹きかけられたり、脇をくすぐられたりして喚き散らかさない自信があるかい?」
「ないな、すまん」
「軽っ!」
「だって俺には関係ないからさ」
「薄情者!」
「それだけ英太の能力が特殊すぎるんだよ。自覚しろよな」
「十分すぎるほど自覚してるって……」
天才の悩みは天才にしかわからないと言うが、英太のそれも同じ境遇の者でないと理解も同情もできない。しかし、世界中のありとあらゆる情報をインターネットを介して検索できるこの現代社会において、英太と共感できそうな人物は一人も網にかからなかった。かかったとしても、その全てが創作物で現実味に欠けた。
「けど、早くその能力を何とかしないと、彼女もできないぞ」
「え? 何で彼女ができないの?」
「当たり前だろ。想像してみろよ。英太が彼女とイチャついてるその甘い時間に奴らが邪魔にでも入ったらどうする? また喚くか?」
「う……」
「奇声でもあげてみろ……結果は火を見るより明らかだろ?」
「確かに、彼女なんてできないな」
大半の男子高校生が自らの胸の内に掲げたことのある「彼女を作ろう」という目標を、英太たちも例に漏れることなく割と真剣に目指していた。実績はゼロ。
「ねぇ、見山君」
英太と入江の不毛な会話に水ではなく、陽を差すような明るい声が耳にスッと入ってきた。
「ふ、藤倉さん?」
声の持ち主は藤倉絢。英太たちのクラスの委員長を務めているぴちぴちの女子高生様だ。
委員長とて侮るなかれ。三つ編みにメガネなどという前時代的な委員長にあらず。
高校生活が始まって、最初のホームルームでクラスの役員決めが執り行われた。そこで、彼女は迷うことなく毅然とした態度でクラス委員長に立候補してみせたのである。その、あまりに立派な立候補っぷりに周囲は呑まれた。
英太は見境なく異性を好きになるチャラい男ではないつもりだったが、この瞬間、藤倉のことを「あ、いいな」と思うようになっていた。好き、とは違うまだ気になる、の段階。
あれから一カ月経った今でも、藤倉の魅力は溢れ、満ちていた。それが彼女を高嶺の花的ポジションへと追いやった原因でもあるのだが。
「で、で、僕に何か用?」
初めて面と向かって改めて藤倉の容姿の端麗さに驚かされた。
ミルク色の肌に、西洋人形のようなくっきりとした顎のラインはまさに芸術。それでいて、女性特有の丸みは忘れていない。中庸を保ったその顔立ちはエセ外国人風に「エクセレント!」と称賛せずにはいられない。
「見山君、大丈夫? さっきの授業で何か怒ってたけど……」
「あ、あれは……寝言だよ。ほら、いるよね、寝言が嫌にハッキリしてる人」
「うん……けど見山君、目開けてたよ?」
「僕、目開けたまま寝れちゃうタイプだから!」
「そんなに疲れてたの? ダメだよ? ちゃんと体調管理はしないと」
「そうだね、気をつけるよ。あ、ありがとう」
「これも委員長の仕事、みたいなものかな。じゃあね」そう言って、藤倉は元いた女子の集団に溶け込んでいった。
自分に話をするためだけにあの集団を抜けてきた。その事実が英太を高揚させた。
「あぁ……いい子だねぇ、藤倉さん」
ぼうっと惚ける英太をよそに、入江はホームズばりの沈着で鋭利な表情を作っていた。
「偵察、といったところかな」
「何のこと?」
「見てみろよ、あの女子集団に英太のことを報告してるみたいだぜ」
「な、なんで僕のことを」
「問題児かどうか確認しに来たんだろ。あの様子じゃ、まだセーフだな」
藤倉の話を胡散臭そうに聞いている女子たちは、しきりに英太の方をチラチラと窺い見ている。奇怪なものを見るような目が容赦なく英太を射抜いていく。
「僕の高校生活が……」
『おい、あの女の子の名前は何て言うんだ?』
「何言ってるんだよ。孝介だって藤倉さんの名前くらい知ってるじゃないか」
「ん? 俺、何も言ってないぞ」
気の抜けた顔を傾げる入江。二人の間に齟齬が生じているのは明白だった。
「えっ?」
『ふむふむ、藤倉さんと言うのか……可愛い女の子じゃないか』
「だ、誰だ。どうせ僕にイタズラしに来たのだろう?」
入江とは別人の声が近くから聞こえる。耳元で囁かれているようで、そうではない。
断言できるのは、これは幽霊の仕業だということ。
「ひょっとして、あいつらに絡まれてる?」
「うん、けど姿は見えない」
『おい英太』
「僕のことを勝手に名前で呼ばないでくれ」
『遠慮するな、どうせ呼んでくれる友達なんて少ないんだから』
確かに少ない。
そもそも、友達が完全に枯渇中だ。名前で呼んでくれるのは入江くらいなものだった。
「うるさい。それより、姿を現せ。二度と僕に近づけないようにしてやる」
『断る。だがまぁ……そろそろ次の授業が始まりそうだし、これくらいにしとくか。では、またな』
「あっ、待て!」
