45話 防御戦
オレは、一旦騎兵が撤退したのを見て、防御魔法を解除する。
「ファイアシェル消えろ! サンドウォール消えろ!」
轟音と共に、周囲を覆っていた炎の障壁と土の壁がゆっくりと消え去る。熱気が薄れ、乾いた風が肌を撫でた。
騎兵の数は、まだ百騎ほど。
この数に囲まれれば、ひとたまりもない。だが、敵は距離を保ち、攻めて来ない。
(……警戒しているのか。オレのユニークスキルを)
確かに、あの魔法は威力が段違いだ。だが発動条件は厳しい。短時間に多数の敵を倒さねばならず、今は使えない。
その時、敵が後方へと下がっていった。
(諦めたか……)
そう思った矢先、空を裂く音が耳を打つ。
「ッ!」
頭上から矢が降り注ぎ、オレは咄嗟に鉄の盾を掲げた。だが防ぎきれず、鋭い痛みが腕と脚を貫く。馬の悲鳴が響き、数本の矢がその体にも突き刺さっていた。
オレは歯を食いしばり、再び防御魔法を展開する。
「ファイアシェル!」
炎が弧を描き、半円状の障壁が立ち上がる。続けざまに放たれた矢は、炎に弾かれて黒煙となり消えた。
脚に刺さった矢を掴み、血が滲む中で引き抜く。
「うっ……!」
馬の矢も抜き取り、暴れる首筋を撫でながらポーションを飲ませる。
「ヒッヒーーン!」
苦しげな声を上げるが、まだ立っていられる。
矢の雨が止むと、敵は距離を保ったまま動きを合わせて移動してくる。まるで獲物を追い詰める狼の群れのように。
(……そういうことか。オレのMP切れを狙っているんだ!)
メニューを確認すると、確かにMPはじわじわと減り続けていた。
オレは防御魔法を解く。
「ファイアシェル消えろ!」
炎が消える。
(これで《オート・リカバー》のスキルで回復できるはずだ……)
だが、再び矢の嵐。鉄の盾では防ぎきれず、矢が肉を裂く。馬も再び傷を負う。オレは慌てて魔法を展開する。
「ファイアシェル!」
炎の障壁が立ち上がり、矢を焼き尽くす。だが馬は息を荒げ、体力を削られていく。
敵は射程ぎりぎりの距離を保ち、こちらの魔法は届かない。
(攻撃手段が……無い!)
オレは焦りながらも、アイテムボックスを探る。
「そうだ……あれを買っておいたんだ!」
取り出したのは【大盾】。鉄塊のような重さに腕が震えるが、持てないわけではない。地面に突き立て、壁のように構える。
「ファイアシェル消えろ!」
防御魔法を解除して待っていると、矢が飛来する。大盾は全てを受け止め、オレの体を完全に隠す。
(これだ……! これでMPを回復して、全開になったら攻撃に出る!)
だが、次の瞬間。
「ッ!」
左右から矢が飛び、腕と脚に突き刺さる。後ろを振り返れば、馬にも矢が突き立っていた。
(敵が展開したのか……! 左右から矢を浴びせてきた!)
「ファイアシェル!」
炎の障壁を再び展開し、矢を焼き払う。だが、体に突き刺さった矢を抜くたびに血が滴り落ちる。
「うぅ……!」
馬の矢も抜き、ポーションを飲ませる。震える手で首筋を撫でながら、オレは呟いた。
「オレの愚策で怪我をさせてすまん……」
大盾をアイテムボックスに仕舞う。重厚な盾は、結局ただの荷物となった。
そしてオレは学ぶ。
〈長射程武器の強さ〉
と言うことを。




