もし、侯爵世界にクリスマスがあったら (1)
エステルは浮かれていた。
手元にあるのは二つの小箱。
どちらも箱は白い無地であるため、中身は用意したエステルにしか見分けがつかない。
「エステル様、包装紙とリボン、用意しましたわ」
そう言って微笑むエリンに礼を述べ、エステルは鼻歌交じりに受け取った。
「セシル様、喜んでくれるかしら?」
ひとつの小箱を包装紙で包みながら呟けば、エリンが「もちろんですわ」と答える。
エステルが用意した贈り物がなんであれ、セシルが喜ばないはずはない、とエリンは確信していた。
包装が終わったそれにリボンをかけると、最後にメッセージカードを添える。
そうしてエステルは次の小箱を手にした。
「もうひとつの贈り物は、どなたに宛てたものなのです?」
小首を傾げるエリンに、エステルはにっこりと笑む。
「友達が結婚したの。だから、そのお祝いよ」
「そうなのですか。それはおめでたいですわね。……中身を伺っても?」
エステルは悪戯を思いついた少女のように、口端をあげて、ふふふ、と笑った。
「ぴらぴらしていて、ふりふりした下着よ」
エリンは苦笑する。
「それはまた……。使ってくださるといいですね」
答えると、エステルは結婚祝いの贈り物の包装も終えていた。
この時、ちょっとした悪戯心が自分に跳ね返ってこようとは、エステルは想像だにしていなかった。