それっきり何を言っても反応はなかった。死者の気配を感じ取ることなんてできないのだから、奴が今どこにいるか探る手段がない。
「面倒臭そうなタイプに目をつけられたようだな」
「僕をどうしたいのかわからない奴だったよ。大抵はイタズラ目的なんだけどねぇ」
「ご愁傷さま」
「本当だよ、まったく」
授業が始まって、奴が何かしてくることはなかった。
(僕に興味を失くしてくれたのかな? それなら有難いんだけど……)
幽霊たちに興味を持たれても何の益にもならない。それは、長年の経験で見に染みたことだった。
結局その日、藤倉の名を尋ねてきたあの幽霊が再び学校で声を発したり姿を見せたりすることはなかった。英太自身、彼のことは校門を出たころにはすっかり忘れていた。彼がすんなり退いたことは意外だったが、所詮は幽霊。いちいち覚えられるほど英太の頭はできたものではなかった。
帰宅部の放課後は長い。その日の全授業が終わった瞬間に、密なるプライベートタイムが始まる。
道草して友人たちとショッピング。
恋人とデート。
自分の趣味にどっぷり浸かる。
どんな時間の使い方をしようと、それは思春期の大切なひと時には違いない。優劣などない。
たとえ、英太のように帰宅して意味もなくゴロゴロしていたとしても。
「あー暇だー」
英太以外誰もいないリビングで気だるそうな声が響く。
両親は共働きで不在。兄弟もいない。
「あぁぁぁ暇だぁぁぁぁ」
家の中にある娯楽品にはほとんど飽きがきている。新しいものを買おうにも金がない。
「だあぁぁぁ暇だぁぁぁっ」
『うるさい!』
「うわぁっ!」
完全に独り言気分だった。
驚きのあまり、だらしなく転がっていたソファからずり落ちた。肘のあたりがヒリヒリする。
『さっきから暇だ、暇だ、とうるさいんだよ。そんなに暇なら外に出ろ!』
「お、お前は」
『お前、ではない。嵐山鉄治という名前がちゃんとある』
そんなことは尋ねてもないし、知りたくもなかった。
嵐山とやらだが、相変わらず姿は見えない。
「学校に出たやつだな……ここまで追って来たのか」
『出た、というよりも……ずっと近くにいたぞ?』
「近くに? 僕の?」
『あぁ。返されたテストが四十六点だったことも、授業中、あの藤倉さんとやらに気持ち悪い視線を送っていたことも、彼女が床に払った消しゴムのカスを休憩中必死になって集めていたことも知ってるぞ』
「最後の消しゴムのカスがどうのこうのってやつ、捏造するな」
『ほほぉう、他は認める、と』
「い、いや……知らないな、そんなこと」
『まぁそれはどうでもいい。私が言いたいのは、暇なら外に出ろということだ』
「僕に指図するな! それより、お前は何者なんだ」
『幽霊だ。英語で言うと、ゴーストだな』
「そんなことはわかってる。お前は何がしたいんだ。僕は幽霊のお前たちと馴れ合うつもりなんてないんだ」
『安心しろ、私もない』
「じゃあ何で……」
『命令だからだ。そう、仕方なくだ。ったく、どうして私がこんなガキの相手をしなくてはならないんだ』
半ば愚痴のように話すが、英太には全く理解できなかった。
命令? 誰のものだ。
『私は、英太の人生家庭教師、だ』
「人生家庭教師? 何それ」
『そのまんま、人生の家庭教師ってことだ』
「幽霊に教わるなんて冗談にしても笑えないよ」
机について、大人しく嵐山に教えを請うシチュエーションを想像するだけで嫌な汗が出る。シュールすぎてついていけないコントを見ている気分。
『何を言っている。私はすでに人生を終えているのだぞ? これほどぴったりな人材はいないではないか。英太は知らないようだが、各界の著名人はもちろん、歴史上の偉人に私たちのような人生家庭教師がいたことは稀ではない』
「う、嘘だー」
『嘘じゃないさ。人生家庭教師ネットワークの支部にでも行けば、資料が見られるはずだ。最も、英太が見れるのは一度死んでからになるけどな』
「人生家庭教師ネットワーク?」
死後の世界は思った以上にグローバル化が進んでいるようだった。もしかすると、死後ならではの文化が根付いているのかもしれない。
『言うなれば、私の雇い主ってところだな。そこに命令されて、私は英太の人生家庭教師になったのだから』
あからさまに顔をしかめるが、英太だって願い下げをしたい。
「そんなのいらないよ。僕は別に偉人になりたいわけでもない。普通の人生を歩みたいんだ」
『それでいいのか?』
「ど、どういうこと?」
『この先、仮に英太が落ちこぼれにでもなったりしたら、必ず後悔するぞ。それに、私たち人生家庭教師の目標は何も偉人量産ではないからな。そいつにとって、最も幸せな人生へと導く。それが役目だ』
「で、でも……」
『藤倉さんのお近づきになりたいのではないのかね?』
「何でそれを!」
『私は人生家庭教師だからな、お見通しさ』
密かにじっくりと温めてきた藤倉への想いが、いとも簡単に言い当てられてしまった。
