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侯爵様と女中ととりまきその十六とその他(番外編を集めたの)  作者: えんとつ そーじ
*パラレル ヤサグレ侯爵様と無表情な女中 (完結済み)
15/25

1.プロローグ

もし、セシルが過去にエステルと出逢っておらず、ヤサグレていたら。もし、エステルが本編以上に心を閉ざしていたら。こんな展開になってました、多分、というお話。※本編以上の軽いR15。




 いつしか、彼女の感情は涙に溶けていた。けれど、そのことに気づかぬまま、彼女は涙を零し続けた。

 そうして涙が枯れる頃、彼女は笑みを失った。

 ”感情”という中身をなくした心。まだ、そこになにか残っていたのかもしれない。

 しかし、彼女はそれをいらぬものだと無表情で判じた。同時に、氷の箱に入れ、隔離するかのように、心の奥深くへと沈めた。



 いつからか、両親は悲しい目をして彼女を見るようになった。

 その目が物語るのは”カワイソウ”という感情。

 ――自分はカワイソウなのだろうか?

 彼女にはわからない。


 いつからか、侍女たちは腫れ物を扱うように、彼女に接するようになった。

「エステル様は、お心を閉ざしてしまわれた」

 そう侍女たちは噂する。

 ――自分は心を閉ざしたのだろうか?

 彼女にはわからない。


 ただ、皆にとって自分が扱いづらい存在なのだと、彼女にはわかった。

 ――ならば、どこへ行けばいいのだろうか?

 彼女にはわからない。



 そんな彼女は、偶然耳にした女中たちの閑談に答えをみつけた。

 ――邪魔な自分の行き場。自分のするべきこと。

「故郷の友達が、共通の友達に恋人を奪われたらしいの」

「酷い話ね。あたしなら仕返ししてやるわ」

「仕返しって……どんな?」

「元恋人と元友達が悔しがる方法――そうね、例えば元恋人以上の相手と、すっごく幸せになってやるとか。……とにかく、すっごく悔しがることをしてやるのよ!」

 女中の言葉に、彼女は「――そっか」と物陰から呟いた。





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