それも幽霊に。
『私が英太の人生家庭教師にさえなれば、直接的にではないものの、間接的に彼女へのアプローチは手助けできるだろうな』
実に魅力的な話だった。
藤倉との友好関係は喉から手が出るほどに欲しい。
けれど、嵐山、彼は幽霊だ。それに彼の言っていることが真実とは限らない。
手の凝ったイタズラかもしれない。頭のいいやつならいかにもやりそうな手口だ。
それに、恋愛の手ほどきを幽霊に受けるというのも釈然としない。この誘いを受けてしまえば、ますますオカルトな方向へと進んでしまう。英太にとってはオカルトではなくリアルなことなのだが、世間ではそうもいかない。世間体で成り立っているこの世の中で、我を通していけるほどサバイバル能力に長けているわけでもないのだから。
「何か見返りを要求されたりするの? ほら、悪魔の契約とか言うでしょ?」
『完全無料であなた様の人生、我々が指導いたします! これがモットーだな』
「すごく、詐欺っぽいね。何だかどこかの新興宗教を相手にしてるみたい」
『どうとってもらっても構わない。だが、さっきも言った通り、実績は十分にある。次世代型ケータイを開発して一気に世界的大企業に成長したI社の社長の人生家庭教師はエジソンだったり、世界中にファンの多い漫画を多数描いているB氏は手塚氏だったりと、例を挙げればキリがないくらいにな』
「それはすごい……」
成功者には嵐山のような人生家庭教師がバックアップがいた。
それを同じく手に入れた英太はビッグな人間になれるかもしれない。そんな人間になるつもりもなかったが、ちょっとくらい高みを目指しても損はない。
「で、嵐山……さんは何で有名な人? 格好は古くないし、最近の人? 僕、疎いからなぁ、そういうの。テレビもあんまり見ないし」
嵐山はTシャツにジーパンと、極めてラフな格好だった。英太は経験から、幽霊たちは死ぬ直前の容姿になることを知っている。だから、どれだけ凄惨な死に方をしてもその状態で幽霊になることはなかった。もしそうでなかったら、今頃英太は外出のできない引き籠りになっていたか、人間的な感覚を失うことになっていただろう。
『私か? 私は……名もない兵士さ』
「か、かっこいい! 戦場を渡り歩いてきた孤高の兵士、とか? けど、最近の人が兵士になれるって言ったら自衛隊しか思いつかないなぁ。どこで戦ってたの?」
『……自宅、だ』
「へ? ……あぁ、もしかして、コンピューター系の人? サイバーテロとかよく聞くもんね。じゃあさ、体験談とか聞かせてよ。一分一秒を争う緊迫の戦いとかあった?」
『自宅を……警備してた』
「嵐山さん、それって……」
『一日中、ネットをしたりゲームしたりしてました』
「それってタダの引き籠りじゃないか!」
最初の偉そうな態度は影もなかった。語尾は消え入りそうな声音だし、何より丸まって縮こまっている。
『私だって好きで引き籠りをしてたわけじゃない。変わろうと思っていた。ほんとだ、信じてくれ』
「…………」
呆れて物も言えなかった。引き籠りに人生を教わる……喧嘩を売っているとしか思えない。
『変わろう変わろうと思っていた、その矢先、私は死んだのだ』
「引き籠りがどうやって死んだって言うんだ……」
『わからない。私は自分の死に関する記憶が全く残っていない。いつ死んだのかもあやふやだ』
「何歳で死んだの?」
幽霊に対して、死のあれこれを聞くことに別段抵抗はなかった。人生家庭教師を名乗るくらいならそれくらいのことを知る権利はあって当然だった。
心に闇を抱え込んだままの人間(この場合、幽霊だが)と仲良く手を取り合えるほど、図太い神経はしてなかった。
『多分……三十九だ。四十にはなってなかったのは覚えている』
三十九歳の引き籠り。
嵐山はすでに死んでいるのだから元・引き籠りとするべきだろうか。
「結婚は? してた?」
『英太は引き籠りが妻帯できると思うかい?』
「いや……じゃ、じゃあ彼女は?」
『英太……そんなに私をいじめたいのか?』
「ご、ごめんなさい」
自信たっぷりに、藤倉のことは任せろ、みたいなことを嵐山が言うのでハイレベル引き籠りかと英太はちょっと思っていた。
「でもさ、一人や二人くらいは彼女いたことあるでしょ? 何たって人生家庭教師だもんね!」
『英太……私が母親以外で最後に女性と会話を交わしたのがいつだと思う?』
「そんなにヒドイの?」
『中学生の時、担任だった女の先生以来、ずーっと機会はなかった。いや、機会はいくらでもあったさ。けど、私からその機会を打ち消しにいった。極めつけには、引き籠りだ。女性どころか人と会うことも皆無に近付いた。こんな私に彼女ができる隙があると思ったか? ははっ、鉄壁さ』
出オチ臭がはんぱないです。何かゴールが見えないような・・・。酷評、好評なんでもこいです! 中傷はやめて、豆腐メンタルだから